【声劇台本】その恋応援し隊

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■概要
人数:5人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
茉央(まお)
蓮夜(れんや)
美月(みづき)
一星(いっせい)
その他

■台本

茉央(N)「もうすぐ夏休み。普通の学生なら楽しみにしているはず。私も去年まではそうだった。でも、今年は違う……。夏休みということは学校が休みということ。そして、学校が休みということは一星くんに逢えないってことだ」

場面転換。

蓮夜「……なるほど。夏休みに入る前に、友達以上、恋人未満である、一星という男子生徒と付き合いたいと?」

茉央「は、はい」

美月「いい! 良いわ! その純粋な気持ち! 蓮夜、この恋、応援しましょ!」

蓮夜「ああ、そうだな。美月! その恋応援し隊、出動だ!」

茉央(N)「……藁にもすがるつもりで、恋の応援をしてくれる、その恋応援し隊に依頼してみたけど……大丈夫なんだろうか」

場面転換。

ザザッと通信機のノイズの音。

蓮夜「茉央さん、聞こえますか?」

茉央「は、はい。聞こえます」

蓮夜「この3日間のシミュレーションは完璧だ。自信を持ってくれ」

茉央「……はい」

蓮夜「とはいえ、トラブルは起こるもの。何かあっても、俺たちが完璧にフォローする」

美月「耳に着けた小型の通信機を落とさないように、気を付けてね」

茉央「わかりました」

蓮夜「あと5分で約束の時間だ。念のため、作戦の確認をしておこう」

美月「あくまで、今回のデートは相手から告白させることが目的よ」

茉央「……ホントに大丈夫ですか? やっぱり、告白してもらうなんて、無理だと思うんですけど……」

蓮夜「ふふ。まあ、不安になることはわかる。だが、大船にのったつもりでいたまえ。作戦は完璧だ」

美月「そうよ。恋は惚れた方が負け。最初にマウントを取れるかが、今後の恋に大きな影響があるわ」

茉央「は、はい……」

蓮夜「作戦1。男は胸が大きい女の子が好き、だ」

茉央「……言われた通り、パットを大量に入れてきました」

蓮夜「よろしい。これで、作戦の半分は成功したようなものだ」

茉央「そ、そうでしょうか……?」

その時、一星がやってくる。

一星「ごめん、待たせちゃったね」

茉央「一星くん! う、ううん。いいのよ。来てくれただけで嬉しいわ」

ザザッと通信機のノイズの音。

蓮夜「待て! ここは作戦2を使え」

美月「作戦2! 男はツンデレの女の子が好き、よ」

蓮夜「いいか。こう言うんだ」

咳払いをする茉央。

茉央「なんて、言うとでも思った?」

一星「え?」

茉央「遅いわ! 私を待たせるだなんて、何様のつもりかしら?」

一星「ご、ごめん……」

蓮夜「よし、この後にデレを発動! こういうんだ――」

茉央「あらあら。ちゃんと謝れて偉いわね。ご褒美に頭を踏んであげてもいいわよ?」

一星「……いや、そんなご褒美いらないよ」

茉央「……」

一星に背を向ける茉央。

茉央「ちょっと! 思い切り引かれたんですけど!」

蓮夜「む……。おかしいな。頭を踏まれるなんてご褒美、男なら絶対に喜ぶはずだが」

茉央「お前だけだよ……」

蓮夜「こうなったら次の作戦に行くしかないな。男は料理が上手い女の子が好き、だ。朝に俺が渡した、弁当を出せ。有名店で作ってもらった、特注の弁当だ」

茉央「な、なんちゃってー。ホントのこっちよ。お昼ご飯のお弁当。さっそく食べよ」

茉央がお弁当出す。

一星「ま、まだ10時だけど、もう食べるの? お昼ご飯」

茉央「うっ! えっと……」

一星「でも茉央ちゃんが食べたいっていうなら食べようか」

茉央「……一星くん。優しい……」

一星がパカっと弁当箱を開ける。

一星「……」

茉央「……」

一星「か、空だね」

茉央「そ、そうだね……」

一星に背を向ける茉央。

茉央「ちょっと! どういうことよ!」

美月「ごめん! すごく美味しそうだったから、一口貰うつもりが……」

茉央「……全部食べた、と?」

美月「……」

蓮夜「まあまあ、人に失敗はつきものだ。ここから巻き返していこう」

茉央「もう致命傷だと思うんだけど」

美月「即死以外はかすり傷だよ」

茉央「あんたが言うな」

蓮夜「落ち着け。次は遊園地に迎え。作戦3。吊り橋効果、だ」

美月「絶叫系に一緒に乗ることで、ドキドキした気持ちを恋と思わせるんだね」

蓮夜「その通りだ。弁当と一緒に遊園地のパスをお渡しておいただろ? そこに向かうんだ」

茉央「わ、わかったわ」

振り向く茉央。

茉央「い、今のはギャグよ、ギャグ。これから、遊園地行かない? 無料のパス券を持ってるの」

一星「うん。いいよ」

場面転換。

係員「このパス……来週の日付になってますね」

一星「……」

茉央「……」

茉央が一星から離れる。

茉央「……どういうこと?」

蓮夜「む……。だ、誰にでもミスはある。これは仕方ないことだな」

美月「そうそう。仕方ない、仕方ない。ここから巻き返していこー」

茉央「あんた達、ホント、自分に甘いわね」

蓮夜「次は上手くいくはずだ。正直にいうと、これがメインと言ってもいいほどだな。作戦4。男はか弱い女の子が好き、だ」

美月「さっき、刺客を向かわせたから、一星くんに守って貰ってね」

茉央「ちょ、ちょっと待って! 刺客って」

不良「よお、ねーちゃんだろ? 俺たちと遊んでくれるっていうのはよぉ?」

茉央「いや、えっと……誤解というか……」

一星「おい! 茉央ちゃんから手を放せ」

不良「……ヒョロガリ野郎はどいてろ!」

不良が一星を殴る。

一星「うわっ!」

茉央「っ! 一星くんに何すんのよ!」

ボコっと茉央が不良を殴る。

不良「ぐげっ!」

不良が崩れ落ちる。

同時に、パサっと胸パッドが落ちる。

茉央「パサ? ……きゃー! 胸バッドが」

一星「茉央ちゃん……」

茉央「いや、こ、これは違うのよ……。その」

一星「ふふ。おかしいと思ってたんだ。昨日と全然違うんだもん」

茉央「あ……」

一星「僕なんかに言われても、気持ち悪いかもしれないけど……。茉央ちゃんは茉央ちゃんのままでいいと思うよ。僕、茉央ちゃんくらいの方が……好きって言うか……って、ごめん! なんか、変態っぽいよね」

ザザッと通信機のノイズの音。

蓮夜「待たせたな。今、最高の作戦を思いついた。作戦5」

茉央「なんか、もう、面倒くさくなってきたな……」

美月「え?」

茉央「ねえ、一星くん」

一星「なに?」

茉央「好きです! 付き合ってください!」一星「……はい。お願いします」

ザザッと通信機のノイズの音。

美月「やったー!」

蓮夜「ふふ。ミッションコンプリートだな」

美月「その恋応援し隊、大成功! 私たちにかかれば、どんな恋もいちころだね!」

茉央(N)「いや、あんたたちは何もしてないから。っていうか、邪魔なだけだったんけど」

終わり。

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