■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
武司(たけし)
桜(さくら)
拓海(たくみ)
礼二(れいじ)
その他
■台本
武司「よし、これで準備OKだ!」
桜「武司、本当にこれで、一位取れるの?」
武司「ああ、完璧だ。今年こそはB組が優勝をいただくぞ」
桜「2年間、ずっとA組にやられてるもんね」
武司「これがラストチャンスだ。絶対に売り上げ一位を達成して見せる」
ズズズとラーメンの麺をすする音。
拓海「うん、やっぱり美味いな! このラーメン」
桜「ちょっと、拓海、なに食べてるのよ! 十分試食はしたでしょ! 明日の売り物なんだから、これ以上、食べないでよ」
拓海「わかってるんだけど、旨くてよ」
武司「……いや、マヨネーズを入れて、そんなこと言われても、ちょっとな」
桜「拓海はマヨラーだから、マヨネーズ入れればなんでもうまく感じるのよ」
拓海「バカ言うな! そんなことはない! てか、ホント、この醤油ラーメン、マヨネーズ合うぞ」
武司「……マヨネーズ合うラーメンって、ヤバくないか? 自信無くなるな」
桜「大丈夫だって! クラスのみんなだって、全員が美味しいって言ってるんだから」拓海「なあ、トッピングでマヨネーズをメニューで入れておこうぜ」
桜「たーくーみ! もう黙ってて」
拓海「わ、悪かった……」
武司「よし! 準備は整った。後は明日の学園祭を待つだけだ!」
場面転換。
校内が賑やかな状態。
武司「いらっしゃい! 3年B組の出し物は本格的ラーメンだ! 絶対に損はさせない! 食べて行ってくれ!」
男「へー。学校祭の出し物でラーメンか。珍しいな。じゃあ食べていこうかな」
武司「ありがとうございます! 一名様、入りまーす!」
桜「うん、いい調子だね」
武司「ああ……。これなら勝てそうだ」
礼二「はーっはっはっはっは! あまいっ! あまいぞ、青葉武司!」
武司「飯沼礼二……」
礼二「確かに、メニューにラーメンを選んできたのは意外性があった。それにラーメンとなれば、好きな人間が多い」
桜「そうよ! だから、今年は私たちが勝つわ!」
礼二「しかーし! B組は絶対に、我がA組には勝てない!」
桜「なんでよ?」
礼二「学校祭の出し物順位は、売り上げで決まるのだ」
桜「それがどうしたのよ?」
礼二「学生が出せるものなんていうのは、大体値段は同じくらいだ。ということは、売った数で決まると言っていい」
桜「だから、なんなのよ?」
礼二「B組の弱点は……ズバリ! 回転率が悪い!」
桜「え?」
礼二「ラーメンはどんぶりで出す手前、教室内に入って食べることになる。つまり、教室内の席の数に縛られてしまうのだ」
武司「……」
礼二「見ろ。どんなに人気だと言っても、教室の前には行列が出来ている。お客は席について、注文し、食べ終わって初めて、売り上げになる。つまり、待っている間は売り上げにならない! しかも、ラーメンなんて、熱いものを出せば、食べるのに時間がかかるだろう」
桜「た、確かにそうかもしれないけど、それはあんたたちのクラスだって同じでしょ?」
礼二「ふっふっふ。甘いな! 我がクラスの出し物は……たこ焼きだ」
武司「……あっ!」
礼二「そう。たこ焼きはどこでだって食べれる。お客はたこ焼きを買っていくだけだ。つまり、回転率が違うというわけだ」
桜「そ、そんな……」
礼二「今年もA組が勝たせてもらうぞ」
武司「ふっ! ふふふふ」
礼二「な、何がおかしい」
武司「そんなこと、俺たちが全く考えなかったと思うのか?」
礼二「なんだと?」
武司「回転率……。そう、ネックはそこだった。だが、俺たちはそこを克服した」
礼二「どういうことだ?」
男子生徒「3番、5番、8番卓、替え玉入りました!」
礼二「替え玉……」
武司「そうだ。うちのラーメンは単価を落とし、量を少なめにしている。そして、名前をわんこラーメンにした」
礼二「わんこ……。まさか!」
武司「そう、ドンドン食べていくという方式だ。だからお客はドンドン食べて行く。替え玉を繰り返すことで、単価は上がっていくというわけだ。そして、スピード勝負のように見せかけることで、周りも食べるスピードが上がっていくんだ」
礼二「くっ! なかなかやるな。まあ、それでもA組の勝ちは譲らん」
武司「ふん。今年こそはB組の勝ちだ」
場面転換。
武司「7番卓、空いたぞ! すぐに次のお客を案内してくれ!」
桜「次の方、どうぞ!」
拓海「お会計はこちらでどうぞ!」
場面転換。
武司「……よし、良いペースだ」
桜「これなら、勝てそうだね」
そのとき、ガシャーンと何かが倒れる音が響く。
武司「な、なんだ?」
走り出す武司達。
場面転換。
武司「こ、これは……」
男子生徒「す、すまん。ちょっと目を離した瞬間に、スープの鍋をひっくり返された」
桜「そんな……。スープがないんじゃ、ラーメンを出せないじゃない!」
武司「……」
礼二「ふふふ。残念だったな! いやー、本当に残念。おそらくだが、今の段階では確かにB組の方が勝っていただろうな。だが、これで売り上げはストップだ。……これで、A組の勝ちだな」
桜「ちょっと、あんた! やり方がズルいわよ」
礼二「待てよ! 俺がやった証拠はあるのか?」
桜「くっ!」
礼二「じゃあな。A組も忙しくなってきた。手伝ってくるよ」
礼二が行ってしまう。
桜「そんな! せっかくここまで来たのに!」
武司「なにか手は無いか?」
桜「スープじゃなくて、お湯にするのは?」
武司「ダメだ。ガラスープがないんじゃコクがまったくでない」
拓海「……さすがにマヨネーズかけるだけだと、売り物にはならんよな」
武司「マヨネーズ? ……おい、拓海! ホントにうちのラーメンは、マヨネーズに合うんだな?」
拓海「あ、ああ……」
桜「何を考えてるの?」
武司「スープは無いが、タレと麺は残ってる」
場面転換。
生徒会長「全校生徒のみなさん。学校祭、お疲れ様でした。それでは、売り上げの順位を発表します。今年の出し物の売り上げ一位は……B組です!」
武司「よっしゃー!」
礼二「な、なぜだ!」
桜「ふふふ。武司の作戦、うまく、いったね」
礼二「な、なんだ? 何をしたんだ?」
武司「うちはスープは確かになくなった。だが、麺とタレは残っていた。だからお好み焼きにして売り出したんだ!」
礼二「なっ! お好み焼き?」
武司「ああ。あのタレはマヨネーズに合うってことで、タレを付けて焼いてマヨネーズをかけて、広島風のお好み焼きにしたんだ! 足りない材料は近くのクラスからもらってな」
礼二「く、くそ!」
武司「やった! ついに優勝だ!」
桜「やったね! 武司!」
武司(N)「最後まで諦めない! これが優勝に繋がったのだった」
終わり。