鍵谷シナリオブログ

【声劇台本】悪魔のエクソシスト

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■概要
人数:5人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代ファンタジー、シリアス

■キャスト
御子柴 貴也(みこしば たかや)
ミレイ

■台本

貴也(N)「エクソシスト。人間の心の隙に入り込む悪魔を祓う仕事。爆発的に精神病患者が増えたことにより、様々な研究が行われた結果、悪魔の仕業だと証明された。依然は、エクソシストはごく限られた人間にしかできなかったが、国がエクソシストの育成に着手。10年が経過した今、エクソシストは独自の国の機関として発足されたのだった」

貴也「今日から配属になった御子柴孝也です! よろしくお願いいたします!」

所長「おお、貴也くん。話は聞いてるよ。アカデミーでは主席だったらしいじゃないか」

貴也「はい! ですが、新人です! 色々と現場で経験を積み、早くみなさんの力菜になれるよう、努力します」

所長「ははは。発言まで優等生だな。……そんな貴也くんに質問だ。悪魔とは何だと思う?」

貴也「姑息で、憎むべき、人に害をなす存在です」

所長「ふむ……。君にはミレイの下についてもらおう。ミレイくん、来てくれ」

ミレイ「……はい」

ミレイが立ち上がり、歩み寄って来る。

貴也「……」

所長「ミレイくん、新人の貴也くんだ」

ミレイ「聞こえてました」

所長「貴也くん。こっちはミレイくんだ」

貴也「……」

所長「どうかね? ミレイくんの印象は?」

貴也「とても綺麗な人だと……」

所長「はっはっはっは。正直者だな、貴也くんは」

貴也「はっ!? あ、いえ、申し訳ありません」

所長「まあ、正直というのは美徳だ。この荒んだ世の中では、君のような人間はなかなかいない」

貴也「恐縮です」

所長「だが、我々は悪魔と対峙する仕事だ。正直なだけだと生き残れないぞ」

貴也「は、はい! 申し訳ありません」

所長「うむ。……それでだ、君にはミレイくんの下についてもらうのだが」

貴也「はい」

所長「ミレイくんは……悪魔だ」

貴也「……は?」

所長「はは。まあ、大概は最初はそんなリアクションだ」

貴也「あの……どういうことでしょうか?」

所長「言葉通りだ。ミレイくんは現世に顕現した悪魔なんだよ」

貴也「待ってください。悪魔がエクソシストなんですか?」

ミレイ「何か、問題があるのか?」

貴也「……悪魔が悪魔を祓っている、ということですか?」

ミレイ「ああ、そうだ」

貴也「所長、私はアカデミーでは、悪魔は滅ぼすべき存在だと習いました。どんな例外もない、と」

所長「それは違うな。人間に害をなす悪魔は、だ」

貴也「……違いがあるのでしょうか?」

所長「罪を犯した……例えば、殺人を犯した人間は裁かれるべきだと思うかい?」

貴也「人間であろうと、罪を犯したのであれば、罪は償うべきです」

所長「ふむ。では、罪を犯す人間がいるから、人間全体を裁くべきだと思うかね?」

貴也「いえ、それはさすがに、乱暴な理論です」

所長「そういうことだよ」

貴也「……」

所長「納得いっていないようだな。まあ、ミレイくんと仕事をすれば、わかるようになるさ」

ピンポーンとチャイムのような音が鳴る。

アナウンス「エクソシストの派遣要請が出ました」

所長「ちょうどいい。さっそく、二人で行ってきてくれないか?」

ミレイ「承知しました」

貴也「……」

場面転換。

ミレイと貴也が並んで歩いている。

貴也「あの……悪魔というのは本当ですか?」

ミレイ「何度も、そう言っている」

貴也「悪魔が顕現する、なんて始めて聞きます」

ミレイ「だろな。私も、私以外の事例は聞いたことがない」

貴也「……」

ミレイ「不満そうだな」

貴也「悪魔が悪魔を祓っているということですよね?」

ミレイ「ああ。そうだ」

貴也「できるんですか? 仲間を祓うんですよ? 手心を加えたりは……」

ミレイ「おかしなことを言うな、君は」

貴也「え?」

ミレイ「この世界には警察という組織がある。その警察では人が人を捕まえる仕事だ。その警察官に対して、同じ人間を捕まえるのに手心を加えるのでは、と一々心配するのか?」

