縁切りの神社
- 2022.10.18
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ホラー
■キャスト
京太(きょうた)
真悠子(まゆこ)
隆志(たかし)
■台本
京太(N)「俺には可愛い彼女がいる。正直に言って、結婚も考えてる。そして、彼女も同じように思ってくれているはず」
京太と真悠子が並んで歩いている。
真悠子「あ、京太くん。神社だよ。お参りしてこ!」
京太(N)「真悠子はゲンを担ぐのが好きだ。こういう神社を見れば、すぐにお参りしようと言って来る。朝も、テレビの占いを必ずチェックしているらしい」
京太「けど、ここの神社って、何を祭ってるんだ? 変な神様とかだと微妙じゃないか?」
真悠子「いーから、いーから。こういうのは、とにかくお願いすればいいんだよ!」
京太「はあ……。わかったよ」
二人が神社の方へ歩いて行く。
立ち止まって、お賽銭を投げて、手を叩いてお参りする。
京太(N)「……真悠子と、ずっと一緒にいられますように」
真悠子「……」
京太「さ、行くか」
真悠子「うん」
二人が歩き出す。
京太「真悠子はなんてお願いしたんだ?」
真悠子「えー、恥ずかしいよ」
京太「いいじゃん、教えてくれよ」
真悠子「えーっとね、京太くんとお願いしますって」
京太「あ、俺と同じだ」
真悠子「え? ホント!? 嬉しいなぁ」
京太「へへへ」
場面転換。
大学内。
隆志「よお、京太。飯食いに行かね?」
京太「おお、いいよ。どこ行く?」
隆志「駅前にラーメン屋が出来たんだって。そこ行ってみね?」
京太「いいねー。久し振りにラーメン食いたくなってきた」
そこに真悠子がやってくる。
真悠子「あ、京太くん。今日はもう、講義終わりだよね? 一緒に帰らない?」
京太「あー、ごめん。これから隆志とラーメン食いに行くんだ」
真悠子「……なにそれ?」
京太「え?」
真悠子「私より、ラーメン食べる方が大事なの?」
京太「いや、別にそういうわけじゃ……」
真悠子「じゃあ、一緒に帰ろ」
京太「……」
隆志「(小声で)……真悠子ちゃん、こんな性格だっけ?」
京太「(小声で)今日は機嫌が悪いのかも」
隆志「俺のことは気にするなよ。一人で行くわ。じゃあな」
隆志が歩き去って行く。
京太「……」
真悠子「さ、帰ろ」
京太「う、うん……」
場面転換。
京太と真悠子が歩いている。
真悠子「……あ、今日、お母さんに早く帰って来いって言われてるんだった」
京太「え?」
真悠子「ごめん、帰るね」
京太「……わ、わかった」
真悠子「じゃあね」
真悠子が走って行ってしまう。
京太「……それなら、隆史とラーメン食いたかったなぁ」
場面転換。
京太の部屋。
浴室から出てくる京太。
京太「ふう、すっきりした」
すると携帯が鳴っていることに気づく。
京太「あれ? 真悠子からだ」
再生ボタンを押す。
京太「もしもし、真悠子? どうしたの?」
真悠子の声「……携帯、出るの遅くない?」
京太「え? あー、いや、風呂入ってたんだよ」
真悠子の声「ホント?」
京太「いや、嘘を言うわけないだろ」
真悠子の声「今度は事前に言っといてくれない?」
京太「……そんなこと、わざわざ言わなくたっていいだろ」
真悠子の声「……私、不安なの。京太くんのこと、好きだから。連絡つかなかったら、なんかあったんじゃないかって……」
京太「大丈夫だって」
真悠子の声「……浮気、してないよね?」
京太「するわけないだろ」
真悠子の声「……」
ブツっと携帯が切れる。
京太「あ、切れた。……なんなんだ?」
場面転換。
部屋で寝ている京太。
京太「(寝息)……」
いきなりインターフォンが鳴る。
京太「うわっ! な、なんだ!? ……深夜の2時だぞ。……変質者か?」
ゆっくりとドアに向かう、京太。
何度もインターフォンが鳴る。
京太「だ、誰だ?」
真悠子「私……」
京太「え?」
慌ててドアを開ける。
京太「こんな時間にどうしたんだ?」
真悠子「……なんか、急に顔が見たくなっちゃって」
京太「……そ、そうなんだ」
真悠子「……迷惑だった?」
京太「そ、そんなことないよ。……とにかく、中に入って。紅茶でも淹れるよ」
真悠子「ううん。帰る」
京太「へ?」
真悠子「顔を見たら安心したから、もう帰るね」
京太「いや、こんな時間に危ないって」
真悠子「大丈夫。タクシー、捕まえてあるから」
京太「……」
京太(N)「それからは真悠子の変な行動と束縛が強くなっていった」
場面転換。
大学内。
スマホを操作している京太。
京太「……今から帰るよ、と」
隆志「京太、お前、最近、ずーっとメール打ってるけど、誰に打ってるんだ?」
京太「真悠子だよ。最近、行動するたびに報告しろって言われて……」
隆志「なんだよそれ。怖いな」
京太「だよな……」
隆志「別れた方がいいんじゃないか? ちょっと、ストーカーっぽいぞ」
京太「……」
京太(N)「隆史の言う通り、俺は耐えられなくなって、真悠子と別れた。正直、真悠子に対しての愛情は消え去っていた」
場面転換。
道を歩いている京太が、ピタリと足を止める。
京太「あ、この神社……。真悠子とお参りしたところだ」
そこに隆志が走って来る。
隆志「よお、京太。どうした、しょぼくれた顔して。やっぱり、真悠子ちゃんと別れたこと、後悔してるのか?」
京太「……いや、そんなことないよ」
隆志「ほら、早く行こうぜ、講義遅刻するぜ」
京太「ああ」
隆志「あれ?」
京太「どうした?」
隆志「あそこ……真悠子ちゃんだ。お参りしてる」
京太「ホントだ」
隆志「あ、ごめん」
京太「謝るなよ。行こうぜ」
隆志「ああ」
歩き出す二人。
隆志「あ、そういえば……」
京太「ん?」
隆志「あそこって縁切りの神社で有名なところだよな」
京太「え? そうなの?」
隆志「ああ」
京太「ふーん……」
場面転換。
真悠子「……ありがとうございました」
終わり。