横向く記念写真

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■概要
人数:2人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
美沙(みさ)
沙苗(さなえ)

■台本

美沙「ねえねえ、お母さん」
沙苗「なに?」
美沙「どうして、お父さんと結婚したの?」
沙苗「そりゃ、もちろん、好きだからよ」
美沙「どういうところが?」
沙苗「うーん。たくさんあるけど……なんていうのかな。なんか、放っておけないところがあるのよね」
美沙「……ふーん」
沙苗「ふふ。ちょっと、難しかったかもね」
美沙「お母さんは、いつ、お父さんを好きになったの?」
沙苗「中学生のときよ。……あ、そうだ。久しぶりだから、見ながら話そっか」

場面転換。
ペラリとページをめくる音。

美沙「写真だー」
沙苗「お父さんとお母さんが中学生のときのだよ」
美沙「あははは。なんか、お父さんもお母さんも違う―」
沙苗「そうね。お父さんもお母さんも、凄く若いね」
美沙「ねえねえ、お母さん。写真、知らない人もいっぱい写ってるよ」
沙苗「あー、それはね。お母さん達が中学生の頃はスマホなんてなかったの。だから、学校行事があったら、写真屋さんが写真を撮りに来てくれたのよ」
美沙「学校行事?」
沙苗「そう。運動会とか、文化祭とか、学校のお祭りみたいなこと」
美沙「へー。いいなあ。私もお祭り行きたい」
沙苗「もう少し大きくなったらね。……で、その写真屋さんがみんなの写真を撮ってくれて、気に入った写真があれば、買うって感じだったのよ」
美沙「写真を買うの?」
沙苗「そうよ。今は、スマホがあるから、すぐに写真が撮れるから便利なんだけど、あの頃は、自分で撮れなかったような写真を買えたから、あの時代は、あの時代でよかったのよ」
美沙「……」
沙苗「よく、友達同士で、どの写真を買うかって、盛り上がったわね。……懐かしいなぁ」

ペラリとアルバムのページをめくる音。

美沙「ねえ、お母さん。お父さん、いっつも横向いてるー」
沙苗「ふふ。そうなの。お父さん、集合写真になると、いつも横向いてるの。変だよね」
美沙「恥ずかしいのかな?」
沙苗「あはは。そうかも。あの頃、お母さんも友達とよく、話してたんだよね。どうして、横向いてるんだろって」
美沙「どうしてなの?」
沙苗「結婚してから、一回、聞いてみたのよ。お父さんに。だけど、別にって言って、教えてくれないのよね」
美沙「ふーん……」

ペラペラとアルバムのページをめくる音。

美沙「あ、お母さんだ!」
沙苗「え?」
美沙「お母さんいる」
沙苗「そりゃ、いるわよ。お父さんと同じクラスだったんだから」
美沙「違うよ」
沙苗「何が?」
美沙「お父さんがこっち向いてるとき、お母さんもこっちにいるよ」
沙苗「……え?」
美沙「ほら、こっちも。お父さんがこっち見てるところに、お母さんがいる。お母さんがあっちにいるときは、お父さんもあっち見てる」
沙苗「……」
美沙「ね?」
沙苗「……もう、言ってくれればいいのに」

遠くからガチャリとドアが開く音がする。

美沙「あ、お父さん、帰ってきた!」
沙苗「よし、じゃあ、一緒に、お帰りなさい言いに行こっか」
美沙「うん!」

バタバタと美沙と沙苗が玄関の方へ歩いて行く。

美沙「お父さん、お帰りなさい!」
沙苗「お帰りなさい、あなた」

終わり。

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