貴也「そ、それは……。でも、それとは……」

ミレイ「納得がいってないようだな。まあいいさ。君が納得しようがしまいが、私はエクソシストとして悪魔を祓う。それだけだ」

二人が立ち止まる。

ミレイ「ここだ」

チャイムを押すミレイ。

ミレイ「エクソシストです」

女性の声「通報は誤報です。帰ってください」

ミレイ「確認しますので、中に入れてください」

女性の声「必要ありません!」

ミレイ「とのことだ。行くぞ」

貴也「帰るんですか?」

ミレイ「強行突破だ」

バキっとドアを破壊する音。

場面転換。

ツカツカと廊下を歩くミレイ。

女性「な、なにを? 帰ってください」

ミレイ「悪魔がいないと確認できれば帰ります」

女性「だからいないと……」

貴也「まずくないですか?」

ミレイ「君は黙っていろ。……ここか」

女性「やめて!」

ガチャリとドアを開けるミレイ。

女の子「きゃあ! な、なに?」

女性「娘です! 手出しはしないで」

ミレイ「なるほど……。遺体に宿ったか」

貴也「どういうことです?」

ミレイ「おそらく、娘は病気だったんだろう。死ぬ間際に悪魔が宿った」

貴也「……」

ミレイ「当の娘は既に死んでいる。つまり、悪魔が死体を操っている」

女性「違います! あれは娘です」

ミレイ「……娘はもう死んでる」

女の子「お母さん……」

女性「大丈夫よ。心配いらないわ。……とにかく、帰って。たとえ、悪魔だろうと、私の娘です」

ミレイ「受け入れられないのか? 娘の死が」

女性「あんたに何がわかるっていうのよ! この子は私の娘! 悪魔だからってなによ! この子は何も悪いことはしてないわ」

ミレイ「悪魔が人間に宿る場合、精神的エネルギーは宿主から吸い取る。だが、この悪魔の宿主は死んでいる。では、どこから精神エネルギーを得ているのか……」

貴也「……母親から」

ミレイ「そうだ。何も悪さしていないわけではない。あなたに実害が出ている」

女性「だから何なのよ! 私自身がいいって言ってるのよ!」

女の子「私ね、悪魔だけど、悪いことしてないよ? お母さんとずっと一緒に暮らしたいだけ。他の人にも迷惑はかけないわ」

貴也「……あの、お互いに納得しているのなら……」

ミレイ「私たちの仕事は悪魔を祓うことだ」

貴也「でも、この事例は誰にも害は出ていません。祓わなくたって……」

ミレイ「おそらく、母親の方は10年くらいはもつだろう。だが、その後はどうする?」

子供「お母さんが死んだら、私も消えるわ」

ミレイ「どこにその保証がある? ……いや、きっと、この母親が死ぬ前に他者から精神エネルギーを得ようとするだろう」

女の子「それがなによ! 別に死ぬまで吸い取るわけじゃないからいいじゃない!」

ミレイ「死ぬ死なないじゃないんだ。悪魔が他者から精神エネルギーを得ることは、人間の世界では違法なんだ」

女性「やめて! 帰って!」

ミレイ「言い残すことはあるか?」

女の子「お願い! 助けて! 見逃して」

ミレイ「……消えろ」

女性「やめてーーーー!」

場面転換。

ミレイと貴也が並んで歩く。

貴也「本当によかったんでしょうか?」

ミレイ「なにがだ?」

貴也「母親の方は精神的に異常をきたしました。あれなら、まだ……」

ミレイ「悪魔を残しておいた方がよかった」

貴也「……」

ミレイ「エクソシストは悪魔を祓うのが仕事だ」

貴也「それはそうですが……」

ミレイ「君は本当におかしい奴だな。私より、よっぽど君の方が悪魔に手心を加えている」

貴也「……」

ミレイ「エクソシストをやっていれば、こいうことはある。助けた人間から罵倒されることだって、な」

貴也「ミレイさんは気にならないんですか?」

ミレイ「気にする必要はあるのか? 何度も言うがエクソシストは悪魔を祓う仕事だ。それ以上でも以下でもない。どんな罵声や誹謗中傷を受けても、気にせず仕事を全うするだけだ」

貴也「強いですね……」

ミレイ「悪魔だからな。人間の言うことで傷ついたりはしない」

貴也「さすがです」

ミレイ「ん!」

ピタリとミレイが立ち止まる・

貴也「……アンティークショップに何か用なんですか?」

ミレイ「見ろ! あの人形! 凄い可愛いと思わないか!?」

貴也「はは。ミレイさんって、何か、あんまり可愛いものって似合わないですよね」

ミレイ「……っ! ガーン……」

貴也「あれ? 人間の言うことで傷ついたりしないんじゃないんですか?」

終わり。

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