【声劇台本】幸せのカギシッポ

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■概要
人数:2人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
フー
碧(あおい)

■台本

フー(N)「私は生まれてすぐに捨てられた。理由はシッポが折れていたから。そんな他愛のない理由。だけど、そのときはとにかく怖くて、お腹が減って、不安で……ただ鳴くことしかできなかった。そんなとき、碧ちゃんに出会った」

猫のフーのにゃーにゃ―と鳴く声。

碧「……捨て猫? こんなところにひとりぼっちは怖くて寂しいよね。一緒に帰ろっか」

場面転換。

フーのにゃーと鳴く声。

碧「君のシッポ、折れてるね。こういうシッポはカギシッポっていうんだって。カギシッポは幸運を引っ掛けてくれるみたいなんだ。……だから君の名前は、幸運って意味のフルーク。だから、フーちゃんだね」

返事をするように鳴くフー。

フー(N)「私に名前を付けてくれて、温かい笑顔を向けてくれる碧ちゃんが大好きだった。このままずっと碧ちゃんと一緒にいられる。それだけで、私は幸せだった」

場面転換。

碧が部屋に入ってくる。

碧「ただいまー」

フーがお帰りなさいというように鳴く。

碧「はあ……。フーちゃん。私、また、バイト首になっちゃった……。まあ、今は不景気だから仕方ないよね。って落ち込んでたらダメだね。頑張ろう!」

元気づけるようにフーが大きく鳴く。

フー(N)「最近、碧ちゃんがあんまりご飯を食べない。そのせいで、少し痩せてきちゃってる気がする。もしかして、病気なのかな? 碧ちゃんには笑顔でいてもらいたいのに……」

