■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
啓太(けいた)
和也(かずあ)
佐々木 久美(ささき くみ)
■台本
啓太(N)「好きな子に意地悪をする。小学生ではよくある話だ。もちろん、俺もそうだった」
場面転換。
啓太が小学生の頃。
啓太「ほらほら、毛虫!」
久実「きゃー! 止めてよ、啓太君!」
啓太「あはははは! 待て待て!」
久実「もう! 啓太君、いや!」
場面転換。
啓太(N)「小学5年の頃、好きだった久美ちゃん。結構、仲が良かったけど、俺がよく悪戯をしていたから、友達以上の進展はなかった。まあ、小学校で恋愛とかは正直、早かったというのはあったと思う。でも、あんな意地悪をしなければ、良い感じのまま、中学、高校と進んでいれば、もしかしたら……と、今でも考える。はあ……ホント、あの頃の俺は、ガキだったよな。今なら、もし、今、もう一回チャンスがあれば、あんなことはしなかったのに……」
場面転換。
ゲームの効果音。
カチカチとゲームをやっている啓太。
啓太「あ、くそ、また死んだ」
インターフォンの音が鳴る。
啓太「はーい」
立ち上がって、ドアを開ける啓太。
和也「よお!」
啓太「お、和也。どうしたんだ、急に?」
和也「どうしたんだ、じゃないだろ。3時限目、どうするんだよ?」
啓太「あー、いや、今、ゲームがいいところでさ」
和也「やっぱり……。今日の経済学、小テストがあるぞ。多分、今日休んだら、単位落とすことになる」
啓太「マジで! やっば! 今、用意する!」
場面転換。
啓太と和也が歩いている。
和也「けど、啓太ってホント、小学校の頃から変わってないよなー」
啓太「は? なんだよ、それ」
和也「精神年齢が変わってないっていうか、体だけ成長したって言うかさ」
啓太「んなわけねーだろ。ちゃんと大人になってるって」
和也「大人ね……。そういえば、知ってる? 男って、大人と子供の違いはおもちゃの値段だけって言葉があるらしいぞ」
啓太「おもちゃの値段? どういうことだよ?」
和也「つまり、大人になってお金を持つようになって、おもちゃの値段が上がるだけで、精神年齢は変わらないって例えだよ」
啓太「ふーん。なるほどね。けど、さすがに小学生から成長してないわけないだろ」
和也「どうだかなー。って、小学生っていえば、啓太、同窓会行く?」
啓太「同窓会? なにそれ?」
和也「え? お前、同窓会の案内、見てないの?」
啓太「……見てない」
和也「そういえば、郵便受け、ヤバいことになってたな。帰ったら漁って見ろよ。案内きてるみたいだからさ」
啓太「ああ。……和也はどうするんだ?」
和也「俺? どーすっかなー。小学校の頃だろ? 付き合いあるの、お前くらいだし、あんまり小学校の頃のいい思い出ないからなー」
啓太「小学校の思い出かー」
啓太(N)「久美ちゃん、来るのかな?」
場面転換。
携帯の着信音が鳴り、取る啓太。
啓太「もしもし?」
和也「啓太か。同窓会の件なんだけど」
啓太「ああ、あれさ、俺も悩んでるんだよ」
和也「久美ちゃん、来るってさ」
啓太「え?」
和也「お前好きだったろ? 久美ちゃんのこと」
啓太「おま、何言ってんだよ」
和也「隠すなって。お前は気づかなかったかもしれないけど、みんなにはバレバレだったんだぞ」
啓太「なっ!」
和也「意地張るなって。そんなの張っても、いいことないぞ」
啓太「べ、別に、昔の話だよ、それは。今は、その……なんとも思ってないし」
和也「はあ……。ホント、変わらないな」
啓太「なにがだよ!」
和也「まあ、いいから、同窓会、行ってこいよ。俺は行かないからさ。それなら、気にしなくていいだろ?」
啓太「気にするとかしないとか、何言ってんだよ」
和也「はいはい。ごめんごめん。とにかく、気晴らしに行って来いよ」
啓太「……」
場面転換。
同窓会会場。
ガヤガヤと賑わった部屋。
啓太(N)「和也に勧められるまま、同窓会に来てしまった。……久美ちゃん、本当に来るんだろうか? もし、来たとしたら、昔の俺とは違うってところを見せたい。もう、あんなガキじゃないってところを証明したい……」
啓太「……」
久実「あれ? 啓太君?」
啓太「え?」
久実「覚えてる? 一緒のクラスだった、佐々木久美!」
啓太「あ、う、うん。覚えてる」
久実「あはは。よかった。忘れた、なんて言われたらカッコ悪かったからさ」
啓太「はは。忘れたりしないって」
久実「でも、懐かしいよね。なんか、みんな、大人になったな―って感じ」
啓太「佐々木さんも……」
久実「ええ、そんな他人みたいな感じで呼ばないでよ。昔みたいに久美でいいって」
啓太「く、久美ちゃんもすごく大人っぽくなったね」
久実「え? ……あ、その……ありがとう。まさか、啓太君にそんなこと言われるなんてね」
啓太「はは。もう小学生じゃないからね」
久実「だよね」
啓太「久美ちゃんは今、短大に通ってるんだっけ?」
久実「そうだよ。女子大のね。短大だけど、単位とか厳しくて、バイトとかもできないんだよね」
啓太「そうなんだ? 大変そうだね」
久実「おかげで、出会いがなくってさー。啓太君は彼女とかいるの?」
啓太「え? い、いや、いないよ。全然。久美ちゃんは?」
久実「あはは。今、出会いないって言ったばっかりじゃない」
啓太「あ、ああ。そ、そうだよね。……あ、あのさ」
久実「ん?」
同級生「うえーい! 啓太、飲んでるかぁ?」
啓太「うわ、重い重い!」
同級生「ん? 佐々木と話してるの? あー、そっか、そっか。啓太、佐々木のこと好きだったもんなー」
啓太「っ! ち、違うって!」
久実「え?」
同級生「まーたまた! 意地張るなって! ここで告白しちゃえよ!」
啓太「だから、違うって!」
久実「……」
同級生「なーんだよ、面白くねーな」
啓太「……」
久実「……」
啓太「あ、佐々木さん、これ、美味しかったよ」
久実「え? ホント? いただきます……って、辛い!」
同級生「あはっはっはっはっは!」
啓太「あはははははは!」
久実「もう! 啓太君は、あの頃から、全然変わってないね!」
久実が立ち上がって歩き去ってしまう。
啓太「あ……」
啓太(N)「好きな子に意地悪をする。成長した俺は、もうそんなことはしないと思っていたのだが……。どうやら俺は和也や久美ちゃんの言う通り、あの頃から全然変わってないようだ……」
終わり。