■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、近未来ファンタジー、シリアス
■キャスト
イーノ
ミーア
その他
■台本
イーノ(N)「俺の親父は若い頃は軍のエースパイロットだった。空を自由に舞い、撃墜した戦闘機は50とも噂がある。戦争が終わった後、国民は軍縮を希望する。そして、親父はそのタイミングで軍を抜けてフリーのパイロットになった。フリーのパイロットと言っても、小型の航空機で様々な場所に物を届けるという仕事だ。幼いころに母親が死んでいた俺は、年中親父が世界中を飛び回っていたため、一人で過ごすことが多かった。だが、それを寂しいと思ったことは無い。俺も大きくなったら、親父の手伝いをし、大空を舞う。それだけが俺の全てだった」
将校「父上は事故で亡くなりました……」
イーノ(N)「突然の死の報告。家に来た、軍の将校を言葉を聞いた瞬間は頭が真っ白になって、頭に入って来なかった」
将校「父上は空で、伝説の島である、飛竜の谷を見つけたのです。父上が乗っていた、航空機が墜落した際、今の際で残した言葉が、飛竜の谷、でした。その証拠もブラックボックスにもそれが関連する言葉が入っていました」
イーノ(N)「飛竜の谷。空に浮かぶとされている伝説の島だ。その飛竜の谷には、様々な財宝が眠っているとされるが、その財宝を守っているのが竜であり、近づく者は全て焼き払うと言われている。そんな、ある意味、おとぎ話のような存在を受け入れろと言う方が無理だ」
将校「あなたの父上は軍に対し、とても貴重な情報を残してくれました。軍はこれから、父上が残してくれた情報を元に、飛竜の谷を捜索します」
イーノ(N)「そのことは世間に一気に広がった。眉唾ものの話だったが、軍が公式に公開したことで、世間は信じ込み、一気に盛り上がった。そして、次は自分が見つけると言って、空に向かう者も少なくなかった」
将校「飛竜の谷はとても危険です。一般の方が探すのを禁止いたします。また、その存在が確認できるまでは、個人での航空は制限させていただきます」
イーノ(N)「つまり、軍は飛竜の谷を見つけるために空に飛び立つことを禁止したのだ。また、そうしたことで、親父が飛竜の谷を見つけたという話も、さらに信ぴょう性が増した。……だが、俺は納得できなかった。というのも……」
ザーク「N346ポイントを飛行中。前方に巨大な入道雲を発見。これより、迂回する……ん? なんだ、あれは? 空に巨大な……。そんなバカな。あれは……」
爆発音が響く。
イーノ(N)「これが親父が残したブラックボックスの音声だ。……この中には一言も、飛竜の谷という言葉は入っていない。あるのは……巨大な何かを発見したということだけだ」
将校「軍事秘密だが、息子の君だからこそ、特別に聞かせました。くれぐれも他言は無用で……」
イーノ(N)「確かめたい。本当に親父は飛竜の谷を見つけて、その竜に撃ち落されたのだろうか。そして、親父の死から5年が経った今でも、軍が飛竜の谷を発見したという報告もなく、依然、空への制限もかかったままだ……」
ミーア「ねえ、本当に行くの?」
イーノ「ああ」
ミーア「個人で航空機飛ばすのは違法だよ?」
イーノ「知ってる」
ミーア「見つかったら、警告なしで撃ち落されるかもしれないんだよ?」
イーノ「知ってる」
ミーア「はあ……。まったく、頑固なんだから。いいわ。好きなだけ行ってくればいいのよ。撃墜されても、骨なんか拾ってあげないんだからね」
イーノ「わかってる」
ミーア「ま、私の作った機体だから、心配してないけどね」
イーノ「……ありがとう、行って来る。じゃあな」
ミーア「はいはい。またね」
飛行機が飛び立っていく音。
場面転換。
飛行機が飛んでいる音。
機内。
イーノ(N)「俺はこの5年、軍が許可している航空機のルートを調べ上げた。その中で、一か所だけ、どの航空機も通らない場所がある。……軍は何かを隠している、俺の直感がそう言っている」
通信が入る。
兵士「そこの航空機。認定が下りてないだろ? しかも、立ち入り禁止空域だ。ただちに引き返せ」
イーノ(N)「立ち入り禁止空域……。やっぱり何かあるな」
イーノの飛行機が速度を上げる。
さらに通信が入る。
兵士「繰り返す。ただちに引き返せ。命令に従わなければ撃ち落す」
イーノの飛行機の速度がさらに上がる。
兵士「……警告を受け入れなかったとみなし、撃ち落す」
イーノの飛行機に向かってミサイルが飛んでくる。
イーノ「ミサイル……。近くに戦闘機はない。どこから撃ってきた? まさか!」
ミサイルを躱し、加速するイーノの飛行機。
イーノ「なんだ、あれは? 空に巨大な……軍艦?」
イーノ(N)「それはまさに空の要塞と言っていいだろう。巨大な飛空艦がそこにあった」
イーノ「なんで、こんなものを作っているんだ? 戦争は終わったはずだ! 軍も軍縮を国民に約束したはずなのに……」
兵士「……視認してしまったな? これで貴様を生かして返すわけにはいかなくなった。死んでもらう。あの飛竜の谷を見つけた男のようにな」
イーノ「親父……。そうか!」
イーノ(N)「つまり、親父はこの飛空艦を見たんだ。軍はこんなものを作っていることは国民に黙っている。見られるわけにはいかない。だから、親父は撃ち落された。そして、飛竜の谷を利用して、航空の制限をすることで、飛空艦をこの空域に隠していたんだ」
ミサイルが飛んでくる。
イーノ「くそ!」
イーノ(N)「こんなものを作っているということは、戦争を……いや、国自体を武力制圧するつもりか」
兵士「これで終わりだ」
大量のミサイルが撃ち込まれる。
イーノ「くそ! やられてたまるか!」
何とかミサイルを躱し続けるが、一発当たる。
イーノ「うわあああああああ」
飛行機が墜落していく。
場面転換。
アナウンサー「ニュースです。昨日、無許可の飛行船が飛竜の谷に近づいたため、竜によって撃墜されました……。軍はこれにより……」
急にノイズが走り、パッと音声が切り替わる。
イーノ「俺は飛竜の谷を見つけたとされる男の息子だ。親父は飛竜の谷を見つけたから落とされたわけじゃない。軍は巨大な飛空艦を作成し、それを隠していた。証拠としての映像と俺を撃墜しようとした兵士の音声がある。まずはこの映像を見て欲しい」
場面転換。
イーノ「ふう……」
ミーア「お疲れ」
イーノ「お前の付けてくれた緊急脱出装置のおかげで助かったよ」
ミーア「録画も録音も脱出装置の方につけたのは、いい仕事したでしょ?」
イーノ「ああ。感謝してる」
ミーア「でもいいの? これで軍に狙われることになるよ」
イーノ「いいさ。どうせこの件で軍は、政府と国民につるし上げられる。少しの辛抱さ」
イーノ(N)「……待たせたな、親父。親父と一緒に空を飛ぶことはできなかったけど、仇はちゃんと討ったぜ」
終わり。