天使の抱擁
- 2022.11.25
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代ファンタジー、コメディ
■キャスト
アリサ
ミル
ライラ
見習い
悪魔
■台本
暗い部屋の中。
悪魔「あ、ああ……」
スーッと悪魔が消えていく。
アリサ「ふう」
見習い「悪魔が消えた。すごい……あれが……」
ライラ「そう。伝説のエクソシスト、アリサの天使の抱擁よ」
場面転換。
大学のキャンパス内をフラフラと歩くアリサ。
アリサ「うう……。も、もうダメ……」
どさりとアリサが倒れる。
アリサ「……視界が真っ白になっていく」
ミルが駆け寄って来る。
ミル「おい、アリサ。こんなとこで、寝るなよ。迷惑だろ」
アリサ「……ミル?」
ミル「ほら、手を出せ。立てるか?」
アリサ「……ふふふふ」
ミル「アリサ?」
アリサ「獲物――!」
アリサがミルに襲い掛かる。
ミル「ぎゃああああ!」
場面転換。
大学内の食堂。
物凄い勢いでアリサが食べ物を食べている。
アリサ「美味しい! 生き返る―!」
ミル「……」
アリサ「なによ、その顔?」
ミル「言っとくけど、奢りじゃないからな。貸しだぞ、貸し」
アリサ「はいはい。そのうち返すわよ、そのうちね」
ミル「そんなこと言って、一度も返してもらった記憶がないぞ」
アリサ「そうね。私も返した記憶がないわ」
ミル「ホント、良い性格だよ」
アリサ「どうも」
ミル「褒めてねえ」
アリサ「知ってる」
ミル「……」
ガツガツと食べ物を食べるアリサ。
ミル「……ったく、これのどこが『天使』だよ」
アリサ「私にぴったりの二つ名よね」
ミル「どこが?」
アリサ「この可愛らしいところ」
ミル「悪魔の間違いだろ」
アリサ「あー、そうね。小悪魔って感じかな」
ミル「太々しさはサタン級だよ。……それより、お前、なんで、そんなに金ねーんだ?」
アリサ「なんでって言われても……なんでだろーね?」
ミル「この前も悪魔祓いしたんじゃねーの?」
アリサ「ふっふっふ。甘いわね。悪魔払いをしたからと言って、懐が温まるとは限らないのよ」
ミル「(呆れて)なんでだよ」
アリサ「報酬はお気持ちだからねー」
ミル「だからって、昼飯代くらいは貰えよ」
アリサ「まー、そうなんだけどさー」
ガツガツと食べ物を食べるアリサ。
ミル「……」
アリサ「長年、ずーっと悪魔に取り憑かれた娘さんを抱えて、心も金銭的にもボロボロの母親からお金を取れると思ってるの? そんな人から金をむしり取る方が、よっぽど悪魔だってーの!」
ミル「……けど、それでお前が食いっぱぐれたら意味ねーだろ……」
アリサ「いいのよ、私は」
ミル「なんでだよ?」
アリサ「ミルっていう財布があるから」
ミル「ふざけんな!」
アリサ「それより、そろそろ本題に入りなさいよ」
ミル「……」
アリサ「私にご飯を食べさせるために来たんじゃないんでしょ?」
ミル「当然だ」
懐から封筒を出す。
アリサ「中、見てもいい?」
ミル「ああ」
アリサ「……ふーん。これはポルターガイストってレベルじゃないわね」
ミル「……確実に上級悪魔だ」
アリサ「少しは歯ごたえがありそうかな」
ミル「かなりの強敵だ。油断はするなよ」
アリサ「平気平気。こんなの余裕よ、ヨユー」
ミル「おいっ!」
アリサ「これが彼女と話した最後の言葉だった……」
ミル「自分で死亡フラグを立てるな」
アリサ「ま、いつも通り祓ってきてあげるわよ」
ミル「……今回は2人ほど、エクソシストを付ける。こき使ってやれくれ」
アリサ「別にいいのに」
場面転換。
家の前。
見習い「お、お疲れ様です! アリサ・グ……」
アリサ「あー、そういう固い挨拶はいいから」
ライラ「久しぶり、アリサ」
アリサ「ライラじゃない! ……まさか、2人付けるって、ライラもだったの?」
ライラ「まあ、今回のは手ごわそうだからね」
アリサ「ライラがいるなら、楽ショーよ、楽ショー」
場面転換。
暗い部屋の中。
椅子に座っている女の子。
女の子「……」
アリサ「聞こえてる? 私、エクソシストなんだけど、痛い目に遭う前に、その子から出てってくれる?」
悪魔「生意気な小娘だ」
アリサ「はいはい。そんなベタベタな台詞はいいから。出てくの? 出てかないの?」
悪魔「我が出て行って、何の得がある?」
アリサ「私にぶちのめされない……とか?」
悪魔「くくくく。貴様が我を? 面白いことを言うな」
アリサ「あー、もう。なんで、悪魔っていつも遠回しな言い方しかできないのよ。格好いいと思ってんの?」
悪魔「なめるなよ、小娘」
床に爆発音が響き、床に穴が開く。
悪魔「次は当てるぞ」
見習い「あ、あの、先輩。私たちも応援に行った方が……」
ライラ「いや。この分だと、出番がなさそうね」
見習い「え?」
アリサ「当てるって言っても、その子の中からじゃ、力なんて出ないでしょ」
悪魔「今のままで十分、貴様を木っ端みじんに出来るさ」
爆発音が数回起こる。
アリサ「……次は当てるんじゃなかったの?」
悪魔「くそ、生意気な!」
また爆発音が起こる。
爆発をアリサが素早く避ける。
悪魔「くそ、当たらん! こうなったら……ぐあっ!」
アリサ「ようやく、その子から出て来たわね」
悪魔「ば、馬鹿な。人間が悪魔に触るなど……」
アリサ「じゃあ、逝っとこうか」
悪魔「くそ!」
バッとアリサが悪魔を抱きしめる。
悪魔「我を抱きしめるだと? ……なんのつもりだ?」
アリサ「……あなたの罪、私が許してあげる」
悪魔「そんなことで、我が改心するとでも?」
アリサ「……」
ギリギリギリという音が聞こえてくる。
見習い「え? なんの音ですか?」
悪魔「……お、おい。ちょっと、力を入れ過ぎだ……」
アリサ「……」
ギリギリギリという音が、バキバキバキという音に変化する。
悪魔「ぎゃああー! 折れてる! 背骨、折れてるって!」
アリサ「天使に抱かれて、逝っちゃいなさい」
バキンと背骨が折れる音。
悪魔「ぎゃああああああああ!」
アリサ「……」
悪魔「あ、ああ……」
スーッと悪魔が消えていく。
アリサ「ふう」
見習い「悪魔が消えた。すごい……あれが……」
ライラ「そう。伝説のエクソシスト、アリサの天使の抱擁よ」
アリサ「ね? 楽ショーだったでしょ?」
終わり。