【声劇台本】推しの為なら

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■概要
人数:7人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
浩輔(こうすけ)
誠一(せいいち)
未羽(みう)
その他

■台本

ライブ会場。

アイドル達が歌っている。

未羽「みんなー! 今日は来てくれてありがとー!」

ワーッと歓声が上がる。

浩輔「うおーーー! 未羽ちゃーん!」

場面転換。

ファミレス。

浩輔「いやー。ライブ最高だったなぁ。未羽ちゃん、マジ天使」

誠一「はっはっは。浩輔殿は未羽ちゃん、一筋ですな」

浩輔「当然だろ。……けど、俺の愛はまだまだ足りない!」

誠一「と言うと?」

浩輔「この前の選挙。もう少しでセンターになれたのになぁ。俺が応援券をもっと買っていれば……」

誠一「はっはっは。まあまあ。浩輔殿だって、金銭的な限界がありますぞ。見たところ、今でもギリギリ。まさか、借金までするわけにはいきますまい」

浩輔「いや! 未羽ちゃんがセンターに行けるなら、やぶさかではない!」

誠一「むむむ。さすが浩輔殿。人生を賭けてますなぁ」

浩輔「当然さ。あの可愛さの為なら、どんな苦労だって喜んで背負うつもりだ」

誠一「ふむむ。未羽ちゃんは幸せ者ですなぁ。こんなに浩輔殿に愛してもらって」

浩輔「あははは。けど、まあ、未羽ちゃんからしたら、俺なんて単なる一ファンってだけだけどな」

誠一「……時に浩輔殿。もし……もしも、未羽ちゃんにお近づきになれると言ったら、どうですかな?」

浩輔「悪魔に魂を売る!」

誠一「ふむむ。浩輔殿の深い愛に感銘を受けましたぞ。では、耳よりの話を一つ」

浩輔「なんだ?」

誠一「実は……未羽ちゃん。コアなストーカーに悩まされているらしいですぞ」

浩輔「ストーカー?」

誠一「ええ。未羽ちゃんも、今や人気のナンバー2。ストーカーの1人や2人、当然、つくでしょうな」

浩輔「ふざけやがって! ファンの風上にも置けないな。大体、未羽ちゃんの嫌がるようなことをする時点で、ファンじゃねえ! 一方的な愛を押し付けるなんて、絶対に許せないな!」

