【声劇台本】夢の中では僕は最強

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■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
馨(かおる)
伽奈(かな)
剛史(つよし)
その他

■台本

司会「今回のミラージュファイト3、全国大会の優勝者は渡瀬馨選手に決まりました! これで3連覇! いやー、強い! まさに格ゲー界の帝王だ!」

ワッと歓声が上がる。

馨「よっし!」

司会「渡瀬選手には賞金として1000万が……」

場面転換。

目覚まし時計の音。

馨「……はっ! 夢か……」

目覚まし時計を止める馨。

馨「まあ、そりゃそうか。極度のあがり症の僕が大会で優勝なんて無理だよな。でも、あがり症さえなかったら……って、そんな妄想してる場合じゃない! 遅刻する!」

場面転換。

道を走る馨。

馨「ヤバい! 今日、日直なのに!」

ドンと人にぶつかる音。

馨「すいません。って、あ……」

剛史「おいおい。馨―。なんだ? 朝っぱらから俺と遊んで欲しいのか?」

馨「……剛史くん」

剛史「人にぶつかった罰だ。5千円出すのと3発ぶん殴られるの、どっちがいい?」

馨「え、えっと……その……殴られる方で」

ボコボコボコと三発殴られる音。

馨「あうっ!」

剛史「けっ! 朝から余計な体力使わせんじゃねーよ」

剛史が歩き去っていく。

馨「うう……」

そこに伽奈がやってくる。

伽奈「ったく、情けないわね」

馨「あ、伽奈ちゃん」

伽奈「少しはやり返したらどうなの?」

馨「見てたなら助けてよ……」

伽奈「はあ? なんで、あんたみたいな情けない奴を助けなきゃならないのよ」

伽奈が歩き去っていく。

馨「うう……。日直で遅刻って、また先生に怒られる……」

場面転換。

学校のチャイムの音。

場面転換。

トボトボと道を歩く馨。

馨「うう、居残りさせられたら、もうこんな時間だ。早く帰ってゲームしたかったのに」

風が吹き、カラカラと紙が転がって来る。

馨「ん? 何だろ? 紙が丸められてる」

拾い上げて、広げる馨。

馨「何か書いてる。えっと……好きな夢を見る方法? ええー。なんか嘘くさいな」

場面転換。

ドアが開き、家の中に入る馨。

馨「ただいまー。……って、そっか。母さんたち、今日から出張って言ってたな。よーし! 今日は思い切って徹夜でゲームしよっと」

場面転換。

馨の部屋。

ドサッとベッドに横になる馨。

馨「あーあ。でも、今日は疲れたな。……もう寝るか――あ、そうだ。どうせなら、いい夢みたいよね」

ガサガサと紙を取り出す馨。

馨「えーっと、好きな夢を見る方法、その一。どんな夢を見たいか考える、か。えーと、そりゃ、無敵の夢を見たいよね。いつもとは違う、格好いい僕が活躍する夢。次は寝転がって、目をつぶり、意識を集中させる。そして、目を開けたら、夢だと認識する。そうすれば、夢の中を好きなように展開できる……か。よし、やってみよう」

ベッドに寝転がる馨。

馨「……集中、集中……」

場面転換。

馨「はっ! 寝ちゃってた」

伽奈「きゃっ! ビックリした急に眼を開けないでよ」

馨「え? なんで伽奈ちゃんが家に?」

伽奈「ああ、そりゃ、母さんが……」

馨「……そっか。夢か。伽奈ちゃんが家に来るなんて、最近じゃあり得ないからね」

伽奈「ん? なにぶつぶつ言ってるのよ?」

馨「……これは夢、これは夢。最強の僕をイメージする……」

伽奈「ちょっと! 私の話を聞いてる?」

馨「ああ。悪い、なんだっけ?」

伽奈「へ? あんた、急にどうしたのよ?」

馨「何がだ?」

伽奈「いや、口調変えちゃって」

馨「これが本来の俺だよ。それより、いいのか、伽奈」

伽奈「な、なにがよ……」

馨「今、お前。男の部屋にいるんだぜ? しかも、二人きりだ」

伽奈「え? いや、その……」

馨「もちろん、覚悟できてるんだよな?」

伽奈「あ、でも、その……」

馨「……」

伽奈「うう……そんな目で見つめないでよ」

馨「ふふ。冗談だよ、冗談。それより、伽奈、腹減ってないか? なにか食いに行こうぜ」

伽奈「え? で、でもご飯なら母さんが作った煮物を持ってきてるから……」

馨「それは後で食うよ。それより、どこか素敵な店で、一緒に食おうぜ」

伽奈「……で、でも、あんたお金は?」

馨「途中で手に入れる」

伽奈「え?」

場面転換。

馨と伽奈が歩いている。そして立ち止まる。

馨「よお、やっぱりこの時間はここにたむろってるな」

剛史「ああ? なんだ、馨? 小遣いでもくれるのか?」

馨「逆だ。今まで取ってった分、返してもらうぜ」

剛史「……お、お前、本当に馨か? いつもと雰囲気、違うくねえか?」

馨「これが本当の俺だよ。それより、今まで俺から奪っていた分の金、返せよ。10万くらいはあるだろ」

剛史「ああ!? 舐めてんのか、てめえ! 10万分、殴ってやるから、それでチャラだ。おらっ!」

馨「……うわ、夢でもちょっと怖い」

シュッと拳が空を切る音。

剛史「避けただと?」

馨「……大丈夫、大丈夫。これは夢だ。集中集中。このくらいのスピード、格ゲーの時なら余裕で対処してるだろ。そう、僕は夢の中では最強。できるはずだ」

剛史「なに、ぶつぶつ言ってんだよ! 今度こそ、くらえ!」

馨「よし、華麗にカウンターだ!」

コンという軽い音。

馨「あれ? 思い切り充てるつもりだったのに、カスっただけ? あれかな? 夢の中でも殴るイメージで出来てないから?」

剛史「や、やるじゃねえか……けど……あれ? うわ、膝ががくがくする……」

馨「ああ。顎にカスったから、頭が揺れて脳震盪状態になったのかな?」

剛史「うあ! なんだよ、これ? 視界がぐにゃぐにゃだ」

馨「さて、剛史。まだやるか?」

剛史「ひいいい! 勘弁してください! さ、財布ならあげますから」

馨「ん。さて、伽奈。金は調達したぜ。美味いもんでも食いに行こうぜ」

伽奈「う、うん」

馨「覚悟しておけよ。今日は忘れられない夜にしてやる」

伽奈「は、はい……」

場面転換。

学校のチャイム。

馨「ふわー。いやー。昨日はいい夢を見たなぁ。ちょっと疲れるけど、今日も試してみようかな」

伽奈「ね、ねえ。馨。いや、馨様。お弁当作ってきたの、一緒に食べましょ」

馨「……へ? 馨様?」

ドスドスと剛史がやってくる。

剛史「おい! 馨!」

馨「ひっ! 剛史くん」

剛史「あ、いえ、馨さん。昼飯、ありますか? ないなら、俺、パシって来ますよ! パンでいいっすか?」

馨「え? え? え?」

伽奈「ちょっと! 馨様は私のお弁当を食べるのよ!」

剛史「ああ? 俺がパシッてくるに決まってんだろ!」

馨「……あれ? 夢が続いている?」

終わり。

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