【声劇台本】伝説の剣

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■概要
人数:2人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、コメディ

■キャスト
パーシー
メリッサ

■台本

トロルの咆哮が響く。

パーシー「くっ! トロルだ! メリッサ、逃げるぞ!」

メリッサ「はい、先生!」

場面転換。

森の中。

フクロウの鳴き声と焚火の音。

メリッサ「先生、ご飯の支度ができました」

パーシー「おう、ご苦労さん。それじゃ、食べよう」

メリッサ「はい」

二人が食事をとっている。

メリッサ「そういえば先生。昼間はどうして逃げたんですか?」

パーシー「ん? なんのことだ?」

メリッサ「トロルです。先生なら簡単に倒せたんじゃないんですか?」

パーシー「理由は2つ。まず、トロルを倒したところでうま味が無い。あいつを倒したところで何が手に入る?」

メリッサ「えっと……こんぼうと、皮の服くらいですかね」

パーシー「そんなもん、荷物になるだけで返って邪魔だ」

メリッサ「もう一つの理由はなんですか?」

パーシー「俺は極力、モンスターを倒さないというのをモットーにしている」

メリッサ「……それって、モンスター愛護とか、そういうことですか?」

パーシー「あのなぁ。モンスター愛護してる奴が武器屋なんてやると思うのか?」

メリッサ「あ、それはそうですね。モンスターを倒すための道具を売ってるんですから」

パーシー「理由、わかるか?」

メリッサ「えっと……わかりません」

パーシー「前に教えただろ。商売というのは需要と供給の関係で成り立ってるって」

メリッサ「需要と供給……。あ、わかりました! 需要を減らさないためですね」

パーシー「そういうこと。あのトロルは、俺たちから見たら雑魚だけど、一般の人間から見たら脅威そのものだ。あれをそこそこの奴が倒すとなれば、相当いい武器と防具が必要になる」

メリッサ「それを先生が売るわけですね」

パーシー「正解。まあ、仮にドラゴンだったりした場合は、取れる素材を考慮して狩る場合もある。ただ、現在の持ち物も考慮が必要だ。それでなくても、行商人は持ち物の管理がシビアになるからな」

メリッサ「なるほどです」

メリッサがカリカリとノートに書き留めていく。

パーシー「それにしても、メリッサ。ずっと気になってたんだが……」

メリッサ「なんでしょう?」

パーシー「なぜ、商人になりたいんだ?」

メリッサ「私、お金が好きなんです!」

パーシー「なるほどな。だが、お前ほどの剣の腕前と、その容姿があればそれこそ、貴族お抱えの傭兵なんていうのも狙えるんじゃないのか?」

メリッサ「でも、それって結局、自分が働かないとお金が入ってきませんよね?」

パーシー「ほう?」

メリッサ「それに結局、長い目で見たときに稼げる金額に限界があると思います。でも、商人であれば、自分で店を持った後、人を雇ってその店をその人に任せれば、遊んでいてもお金が入ってくるんですよ。最高じゃないですか!」

パーシー「……メリッサ。普通の行商人が店を持つなんていうのは、生半可な苦労じゃ無理だぞ」

メリッサ「わかってます! 将来、大金持ちになれるなら、目の前の苦労は、どんなことでも受け入れるつもりです!」

パーシー「ふふふ。なるほどなるほど。お前は商人としても、才能がありそうだな」

メリッサ「本当ですか!」

パーシー「俺も全く同じことを考えて商人を目指した。……で、一番最初にやったことが剣の腕を磨くことだった」

メリッサ「え? どうしてですか? 普通、商売のノウハウを勉強する、とかじゃないんですか?」

パーシー「もちろん、勉強はしたさ。で、何もないところからスタートするには、行商人が一番だと思った」

メリッサ「……はあ?」

パーシー「行商人というのは各地を旅して、得たものを売ることができる。つまり、元手がなくてもできるってことだ」

メリッサ「あ! 旅をするためには、強さが必要ってわけですね」

パーシー「そういうことだ。傭兵を雇うってことも考えたがリスクが高すぎる。もし、何も得るものがなかったら、丸々損だからな」

メリッサ「じゃあ、先生が、私を弟子にしてくれたのも……」

パーシー「ああ。足でまといにならない強さだったのと、2人いた方がより儲けの幅が多くなるからだな」

メリッサ「なるほどです。合理的な先生がやけにあっさりとOKしてくれたのはそういうことだったんですね」

パーシー「さてと。食ったら、さっさと寝るぞ。明日からは結構、しんどい旅になるぞ」

メリッサ「はい!」

場面転換。

森の中を歩く、パーシーとメリッサ。

メリッサ「先生、どこに向かっているんですか?」

パーシー「大精霊が眠る祠(ほこら)だ。伝承が少なく、生きて帰って来た者はいないと言われる場所だ。大体、そういうところには何かしら伝説級の代物が眠っていたりするからな」

メリッサ「情報が少ないなら、逆にガセネタという可能性はないんですか?」

パーシー「もちろんある。が、本当だった場合のリターンはかなりデカい」

メリッサ「なるほど。竜の鱗が欲しければ、竜を狩れ、ってことですね」

パーシー「そういうことだ」

そのとき、周りからドラゴンの咆哮が響き渡り、地鳴りのような足音が周りから近づいてくる。

メリッサ「先生……」

パーシー「ダークドラゴンの群れか」

メリッサ「一体で騎士団一つ壊滅させます」

パーシー「それが団体でお出ましか」

メリッサ「どうします?」

パーシー「決まってる! 突破するぞ! これはお宝が眠ってる確率が高くなってきたぞ!」

メリッサ「はい!」

場面転換。

洞窟内を歩くパーシーとメリッサ。

メリッサ「うう……ダークドラゴンの鱗」

パーシー「諦めろ。囲まれた状態で、取るのは無理だ。それより……」

メリッサ「あっ!」

二人が立ち止まる。

パーシー「ビンゴだな」

パーシーが岩に刺さった剣を抜く。

パーシー「大精霊の剣。伝説級の代物だ」

メリッサ「物凄い力を感じます」

パーシー「ああ。かなりヤバいな。この剣があれば、ちょっと腕の立つ奴でも、ほとんどのモンスターを倒せるくらいだ」

メリッサ「やりましたね! これを売れば、大金持ちです!」

パーシー「逆だ。こんなもの、値が付けられんし、下手をすりゃ、どっかの国王辺りにタダ同然で持っていかれるのがオチだな。それに、そもそも、こんな剣は武器屋の天敵みたいなもんだ」

メリッサ「どういうことです?」

パーシー「需要と供給」

メリッサ「あっ! この剣があれば、モンスターが脅威じゃなくなるってことですね」

パーシー「下手したら、世界が平和になっちまう。そうなれば……」

メリッサ「武器屋が必要なくなりますね」

パーシー「くそ。まいったな」

メリッサ「このままにしておきますか?」

パーシー「いや、あの程度のダークドラゴンの数じゃ、ちょっとした英雄レベルの奴なら突破できる。俺たちが、大分減らしたしな。それにそんな奴がこれを手に入れた日には……。考えるだけでぞっとするな」

メリッサ「それじゃ、どうするんですか?」

パーシー「……もっといい場所に隠す」

メリッサ「もっといい場所……ですか?」

場面転換。

メリッサ「はあ、はあ、はあ……」

パーシー「……さすがにキツかったな。死ぬかもしれないって思ったのは初めてだ」

メリッサ「……でも、これで安心ですね」

パーシー「ああ。あれ以上の隠し場所はない。なんせ……」

メリッサ「魔王の城の中ですからね」

終わり。

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