【声劇台本】明かりの無い部屋の中で

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
淳一(じゅんいち)
亮平(りょうへい)
その他

■台本

二人が歩く音。

亮平「なあ、淳一、知ってるか? あそこのマンションの話」

淳一「あそこのマンション? ……別に普通だけど、なんかあるの?」

亮平「あのマンション……出るんだってよ」

淳一「……いや、亮ちゃん、また適当なこと言ってない? そりゃ、古そうだけど、普通のマンションだよ。出るわけないって」

亮平「いやいや、本当だって。あそこのマンションの一階の、一番端っこ。やべーんだってさ」

淳一「うっそだぁ」

亮平「なら、確かめに行くか?」

淳一「え?」

亮平「なんだよ、お前、怖いのか?」

淳一「べ、別に怖くないけど」

亮平「じゃあ、今日の夜、家、抜け出せるか?」

淳一「ねえ、亮ちゃん。肝試しって、普通、夏にやるものじゃない?」

亮平「なんだよ、やっぱり怖いんじゃねーか」

淳一「だから、怖くないって!」

亮平「じゃあ、今日の夜10時に、あのマンション前の公園に集合な」

淳一「僕は全然平気だけど、亮ちゃんの家は厳しいから無理なんじゃない?」

亮平「もういいよ。怖いなら、来なくて。俺一人で行くから」

淳一「だから、怖くないって、言ってるでしょ!」

場面転換。

淳一が歩いて来る。

亮平「よお、淳一。ちゃんと来たな」

淳一「当たり前でしょ。じゃ、じゃあ、寒いし、早く行こうか」

亮平「なんだよ、足震えてるぞ。大丈夫か?」

淳一「これは怖いんじゃなくて、寒くて震えてるの!」

場面転換。

亮平と淳一が歩いてい来る。

亮平「よし、着いたな」

淳一「一番端っこって言ってたよね?」

亮平「ああ。あっち」

淳一「……一番端っこだけ、電気ついてないね」

亮平「ああ。もし怖いならここで……」

淳一「さ、早く行くよ!」

歩き出す淳一。

亮平「無理しちゃって……」

場面転換。

二人は小声でしゃべる。

淳一「ね、ねえ、亮ちゃん……」

亮平「なんだよ?」

淳一「この部屋。電気がついてないだけじゃなくて、カーテンもしてないみたいだよ」

亮平「いや、カーテンしてないんじゃなくて、上の方で千切れてるんだよ、ほら」

淳一「あ、ホントだ」

亮平「うわあ、汚い部屋だな」

淳一「いかにも、廃屋って感じだね」

亮平「こりゃ、出るな」

淳一「……よし、中も見たし、帰ろうよ」

亮平「せっかく、家を抜け出してきたんだぞ。もう少し調査を……」

ガタガタという音がする。

淳一「ひぃ!」

亮平「……っ!」

淳一「ね、ねえ、今の音、なんだろ?」

亮平「しっ! 耳をすませてみろ。ずっとカタカタいってる」

物が小さく震えている音。

淳一「ほ、ホントだ……。なにこれ、怖い」

亮平「きっと、地縛霊の仕業だぜ」

淳一「や、やめてよ……」

亮平「見ろ! あそこ、人影が!」

淳一「ひいっ!」

亮平「なーんて、冗談だよ、冗談」

淳一「ホント、やめてよ!」

亮平「いや、ごめんごめん。じゃあ、入ってみようぜ」

淳一「ええ!? 入るの? さすがにやめようよ」

亮平「せっかくここまで来たんだから、な?」

淳一「勝手に入ったら、マズイって」

亮平「じゃあ、許可を貰おうぜ」

淳一「許可?」

亮平「お邪魔しまーす。入りますよー。……な? これで大丈夫……」

男の声「ん?」

淳一「ぎゃあああああああ!」

亮平「でたーーーーーーーー!」

二人が一目散に逃げる音。

場面転換。

ドアが開く音と、淳一が家の中に入って来る音。

母親「淳一―! こんな時間に遊びに行くなんて、どういうつも……」

淳一「うわーーん! お母さん!」

母親「え? なに? どうしたの?」

場面転換。

母親「ああー。あのマンションに端のことか」

淳一「お母さん、知ってるの?」

母親「そりゃ、有名だもん」

淳一「や、やっぱりあの部屋で首を吊ったとか?」

母親「首を? なんの話?」

淳一「幽霊」

母親「……ぷっ! あはははははは」

淳一「え? なになに? どうしたの?」

母親「あそこに住んでる人、亡くなってないわよ」

淳一「ええ? でも、部屋に明かりもついてなかったよ! 住んでるなら、明かりとか付けるでしょ!」

母親「ああ、電気止められてるのよ」

淳一「じゃあ、カタカタと音がしてたのは?」

母親「寒くて震えてたんじゃないの?」

淳一「なーんだ。ビビッて損した」

母親「まあ、階段話なんてそんなもんよ」

淳一「明日、亮ちゃんを弄ってやろうっと」

場面転換。

教室内が騒がしい。

男の子1「すげー!」

亮平「だろ? 本物見えたってことは俺達霊感あるってことだ」

男の子2「いいなぁ。すごいなぁ」

ガラガラと教室のドアが開く。

淳一「おはよー……って、なに? みんな、亮ちゃんの周りに集まって」

亮平「昨日の幽霊の話してたんだよ! 二人で果敢にも幽霊と渡り合ったってさ!」

男の子1「やっぱ、亮ちゃんはすげーな!」

男の子2「ホント、違うよな」

亮平「へへへ。淳一だって、すごかったんだぜ。な?」

淳一「あー、いや……う、うん。そうだね」

男の子3「ねえ、もっと詳しく聞かせてよ!」

亮平「いいぜ。それでな……」

淳一がつぶやくように言う。

淳一「……今更、ただの貧乏な人だったなんて言えないな」

終わり。

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