■概要
人数:6人
時間:5分
■キャスト
佐藤 純一(さとう じゅんいち)
春佳(はるか)
オーナー
坂之下 将人(さかのした まさと)
真野 美由紀(まの みゆき)
田辺 梓(たなべ あずさ)
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■台本
淳一(N)「俺の名前は佐藤純一。高校生でありながら探偵をしている。俺が今まで関わってきた犯罪については犯人を逃したことは無い。たった一人も。つまり迷宮入りした事件はないということ。そう、俺はパーフェクト探偵なのだ」
場面転換。
春佳「淳一君、みんなを集めたよ」
淳一「ありがとう、春佳くん」
オーナー「おいおい。これは一体、どういうことなんだね?」
淳一「皆さんに集まってもらったのは、この殺人事件の犯人がわかったからです」
将人「殺人事件の犯人……だと?」
淳一「ええ。解けてしまえば実に簡単な事件でした。まずは事件をおさらいしてみましょう。真野美由紀さん殺害のトリックです」
オーナー「トリックだって? そもそも……」
淳一「今から説明します。まず、美由紀さんが見つかったのは、この304号室です。悲鳴を聞き付けて、ここにいる全員で駆け付けました」
将人「おいおいおい。待てよ。ここにいる全員で304号室に向かったなら、犯人はどうやって犯行に及んだっていうんだ。既に矛盾してるだろ」
淳一「将人さん、実にいい着目点です。そう。美由紀さん以外にはこの談話室に、全員が集まっていました。これはアリバイによる不可能犯罪かと思われました。でも、こう考えれば、それが根底から覆ります」
オーナー「どういうことだね?」
淳一「それは……被害者はまだ死んでなかったのです」
将人「どういうことだ?」
淳一「つまり、犯人と被害者はグルだった」
オーナー「はは。そんなバカな話があるかね。自分が殺されるのを協力するなんて」
淳一「いえ、協力したんです。なぜなら、被害者は違う人物を狙うと思っていたから」
春佳「えーと、整理すると、犯人と被害者は協力関係で、本当は別の人を殺害すると被害者は思い込んでいた、ということ?」
淳一「その通り。最初、俺たちは彼女の死体を見つけたとき、本棚の下敷きになったことによる事故だと思った。……そう、つまり、発見された時にはナイフが刺さっているところは見えていなかった」
オーナー「ううむ。よくわからんな」
淳一「恐らくこうです。最初、犯人は被害者に事故にあったように見せかけてくれと頼んだ。それは本当のターゲットを油断させるため、とでも言いくるめたのでしょう。そして、被害者は304号室に入り、本棚の本を一旦全部出してから本棚を倒した。自分が下敷きになるような形で。そして、大声で叫びます。その声でここにいる全員が304号室に行きます。304号室に入ると本棚に下敷きになっている被害者を見つけます。犯人は最初に駆け寄り、自分の体を死角にして、背中にナイフを突き立てた。なんとも大胆な犯行です。つまり、あの殺人事件は我々の目の前で行われたのです」
オーナー「なるほど。ということは、犯人は一番最初に駆け寄った人間ということになるな」
淳一「そうです。犯人は……坂之下将人さん、あなたです!」
将人「は? お、俺? な、なんで俺が?」
淳一「色々と調べさせてもらいました。将人さん、あなた、田辺梓さんに300万の借金がありますね」
将人「げっ! なんでそれを……」
淳一「借金で首が回らなくなった。だから、殺害しようともちかけたのです。……ですが、本当は、あなたは梓さんと裏で交際していた。借金のことで呼び出されたと言って出て行っては、梓さんと密会していた」
美由紀「ちょっと! 将人! それ、ホントなの!?」
将人「まて、誤解だ、美由紀。落ち着けって。おい! お前! どこにそんな証拠が!」
淳一「証拠はこの写真です。あなたと梓さんがホテルに入って行くところです」
将人「なんで、お前がそんなものを……」
淳一「梓さんから借りました」
将人「なっ!」
梓「だって……将人くん、いつまでたっても美由紀ちゃんと別れてくれないから」
美由紀「はあ? この泥棒猫! なにを図図しいことを言ってるのよ!」
梓「将人くんは私の物よ」
美由紀「舐めてるじゃないわよ!」
将人「ふ、二人とも落ち着けって……」
梓・美由紀「あんたは黙ってて!」
将人「は、はい……」
淳一「……ふう。これで事件は解決だ」
オーナー「なかなか楽しかったよ。全部君が考えたのかい?」
淳一「え、ええ、まあ。俺、こういう古い建物を見ると、つい妄想が膨らんでしまって」
オーナー「見ている分にはいい暇つぶしになるんだがね。……ただ、まあ、やり過ぎには注意した方がいい。いつか訴えられてしまうよ」
淳一「……き、気を付けます」
淳一(N)「俺の名前は佐藤純一。俺が今まで関わってきた犯罪については犯人を逃したことは無い。つまり迷宮入りした事件はないということ。そう、俺はパーフェクト探偵。……ただ、唯一、俺に足りないもの。それは未だに事件に巻き込まれたことがないということだ」
終わり。