■概要
人数:4人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、シリアス
■キャスト
セシル
カイト
その他
■台本
海の波の音。
カイト「セシル。この先、どんなことがあっても一緒にいる。例え、どんな障害が二人を分かつとも、必ず僕は戻ってくる。約束だ」
セシル(N)「幼馴染だったカイト。何かあることに、今の台詞を口にしていた。小さい頃はよくわからなくて、ただ頷いていただけだったけど、今ならあれはプロボーズだったと気づく。どうして、私はあのとき、その気持ちだけで嬉しいと言えなかったんだろう。生きてさえいてくれればいい。例え、私の元に帰って来なかったとしても」
ラジオの音。
アナウンサー「孤島の奥深くで、遭難者らしき人が発見されました。近く、調査団を派遣すると発表されました。次のニュースです。西国は我が軍の捕虜となった兵士を正式に西国の国民として取り込むと発表がありました。これは、捕虜が軍事的な情報を知っている可能性が多く、それらの人員は返すことはできないとしています。ただ、捕虜だった兵に関しては、手厚い保護を約束され……」
場面転換。
海の波の音。
セシル「……」
マーカス「セシルさん」
セシル「マーカスさん、そんなに気を使わなくていいですよ」
マーカス「カイトさんは激戦の地で、私を助けてくれました。カイトさんのおかげで私は生き延びれたと言っていいです」
セシル「……」
マーカス「私は負傷して、病院に送られました。その後もカイトさんは前線で戦い続けたそうです。ただ、軍からは戦死の確認はされていません」
セシル「……カイトは生きている」
マーカス「はい。必ず、生きているはずです。ですが、その……」
セシル「帰って来ないということは、捕虜になっている、ということですね」
マーカス「はい。その可能性が高いです」
セシル「今日のニュースを聞きました」
マーカス「……政府は捕虜の返還の交渉は終えるとのことです」
セシル「……カイトはもう、戻って来ないってことですよね?」
マーカス「……」
セシル「いいんです。生きてさえいてくれれば」
マーカス「セシルさん……。まだ、待つつもりですか? もう、5年です」
セシル「……」
マーカス「セシルさん、僕はこの5年間、ずっとセシルさんを見てきました。……状況から考えて、カイトさんは戻って来るのは……」
セシル「お願いです。それ以上は言わないでください」
マーカス「……」
波の音が響く。
セシル(N)「カイトと最後に会ってから、もう8年以上が経つ。……ねえ、カイト。私ね、待つことは辛くないよ。聞いてるって信じてるから。でもね、もう一度だけ……会いたいな」
場面転換。
波の音が響く。
カイト「……セシル」
セシル「え? カイト……?」
カイト「ごめん。お待たせ」
セシル「どう……して? 捕虜になったんじゃ」
カイト「捕まる前に海に逃げたんだ。それで……孤島に辿り着いて……そこで救助を待ってたんだ」
セシル「……捕虜になった方が、楽だったんじゃない?」
カイト「でも、捕虜になったら約束、守れなくなるだろ」
セシル「……でも、私がカイトとの約束、守ってないかもしれなかったんじゃない?」
カイト「あー、そっか。そういうこともあり得るか。……でも、セシルは覚えててくれてる、待っててくれてるって信じてたから」
セシル「……もう、馬鹿」
セシル(N)「カイトは約束を守ってくれた。きっとこれからも、約束が破られることはないだろう……」
終わり。