悪魔の契約
- 2022.11.23
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:2人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、シリアス
■キャスト
ファリス
ジェイク
■台本
ベッドに横たわるジェイク。
それを眺めるように見下ろす、悪魔のファリス。
ファリス「ジェイク、生きてる?」
ジェイク「……残念ながらね」
ファリス「精々、あと2日ってところかしら?」
ジェイク「まだ……2日も残っているのか」
ファリス「あら。伝説のエクソシストと呼ばれたあなたらしくないわね。最後まで諦めないのが信条だったのに」
ジェイク「ははは……。さすがに寿命には勝てないよ。僕はもう90だからね」
ファリス「……まだ90歳じゃない」
ジェイク「悪魔と比べないでほしいな。人間で90は、十分長生きだよ」
ファリス「あら、そう」
ジェイク「……ファリス。今まで本当にありがとう」
ファリス「別にあなたのためじゃないわ。契約に縛られただけよ」
ジェイク「……それでも、礼を言いたい」
ファリス「……勝手にすれば」
ジェイク「君には随分と酷いことをさせた」
ファリス「……」
ジェイク「多くの悪魔……。君の同士を手にかけさせた」
ファリス「人間と比べないでほしいわ。悪魔にとって、仲間意識なんて皆無よ」
ジェイク「……そうか」
ファリス「悪魔にとって、大事なのは自分自身の快楽だけ」
ジェイク「……じゃあ、僕は君の大事なものを奪い続けたわけか」
ファリス「……」
ジェイク「君の自由を90年も奪ってしまった」
ファリス「仕方ないわ。そういう契約だったんだもの。それに、言ったでしょ。悪魔にとって90年は大した長さじゃないのよ」
ジェイク「……僕は幸せだった」
ファリス「……」
ジェイク「君がいたから、この90年は孤独じゃなかった」
ファリス「そうかしら? 私がいなかったら、あなたは家族を持っていたかもしれないわよ?」
ジェイク「どうだろうね。仮にそういうふうになる運命があったとしても、僕はファリスと共にいた90年の方を選んで正解だったと思うよ」
ファリス「私は迷惑だったわ。あなたのせいで、この90年は苦労のしっぱなしだったもの」
ジェイク「……すまない。君には僕の我儘に付き合わせてばかりだった」
ファリス「確かに迷惑だったけど、楽しかったわ」
ジェイク「そう言ってもらえると嬉しいよ」
ファリス「あなたが死ねば契約が切れ、私は自由になれる」
ジェイク「僕の魂は自由に使ってくれて構わないからね。まあ、こんな魂、君にとってはなんの価値もないだろうけど」
ファリス「もちろん、自由に使わせてもらうわ。そういう契約だもの」
ジェイク「君があのとき、僕を拾わなければ……いや、父さんとの契約を破棄してれば、こんなに長く縛られなくて済んだのにね」
ファリス「過ぎたことを言っても意味ないわよ」
ジェイク「……ファリス。本当にありがとう。君には感謝してもしきれない」
ファリス「契約なんだから、ジェイクが気にすることないって何度言わせるのよ。あなたの魂を自由にできる代わりに、あなたの命令に従う。ただ、それだけよ」
ジェイク「だからって、ここまで長く付き合う必要はなかったんじゃない? 君がやろうと思えば、いつでも僕を殺せたんじゃないの?」
ファリス「そうね。……確かにその通りだわ」
ジェイク「……もう、遅いかもしれないけど、いいよ。僕を殺して」
ファリス「……あなたには随分と苦労をさせられた。その言葉に甘えさせてもらおうかしら」
ジェイク「……僕の魂は君の物だ。自由にしてくれていい」
ファリス「じゃあ、あなたの魂を無理やり引き抜くわよ」
ジェイク「……うっ!」
ファリスがゆっくりとジェイクの魂を引き抜く。
ファリス「さよなら、ジェイク……」
魂を掲げるファリス。
ファリス「……永久の闇の悪魔よ。この者の魂を転生させなさい!」
ジェイクの魂が光り輝き、そして、子供へと変化させる。
ジェイク「……あれ? ここは?」
ファリス「うふふふふ」
ジェイク「え? あ、あなたは?」
ファリス「私の名はファリス。悪魔よ」
ジェイク「……悪魔?」
ファリス「あなたは父親と一緒に、崖から落ちたの」
ジェイク「……全然、覚えてない」
ファリス「あなたの父親との契約で、父親の魂を使って、あなたの命を救った。記憶が無いのは死にかけたときのショックよ」
ジェイク「そうなんですか……」
ファリス「あなたの横にいるのが、あなたの父親よ」
ジェイク「……全然、記憶がありません」
ファリス「あなたの父親は、最後に私に頼みごとをしたわ。……あなたのことを頼むって」
ジェイク「僕のことを……?」
ファリス「どう? あなたの魂を私に捧げるというのなら、私はあなたの命令に従ってあげるわ」
ジェイク「……悪魔との契約」
ファリス「どう? 契約……する?」
ジェイク「……します」
終わり。