【フリー台本】魔法の指先

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■概要
人数:3人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
ひまり
父親
母親

■台本

ペラペラとページをめくる音。

ひまり「はあ……。いいなぁ……」

ガチャリとドアが開く音。

父親「あれ? ひまり、まだ起きてたのか? もう寝ないと、明日の幼稚園、寝坊しちゃうぞ」

ひまり「うん……。これ読んだら寝る」

父親「何読んでるんだ?」

ひまり「シンデレラ」

父親「それ、3年以上前に買ったやつじゃないのか? 随分とボロボロだな。新しいの買ってやるぞ」

ひまり「それなら、シンデレラ買ってほしい」

父親「なんだ、またシンデレラか? 違うお話の方がいいだろ」

ひまり「ううん。シンデレラがいい」

父親「そっか。でも、なんでそんなにシンデレラが好きなんだ?」

ひまり「魔法で綺麗なお姫様になるから」

父親「ひまりはお姫様になりたいのか?」

ひまり「なりたい!」

父親「パパから見たら、今でも十分お姫様なんだけどなぁ」

ひまり「魔法で、ピカピカ―って、お姫様になるの。魔法使いのおばあちゃんに会いたいなぁ」

父親「魔法使いのおばあちゃんか……。まあ、パパも魔法を使えるんだけどな」

ひまり「ホント?」

父親「ああ。指先一つで、ちょちょいのちょいだ!」

ひまり「すごーい! ねえねえ、パパはどんな魔法を使えるの?」

父親「そうだなぁ。敵をいっぱいやっつける魔法をいっぱい持ってるぞ」

ひまり「他には?」

父親「仲間の傷を治すこともできるぞ」

ひまり「もっと、シンデレラの魔法使いのおばあちゃんみたいな魔法がいい」

父親「んー。そうだなぁ。空を飛ぶなんてこともできるぞ。ほら、シンデレラで、カボチャの馬車で空を飛ぶだろ? でも、パパの魔法はカボチャの馬車を使わないで飛ぶことができるんだぞ」

ひまり「すごーい!」

父親「はははは。そうだろ、そうだろ」

ひまり「ねえねえ。お着換えしたりはできないの?」

父親「お着換え?」

ひまり「そう。ドレスに着替えるの」

父親「ドレス? ドレスか……。うーん……。あっ! あるある! すごい苦労してゲットしたのがあるぞ」

ひまり「ホント!?」

父親「ああ。見てみるか?」

ひまり「うん! 見る見る!」

父親がポケットからスマホを出して、操作する。

ひまり「……それ、スマホ?」

父親「そうそう。ちょっと待ってろよ。……よし、起動した」

ひまり「……ん?」

父親「えーっと、ここのスキンの切り替えは……あ、あったあった。ひまり、見てろよ」

ひまり「うん」

父親「普通の女子を、このボタンを押すと……」

ピッという音。

ひまり「あ、ドレス姿になった!」

父親「どうだ? パパは凄いだろ? 指先一つで、色々な魔法を使うことができるんだ」

ひまり「凄―い! 私もお着換えしたい!」

父親「そっかそっか。じゃあ、新しくアカウント作ろうか」

ひまり「作ったら、私もドレス、着れる?」

父親「ああ、着れるぞ」

ひまり「やったー! パパ、格好いい!」

父親「そうだろそうだろ! パパは指先一つでなんでもできる、最強の魔法使いなんだ!」

ガチャリとドアが開く音。

母親「あら、ひまり。まだ起きてたの……って、あなた。そのソシャゲ……消したって言ってたわよね?」

父親「いや、これは……その……」

母親「消しなさい!」

父親「……はい」

ひまり「パパ……」

父親「ごめんな、ひまり。パパは最強の魔法使いだけど、ママには勝てなかったよ」

ひまり「……パパ、カッコ悪い」

終わり。

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