僕のプライド

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■概要
人数:2人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
真治(しんじ)
涼子(りょうこ)

■台本

真治(N)「僕は幼稚園、小学、中学、そして、もちろん高校でも成績はトップを取ってきた。つまり、僕は人よりも上、頂点になってきた男だ。いつも、他の奴らを見下して生きてきた。……それなのに」

場面転換。

学校の廊下。

周りは人が集まり、ざわざわとしている。

涼子「おうおう、人にぶつかっておきながら、なんにもねーのか?」

真治「……き、君もよそ見をしていたではないか」

涼子「あたしは壁際で話してただけ。そこにあんたがぶつかってきた」

真治「……」

涼子「生徒会長様が本を読みながら歩いているのが悪いと思うんですがね―?」

真治「くっ!」

涼子「あれぇ? いつも歩きスマホをするなって注意してませんでしたっけー?」

真治「……っ!」

涼子「謝れよ」

真治「なっ! ぼ、僕に謝れ、だと?」

涼子「悪いことをしたら謝る。当然のことだろ? それともなにか? 生徒会長様はあたしが不良だからって、謝らなくてもいいって言うのか?」

真治「……くっ。わかった」

周りがさらにざわざわし始める。

真治「悪かった」

涼子「誠意がたりねえ」

真治「なんだと!?」

涼子「こういう場合は両手をついて、地面に頭をこすりつけるもんだろ?」

真治「貴様……。僕に土下座しろというのか?」

涼子「やりたくなきゃ、やらないでいいさ。けど、生徒会長様は悪いことをしても、人に謝りもしないってことだよな?」

真治「くそっ! この僕が……」

真治が地面に膝をつく。

涼子「くくく」

ガバッと土下座をする真治。

真治「申し訳ありませんでした!」

涼子「あははははは。ホントにしちゃったよ。あははははは」

笑いながら歩き去って行く涼子。

真治(N)「おのれ……。僕に行き恥をかかせたな。こんな公然の前で、僕に土下座など。この、体が燃えるような感覚。これが羞恥心というものか……。絶対に、絶対に許さないからな」

場面転換。

学校の屋上。

涼子がタバコのようなものを吸っている。

涼子「あー。ダリいなチクショウ」

真治「ふふふふふ。見たぞ」

涼子「あん?」

真治「喫煙は二十歳を過ぎないと、ダメなのだ!」

涼子「知ってるよ、んなこと」

真治「もちろん、学校の規則でも禁止だ」

涼子「だから?」

真治「教師に言って、貴様を停学……いや、退学にしてやる!」

涼子「ほー」

真治「僕に土下座なんてさせたことを後悔するがいい」

涼子「……」

真治「ふふふ。だが、僕も鬼ではない。貴様が土下座をするのなら、見なかったことにしてやらなくもない」

涼子「嫌だよ」

真治「じゃあ、退学になるんだな」

涼子「ならねーよ。だって、あたし、タバコ吸ってねーから」

真治「なんだと? 下手な言い逃れをするな」

涼子「証拠、ねーだろ?」

真治「……ふん。タバコはあの一本だけではあるまい。どこかにまだ、タバコを持っているはずだ!」

真治が涼子に詰め寄る。

涼子「ちょ、待て! お前、何して!」

真治「どこだ! どこに隠した!」

涼子「ちょ、マジであぶねえって……」

真治「うわああ!」

バランスを崩して、真治と涼子が倒れ込む。

そして、ムニュっと真治の手が涼子の胸を掴む形になる。

涼子「おまっ! 何してんだ!」

真治「……え? あ、いや、これは!」

慌てて離れるように立ち上がる真治。

涼子「どさくさに紛れて、胸を触りやがって」

真治「ち、ちがっ! これは事故だ! 故意ではない!」

涼子「土下座だな」

真治「な、なんだと!」

涼子「まさか、人の胸を触っておいて、シラを切るつもりじゃねーだろーな」

真治「ま、待て! そうだ! 喫煙のことは見逃そう。これで手打ちにする。どうだ?」

涼子「……」

ガサガサとポケットから小さな箱を出す。

涼子「これ、食ってたんだよ」

真治「……シガーチョコレート」

涼子「で、どうする? 生徒会長様が婦女暴行で退学するか?」

真治「ふ、婦女暴行など! これは事故だ!」

涼子「ま、いいけど。生徒会長様は職権利用して、女の胸を触ってるって言いふらすから」

真治「ま、待て! ……わかった」

真治が地面に膝をつく。

涼子「……」

ガバッと土下座をする真治。

真治「申し訳ありませんでした!」

涼子「ふん。これに懲りたら、もう、あたしに近づくんじゃねー」

スタスタと去っていく涼子。

真治(N)「お、おのれー! 一度ならず、二度までも! この、締め付けられるような胸の痛み、絶望するほどの屈辱感。絶対に、絶対に許さんからな!」

場面転換。

トイレで手を洗っている真治。

真治「くそ。どうやって仕返しをしてやろうか……む? あれ? ハンカチがないぞ」

ポケットを探す音。

真治「あ、そうだ。ストックが切れていて、帰りに買う予定だったな。にしても、濡れたままというのは気持ち悪いな」

ぽたぽたと雫を垂らしながら、廊下に出る真治。

真治「む? 廊下にハンカチが落ちている。……ふふ。これは僕の日ごろの行いによるものだな。落とし主よ、すまんが使わせてもらう。後で、きっちり選択して返すからな」

拾ったハンカチで手を拭く真治。

真治「……このハンカチ、妙な形だな」

そこに涼子が歩いて来る。

涼子「くそ。真帆の口車に乗って、紐パンなんか履くんじゃなかった。どこに落としたんだ?」

真治「む? また、貴様か!」

涼子「生徒会長……。あっ! おまっ! それ、なにやってんだ!」

真治「なにって、手を拭いてるのだが?」

涼子「ああああー。何で拭いてやがる!?」

真治「ああ、さっきそこで拾ってな。ちゃんとあとで洗濯して、持ち主に返す所存だ」

涼子「そりゃ、あたしのパンツだ!」

真治「……パン? うわわわわ! ち、違う! これはわざとではっ!」

涼子「お前な―」

真治「悪かった! 土下座して謝る!」

涼子「……はあ。いや、いいよ」

真治「なに?」

涼子「そんなもん落としたあたしが悪い。今回は、生徒会長は謝らなくていいよ」

紐パンを取り返して去って行こうとする涼子。

真治「待て!」

涼子「あん?」

真治「それでは僕の気がおさまらない。土下座させてもらう」

涼子「生徒会長も変なとこで意固地だな。まあ、やりたいなら、やれよ」

真治「では……」

真治が地面に膝をつく。

そして、ガバッと土下座をする真治。

真治「申し訳ありませんでした!」

涼子「……もういいよ。立てって」

真治「……一つ頼みがある」

涼子「なんだよ?」

真治「……ちょっとそのまま頭を踏んでみてくれないか?」

涼子「変態か!?」

真治(N)「……どうやら僕は、開けてはいけない扉を開けてしまったようだ」

終わり。

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