誠一「そこで、浩輔殿がストーカーを成敗するんですぞ」

浩輔「……俺が?」

誠一「ええ。そうすれば、きっと、未海ちゃんは浩輔殿のことを、ただの一ファンではなく、頼れる男だと認識するはずですぞ」

浩輔「……わかった。かなり生活はキツくなるが、未羽ちゃんの為だ。ひと肌脱ごう」

場面転換。

夜道を歩く未羽とその後をつけている浩輔。

浩輔「……未羽ちゃん。こんな時間まで歌の練習してるなんて、さすがだよ。可愛いだけじゃなくて、努力もちゃんとする。アイドルの鏡だ」

未羽「……っ」

立ち止まりつつ、不安そうに歩く未羽。

浩輔「……未羽ちゃん、どうしたんだろ? 後ろを気にして……。あ、もしかして……」

場面転換。

男1「はあ、はあ、はあ……。未羽ちゃん! 今日も可愛いなぁ」

浩輔「おい!」

男1「うわあ! な、なんだ、貴様は!?」

浩輔「それはこっちの台詞だ。こんなところでなにやってんだ、てめえは?」

男1「なにって……。未羽ちゃんを見てるんだ」

浩輔「この変態野郎。お前がストーカーだな?」

男1「ちょ、ちょっと待ってくれよ。別に僕は未羽ちゃんに迷惑をかけてない! だって、見てるだけだから。見るくらいいいだろ!?」

浩輔「いや、アウトだろ。未羽ちゃんの後をつけまわしている時点で、ストーカーそのものだ」

男1「う、うるさーい! 僕はストーカーなんかじゃなーい!」

浩輔「ふん!」

男1「ぐぎゃ!」

浩輔に殴られて男1が倒れる。

浩輔「ふん。これに懲りたら、ストーカー行為を止めるんだな」

場面転換。

ガサガサとゴミを漁る音。

男2「ふふふふーん! 未羽ちゃん、ラブ、ラブ、ラーブ! ……ん?」

男2の手が止まる。

男2「こ、これは……未羽ちゃんの下着! うおおお! やったー! 未羽ちゃんのゴミを漁って、4カ月。ついに、俺はお宝を手に入れたぞー!」

浩輔「おい!」

男2「うひぃ! な、なんだ、貴様は!?」

浩輔「変態に名乗る名は無い。それより、もう二度と、こんなことはしないと誓って、その手に持っているものを置いて、消えろ」

男2「な、なんだと!? 俺がこの4ヶ月間どんな気持ちで頑張ってきたか、わかっているのか? 大体、未羽ちゃんはこの下着を捨てたんだ! いらなくなったものを俺が拾って、何が悪い!」

浩輔「ふん!」

男2「ごばはっ!」

浩輔が男2を殴る。

浩輔「ったく。節度を守れよ。自分の下着を変な男に拾われたら嫌に思うに決まってるだろ。それにゴミをまき散らしやがって」

浩輔がゴミを拾い集める。

浩輔「……あれ? これって……未羽ちゃんのスケジュール表だ。去年のだから、捨てたのか。……それにしても、文字まで可愛いなぁ、未羽ちゃんは」

場面転換。

夜道を歩く未羽とその後をつけている浩輔。

未羽「……はあ」

浩輔「未羽ちゃん。疲れてるな。まあ、そりゃそうか。あんな過密スケジュールをこなしながらも、ちゃんと歌とダンスの練習もかかさないからなぁ。ホント、未羽ちゃんは頑張り屋さんだよ。ちゃんと栄養とか採れてるのかなぁ? ……あ、そうだ!」

場面転換。

ドアノブに袋を引っ掛ける浩輔」

浩輔「これでよし。健康食品と精がつくものを片っ端から買って入れたからな。これで未羽ちゃんも元気を取り戻してくれるだろう。……あ、そうだ。メモも残しておこう」

紙にペンで文字を書く浩輔。

浩輔「いつも頑張ってて凄いね。きっとその努力は報われるはずだよ。ずっと応援してるからね。でも、体には気を付けてね。っと。ふふ。未羽ちゃん、喜んでくれるかな」

場面転換。

浩輔「おらあ!」

男3「ぶべべ!」

浩輔が男3を殴り飛ばす。

浩輔「ふう。こいつで最後かな。やれやれ。未羽ちゃんのストーカーを一掃するのに、1ヵ月もかかっちまった。けど、まあ、これで未羽ちゃんも安心して生活できるはずだ。これで、俺の役目も終わりかな……。いや、待て。油断すれば、また未羽ちゃんに変なストーカーがついちまう。引き続き、俺が未羽ちゃんを守って見せるぜ!」

警察「ちょっといいかな?」

浩輔「へ?」

警察「警察なんだけど……君、一体、何をしているのかな?」

浩輔「いや、なにをって……。未羽ちゃんを変態から守ってたんだ」

警察「……あ、来た来た」

未羽がやってくる。

浩輔「あ、未羽ちゃん!」

警察「どうかな? この人かい?」

未羽「きゃあ! こ、この人です! この一か月間、ずっと私を付け回してたんです」

浩輔「……へ?」

警察「君ねえ。こういう行為はストーカーっていうんだよ?」

浩輔「いやいやいやいや! 違うって! 逆だよ逆! 俺、ストーカーを追い払ってたんだよ!」

警察「はいはい。話は署で聞くからね」

ガチャンと手錠を掛けられる浩輔。

浩輔「いや、ホント、違うんだってーー!」

終わり。

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