【声劇台本】電波と霊界の間に

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■関連シナリオ

〈電波と宇宙の間に〉

■概要
人数:2人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
真(まこと)
羽村 美夜(はむら みや)

■台本

真(N)「宇宙人と話をしたい。最初はただ、あいつの願いを叶えたかっただけ。毎日、毎日、真剣に交信をしようと試みているあいつの姿を見て、その願いが叶って欲しい、叶えてやりたいと思ったのがきっかけだった。トランシーバーを使って交信する方法を教えて……俺が宇宙人のフリをすることであいつの願いを叶えた。……だが、これはあいつを騙す行為だ。あいつの願いを叶えるために、俺はあいつをだまし続ける。果たしてそれは、あいつにとって、喜ばしいことなんだろうか?」

ザザっというトランシーバーのノイズ音。

美夜「……どうかしたの?」

真「え? いや、なんでもない」

美夜「何か悩み事があるなら、聞くよ?」

真「いや、大丈夫だ。宇宙人に悩みなんかない」

美夜「そう……」

真「それより、羽村のことが聞きたいな」

美夜「なにが聞きたいの?」

真「そうだなぁ。小学校のときのこと、聞いていいか?」

美夜「うん。でも、あんまり今と変わらないかも……」

場面転換。

学校のチャイム。

階段を上る真。

真「……はっくしゅん。うう、風邪かな」

ガチャリとドアを開けて、屋上に出る。

真「よお、羽村……って、なにやってんだ? 変な棒持って」

美夜「……ダウジング。幸せを見つけようと思って」

真「へー。幸せを見つけられるのか。すげーな」

美夜「うん。宇宙の技術」

真「なんでもありだな、宇宙人」

美夜「宇宙人はすごいの」

真「けど、なんで急に幸せなんか探そうと思ったんだ?」

美夜「真にプレゼントしようと思って」

真「え?」

美夜「最近、なんか悩んでるみたいだから。元気出してもらいたくて」

真「な、何言ってんだよ。俺はいつも元気だって。それより、羽村、雑誌、新しいの出てたぞ」

ガサガサとカバンを漁って、一冊の本を出す。

真「月刊オカルト。いつも読んでただろ?」

美夜「ありがとう。でも、これ、霊界通信の方」

真「へ?」

美夜「月刊オカルトには銀河通信と霊界通信があるの。霊界通信は幽霊の特集が載ってる」

真「え? あ、ホントだ。幽霊とか妖怪の話ばっかだ。くそ、間違った」

美夜「似てるからしかたないよ」

真「……羽村は幽霊って信じてるのか?」

美夜「……うん。わかんない。宇宙人にしか興味なかったから」

真「そっか……。興味なかったか」

美夜「でもいると思う」

真「え?」

美夜「宇宙人がいるなら、幽霊もいると思う」

真「……あー、確かに。宇宙人がいるなら、幽霊もいそうだよな……はっくしゅん」

美夜「……風邪ひいたの?」

真「いや、大したことないよ。それじゃ、俺はそろそろ行こうかな。羽村は今日も宇宙人と話すんだろ?」

美夜「……うん」

場面転換。

トランシーバーのノイズ音。

真「我は宇宙じ……はっくしゅん!」

美夜「……風邪、大丈夫?」

真「いや、風邪じゃない。宇宙人は風邪ひかないからな」

美夜「そんなことない。宇宙風邪っていうのがある」

真「え? そうなの? じゃ、じゃあそれかな」

美夜「無理しない方がいい。今日は帰って寝た方が良いよ」

真「あー、そうだな。そうするよ」

美夜「駅前の薬局に売ってる、超ユッケルがすごく効くよ」

真「ありがとう。買って帰るよ。じゃあな」

美夜「うん」

場面転換。

ドアを開けて、真が部屋に入って来る。

真「はっくしゅん! あー、やべえ。本格的に悪化してきたか? さっそく、超ユッケル飲むか……」