場面転換。

碧「まずいなぁ。そろそろ、貯金も危なくなってきたな……」

フーが心配そうににゃーと鳴く。

碧「あ、ごめんごめん。ご飯あげてなかったね」

お皿にザザッとキャットフードを入れる碧。

フーが嬉しそうに鳴き、食べ始める。

碧「フーちゃんはちゃんと食べてね。体が小さいんだから」

グーと碧のお腹が鳴る。

碧「うー。私もお腹減っちゃった。なにか、残ってないかな?」

棚を開けて、ガサガサと漁る碧。

碧「あ、食パンだ! ラッキー。……って、なんか、カビ生えてる……。この部分をちぎれば大丈夫だよね?」

フー(N)「その夜、碧ちゃんはお腹を抱えて、苦しみ始めた。嫌だよ! 泣かないで! 私に何かできないのかな?」

碧「うー、うー」

フーがにゃーと鳴いて、碧の頬を舐める。

碧「ふふふ。フーちゃん、心配してくれてるの? ありがとう……。いたた!」

にゃーと心配そうに鳴くフー。

碧「うう……。ある意味、バイトやってなくてよかったかも。こんな状態じゃ仕事できないもんね。ラッキーって考えよう……」

場面転換。

碧「ふう……。死ぬかと思ったけど、なんとか治った。あ、フーちゃん、ごめんね。ご飯あげてなかったね」

碧がお皿にキャットフードを入れる。

碧「あれ? 食べないの? もしかして、具合悪いとか?」

フー(N)「違うよ。私よりも、碧ちゃんにご飯を食べて欲しい。私は食べなくても大丈夫だから」

碧「大丈夫、フーちゃん? お願い食べて」

フー「……」

もそもそと食べ始めるフー。

碧「あー、よかった。最近、食欲なさそうだから、心配だったんだ」

フー(N)「食べないと碧ちゃんに心配かけちゃう。なら、食べる量を減らしていかなくっちゃ」

場面転換。

勢いよくドアが開き、碧が入ってくる。

フーがお帰りというようににゃーと鳴く。

碧「フーちゃん! バイト決まったよ! えへへ。これもフーちゃんのおかげだね。さすがカギシッポ。幸運を引っ掛けてくれてありがと!」

フー(N)「碧ちゃんの久しぶりの笑顔。碧ちゃんの笑顔を見ているだけで、私は幸せだよ」

場面転換。

フーがにゃーと鳴きながら歩く。

するとガタガタと揺れ始める。

フー(N)「え、地震? 結構、大きいかも」

上から物が落下してくる。

ドンとフーにぶつかる。

苦しそうな鳴き声。

フー(N)「痛い、痛いよ。碧ちゃん助けて」

場面転換。

碧が帰ってくる。

碧「ただいまー。って、うわ、地震で物が色々落ちてる。……フーちゃん? 大丈夫だった? フーちゃん? フーちゃん!」

碧がフーに駆け寄る。

碧「フーちゃん! フーちゃん、大丈夫? すぐに動物病院に連れて行かないと!」

フー(N)「物に押しつぶされた私はかなりの大けがをしたが、治療をしてもらったことで一か月もするとなんとか治った。だけど、その日から、碧ちゃんが家にいる時間がすごく少なくなってしまった」

場面転換。

碧が帰って来て、フーがお帰りと鳴く。

碧「……疲れた。限界。もう寝る」

フー(N)「帰って来ても、すぐに寝てしまう。すごく寂しいけど、碧ちゃんの迷惑にはなりたくない。だからこれくらいは我慢するよ。だからお願い、私を嫌いにならないでね」

場面転換。

碧が帰って来て、フーがお帰りと鳴く。

碧「もう嫌! もう限界だよ! こんな生活! 仕事して、帰って寝て、仕事、仕事、仕事、仕事!」

心配そうに鳴くフー。

碧「全部、フーちゃんのせいだよ!」

フー(N)「私のせい。私が碧ちゃんに迷惑をかけちゃってる……。そうだよね、私は碧ちゃんに何もしてあげれらない。……幸運のカギシッポなんて、なんの意味もない。……逆に私は碧ちゃんを不幸にしてる」

場面転換。

碧が帰ってくる。

碧「ねえ、フーちゃん。私ね、今、お付き合いしてる人がいるんだ。……だけどね、その人……猫アレルギーみたいなんだ。……だから、その……フーちゃんには……って、そんなこと言っても通じないよね」

フー(N)「ここを出て行こう。碧ちゃんに私ができることは、いなくなること。碧ちゃんには幸せになって欲しい。だから、私は碧ちゃんとお別れするよ」

場面転換。

道路脇を歩くフー。

フー(N)「碧ちゃんの家を出てから一週間が経った。飼い猫だった私はエサをなかなか見つけられず、数日はほとんど何も食べてない」

立ち止まり、寝転がるフー。

フー(N)「たぶん、私はこのまま死ぬと思う。……幸運のカギシッポ。そんなものは結局、ただの噂だ。私は何一つ、このシッポで幸運を引っ掛けることはできなかった。何の役にも立たない、私のカギシッポ」

そのとき、碧が走ってくる。

碧「フーちゃん!」

フー(N)「え? 葵ちゃん?」

碧「ごめんね、フーちゃん! ごめんね」

フー(N)「泣かないで、私は碧ちゃんの笑顔が好きなんだよ」

碧「一緒に帰ろう」

フー(N)「ダメだよ。私が帰ったら、碧ちゃんの幸せを壊しちゃう」

碧「あのね、フーちゃんと一緒に暮らしたいって言ったら、その人ね、アレルギーの対処するから一緒に暮らそうって言ってくれたの」

フー(N)「え?」

碧「……本当に素敵な人なの。ありがとう、フーちゃん。きっと、フーちゃんのカギシッポが幸せを引っ掛けてくれたんだね」

フー(N)「そうか。そうだったんだ。私のカギシッポは最初から幸せを引っ掛けてくれていたんだ。だって、素敵な碧ちゃんに出会えたって、奇跡のような幸運を引っ掛けてくれていたんだ」

終わり。

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