体育祭にて

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
伊代(いよ)
涼真(りょうま)
勇樹(ゆうき)

■台本

グラウンド。

勇樹が全力で走っている。

勇樹「うおおおおおおおおお!」

そんな様子を見ている伊代。

伊代「ちょっと、勇樹! 本番は明日なんだから、あんまりやり過ぎると明日、バテちゃうわよ!」

勇樹「うおおおおおお!」

伊代「はあ……。あのバカ。ホント、暑苦しいんだから」

そこに諒真がやってくる。

涼真「ふふふ。さすが、拙者のライバル。前日ギリギリまで特訓とは恐れ入った」

伊代「ちょっと、諒真も見てないで、止めてよ。勝負は明日でしょ?」

涼真「ふっ! ここは武士として負けてられないな」

伊代「へ?」

涼真「うおおおおお!」

涼真が走り出す。

伊代「あっ! 諒真まで走り出しちゃった」

涼真と勇樹が並んで走る。

勇樹「うおおおおおお!」

涼真「おおおおおおお!」

伊代「はあ……付き合いきれない。勝手にしなさい」

伊代が歩き去っていく。

場面転換。

体育祭で大賑わいのグラウンド。

涼真「ふふふ。伊代よ、今年こそは我がB組が優勝をいただくぞ」

伊代「……まだ一競技終わっただけでしょ。体育祭の競技、何個あると思ってるのよ」

涼真「ふむ。まあ、B組の優勝はいただくが、吾輩の目的は一つ、勇樹を完膚なきまでに叩きのめすことだ」

伊代「9勝9敗だっけ?」

涼真「今年で真の決着をつけてやる! ふははははは! ……って、そういえば、勇樹はどこ行ったのだ? さっきから姿が見えんが」

伊代「あ、言われてみれば」

そこにスタスタと歩く勇樹。

勇樹「はあ……」

伊代「あ、いた。おーい、勇樹」

勇樹「……伊代か」

伊代「どうしたの? いつも暑苦しいあんたが元気ないじゃない」

涼真「どうしたのだ? 吾輩との決着の時なのだぞ」

勇樹「終わりだ……」

伊代「何言ってるのよ……って、あれ? あんた、ハチマキは?」

勇樹「……」

伊代「まさか、忘れたの?」

勇樹「気合を入れて、洗ったんだよ。だけど……朝起きたら……」

伊代「無くなってたの?」

勇樹「……」

伊代「あー、昨日、風強かったもんね」

勇樹「終わりだ。もう……終わりだ」

伊代「何言ってるのよ。諒真と決着つけるんじゃなかったの?」

涼真「そうだぞ! 気合を入れ直さないか!」

勇樹「もう俺の負けでいい……」

伊代「ちょっと! あんたがそんなんじゃ、A組負けちゃうじゃない!」

勇樹「そう言われても……」

伊代「ハチマキが何よ! そんなの無くなって影響なんてないでしょ」

勇樹「ダメなんだ。ハチマキがないと気合が入らない。……いや、ハチマキの方が本体といっても過言じゃないんだ」

伊代「いや、それは過言でしょ」

涼真「代用はできんのか?」

伊代「代用……。そうよ、なにかで代用するわよ」

場面転換。

伊代「どう?」

勇樹「ダメだ」

涼真「ふむ。ビニール紐では無理か」

伊代「んー」

場面転換。

伊代「今度はどう?」

勇樹「ダメだ」

涼真「タオルでもダメか」

伊代「んー」

場面転換。

伊代「今度はどう?」

勇樹「ダメだ」

涼真「リボンでもダメか」

伊代「んー」

場面転換。

伊代「今度はどう?」

勇樹「ダメだ」

涼真「包帯でもダメか」

伊代「んー」

場面転換。

伊代「今度はどう?」

勇樹「ダメだ」

涼真「ターバンでもダメか」

伊代「んー」

涼真「む?」

伊代「どうしたの?」

涼真「そろそろ、競技が始まる時間だ」

伊代「ど、どうするのよ?」

涼真「……仕方がない。アレを試してみるか」

伊代「あれ?」

場面転換。

グラウンド。

歓声が沸き上がる。

勇樹「うおおおおおおおお!」

涼真「おおおおおおおおお!」

伊代「やったぁ!」

場面転換。

伊代「やったじゃん、勇樹!」

勇樹「ふっ! 諒真、勝ったぜ!」

涼真「ふん! 体育祭はまだ始まったばかりだ! ここから巻き返す!」

勇樹「面白い! 俺だって負けないぞ……って、緩んできた。締め直してくる」

涼真「ああ」

勇樹が歩いていく。

伊代「ふふ。やっぱり、勇樹はハチマキが合った方が引き締まるわね」

涼真「だろう? あれでこそ、吾輩のライバルだ」

伊代「けどさ、ハチマキ持ってるなら、最初から出せばよかったんじゃない?」

涼真「む? あれはハチマキではない」

伊代「え? 違うの?」

涼真「違うな」

伊代「じゃあ、あれってなに?」

涼真「吾輩のフンドシだ」

伊代「……」

涼真「どうした?」

伊代「あいつ、あんたのフンドシ頭に巻いてるってこと?」

涼真「ああ、そうだ」

伊代「勇樹は知ってるの?」

涼真「あ、そういえば、言ってないかもしれないな」

伊代「言わない方がいいと思う……」

涼真「え? なぜだ?」

伊代「いいから」

涼真「……よくわからんが、わかった」

伊代「……はあ」

終わり。

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