【フリー台本】誤差
- 2022.06.17
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
太陽(たいよう)
偉月(いつき)
紬(つむぎ)
アナウンサー×2
■台本
太陽(N)「俺と偉月は一卵性双生児。同じ屋根の下、同じ物を食べ、同じ教育を受け、同じように育ってきた。……なのに、どうしてこうなってしまったのだろうか」
場面転換。
キンとバットで球を打つ音。
そして歓声が上がる。
場面転換。
太陽、偉月、紬が並んで歩いている。
紬「すごい、すごい! 2連続ホームランだよ! 太陽なら甲子園行けるんじゃない?」
太陽「たまたまだよ、たまたま」
偉月「……」
太陽「どうした、偉月」
偉月「いや、どうして双子なのに、こんなに違うのかなって。兄貴は2打席連続ホームランで、俺は3打席三振……」
紬「何言ってるのよ。偉月だって、この前の試合、2ヒットだったじゃん。今日は調子が悪かっただけだよ」
太陽「そうそう。あんまり気に病むなって」
偉月「……」
場面転換。
ブン、ブン、と太陽と偉月がバットを振っている。
太陽「ふう。よし、今日のノルマ終わり、と」
ブン、ブンとバットを振り続ける偉月。
太陽「偉月、家に入らないのか?」
偉月「俺はもう少し、振ってく」
太陽「……そうか。無理するなよ」
場面転換。
廊下を歩く太陽。
太陽「ふわー。ねみぃ……」
紬「ちょっと、太陽! 何してんのよ。もうすぐ練習始まるよ」
太陽「すまん。今日は、体調不良で休むって監督に言っておいてくれ」
紬「あんたねー。この前もそんなこと言って、サボってたじゃん」
太陽「ホントに体調悪いんだって。それに、一か月に一回くらい練習休んだっていいだろ。骨休みだよ、骨休み」
紬「もう! 偉月は毎日、遅くまで自主練してるのに」
太陽「明日は俺もやるよ」
紬「約束だからね」
太陽「はいはい」
場面転換。
偉月「おかわり……。うっぷ」
太陽「おいおい、無理して食う事ねーだろ」
偉月「いや、もう少し筋肉つけたくてさ」
太陽「茶碗一杯でそこまで変わるかぁ?」
偉月「はは。どうだろうね」
太陽「変に真面目だよな、偉月は」
場面転換。
テレビの音。
太陽「ふわー。そろそろ寝るかぁ……」
そのとき、ガチャリとドアが開き、偉月が入って来る。
太陽「あれ? 偉月、まだ起きてたのか?」
偉月「ああ、うん。ちょっと勉強しようと思って」
太陽「おいおい。大丈夫か? 明日、朝練だぞ」
偉月「うん。だから、1時間だけ」
太陽「ふーん。1時間くらいじゃ、全然、勉強にならないだろ」
偉月「はは。そうかもね。気分だよ、気分」
太陽「あっそ。ま、俺は寝るわ。明日は寝坊すんじゃねーぞ」
偉月「兄貴こそね」
場面転換。
太陽、偉月、紬が歩いている。
紬「偉月、4番、おめでとう」
太陽「あー、ついにお前に4番、取られたか」
偉月「ありがとう。けど、俺と兄貴、ほとんど差はないって監督が言ってたよ。たまたまだよ、たまたま」
太陽「ま、次は4番、奪い返してやるよ」
偉月「取られないように頑張るよ」
場面転換。
歩いている太陽。
そこに紬がやってくる。
紬「ちょっと、太陽! 辞めるってどういうことよ!」
太陽「ベンチにも入れねーんじゃ、続ける意味ねーだろ」
紬「そんなことないよ。もう少し頑張れば、またレギュラー入りできるって」
太陽「いいよ、もう。野球は偉月に任せた。俺は勉強、頑張るさ」
紬「もう……」
場面転換。
ドサッとベッドに倒れ込む音。
太陽「あー、くそ。全然集中できねー。……気晴らしにゲームでもするか」
場面転換。
ガチャリとドアが開く音。
紬「偉月、用意できてる?」
偉月「ああ。じゃあ、兄貴、合宿行って来るね」
太陽「おー、頑張ってこいよ。で、ちゃんと甲子園行けよ」
偉月「任せておいて」
紬「……ねえ、太陽。あんた、ちょっと太った?」
太陽「なっ! そ、そんなことねーよ……」
紬「野球辞めたからって、少しは運動しないとダメだよ」
太陽「わかってるって」
偉月「そろそろ出ないと」
紬「やばっ! 早く行こ」
二人が慌ただしく出ていく。
太陽「……さてと。俺は、補習に行かないとな―……」
場面転換。
テレビの音。キンとバッドで球を打つ音。
沸き上がる歓声。
アナウンサー「打ったー! 入るか! 入るか! ……入ったー! ホームラン! まさに怪物! ルーキー川井戸偉月、3連続ホームラン!」
太陽「よし! これで、新人王は確定だろうな」
ピッとテレビを消す音。
太陽「さてと。俺は勉強、勉強。さすがに2浪はヤバいからな……」
場面転換。
テレビの音。
アナウンサー「――選手が、メジャーに挑戦ということで、どうでしょうか? 通用しますかね?」
ガチャリとドアが開く音。
紬「お義母さーん、手続きの方だけど……」
太陽「おう、いらっしゃい」
紬「あ、太陽。お義母さんは?」
太陽「母さんなら、さっき出かけたぞ」
紬「そっか。じゃあ、出直そうかな」
太陽「おめでとう」
紬「え?」
太陽「メジャー。頑張れって、偉月に言っておいてくれ」
紬「ありがとう。太陽も就職活動、頑張ってね」
太陽「ああ。すげー会社に入ってやるよ」
紬「もう、長年、自宅警備員やってるのに何言ってるのよ。とにかく、まずは働くこと。いいわね?」
太陽「……わかったよ」
紬「ふふ。それじゃね、太陽お兄ちゃん」
太陽「おい、やめろ」
紬「あはは」
紬が出ていく。
太陽「……はあー」
太陽(N)「「俺と偉月は一卵性双生児。同じ屋根の下、同じ物を食べ、同じ教育を受け、同じように育ってきた。……なのに、どうしてこうなってしまったのだろうか。一体、どこであいつとの差が出来てしまったのだろうか……」
終わり。
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