ガタンとトランシーバーを落とす真。

真「くそ、トランシーバーが。……あれ? やべ! 宇宙人用の周波数から変わっちまった。どれだっけ?」

カチカチとチャンネルを動かす真。

ザザザとトランシーバのノイズ音。

女の声「……寂しい。寂しいな」

真「うわっ! なんか、繋がった」

女の声「え? 今日はもう帰ったはずじゃ」

真「あー、すいません。チャンネル動かしてたら繋がってしまったみたいです。間違い電話……じゃなくて、間違い電波です」

女の声「……」

真「じゃ、じゃあ、切りますね」

女の声「……私は幽霊」

真「え? ゆ、幽霊?」

女の声「そう。このチャンネルは霊界に繋がる周波数」

真「……マジか。ホントにいたんだ、幽霊」

女の声「……今、何か悩みがあるの?」

真「え? な、なんで知ってるんだ?」

女の声「幽霊はすごいの。何でも知ってる」

真「……宇宙人みたいだな」

女の声「悩みってなに?」

真「いや、でも、見ず知らずの幽霊に悩みを相談するっていうのもな……」

女の声「見ず知らずだから、相談しやすいと思う。誰にもバレないし」

真「ああ、そっか。なるほど。じゃあ、聞いてもらおうかな。えっと……俺、今、気になっている奴がいるんだ」

女の声「……うん」

真「俺、そいつの願いを叶えるためっていってさ、嘘付いたんだ」

女の声「嘘?」

真「ああ……。そいつはさ、宇宙人と話すのが夢だったんだ。だからさ、俺、宇宙人のフリして、そいつと話してるんだよ。……でもさ、これって、おかしいよな。あいつを喜ばせるために、俺は嘘を付いてる。あいつの笑顔を見るために、あいつを傷つけてるんだ」

女の声「……」

真「きっと、いつかバレると思う。でもさ、嘘だってわかったら、あいつ……きっと落ち込む。もちろん、俺は嫌われると思う。それくらいのことをしてるからな。でも、あいつが、夢が叶ったのが嘘だって知って、落ち込むのは嫌なんだ。あいつ、喜んでたんだよ、願いが叶ったって」

女の声「……」

真「あー、くそ。どうして、俺はあんなことしちまったんだろ。あいつの喜ぶ顔が見たいってだけで、あんな嘘を……」

女の声「大丈夫」

真「え?」

女の声「その子は傷ついてない。真……あなたのその気持ちが嬉しいと思う」

真「い、いや、わかんないだろ、そんなこと」

女の声「わかる。だって、幽霊は凄いから」

真「……信じていいのか?」

女の声「うん。だから、あなたは気にしなくていい。たくさん、その子とお話してあげて」

真「わかった。ありがとな。……えっと、その、もう少し相談に乗ってくれないか? そいつとどういう話をしたら喜ぶかとか、色々聞きたいんだ」

女の声「……でも、風邪は?」

真「悩みが解消したらよくなった」

女の声「そう。じゃあ、いっぱい、話そ」

真「ああ。それでさ……」

場面転換。

学校のチャイム。

屋上にやって来る真。

真「羽村、聞いてくれ! お前の言うとおり幽霊いたぞ! トランシーバーで通話できたんだ」

美夜「すごいね」

真「ああ。今日も話す約束してるんだ……って、あ!」

美夜「どうしたの?」

真「羽村、宇宙人と話すんだよな」

美夜「大丈夫。宇宙人は宇宙風邪でしばらくお休みだから」

真「そっか。よかった。じゃあ、俺、これから幽霊と話すから、行くな」

美夜「うん」

場面転換。

ガラガラと教室のドアを開ける真。

放課後なので誰もいないので、静か。

真が机に座り、トランシーバーのスイッチを入れる。

ザザザというノイズ音が響く。

しばらくした後、プツという繋がる音。

女の声「……私は幽霊」

終わり。

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