体育祭にて
- 2023.02.04
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
伊代(いよ)
涼真(りょうま)
勇樹(ゆうき)
■台本
グラウンド。
勇樹が全力で走っている。
勇樹「うおおおおおおおおお!」
そんな様子を見ている伊代。
伊代「ちょっと、勇樹! 本番は明日なんだから、あんまりやり過ぎると明日、バテちゃうわよ!」
勇樹「うおおおおおお!」
伊代「はあ……。あのバカ。ホント、暑苦しいんだから」
そこに諒真がやってくる。
涼真「ふふふ。さすが、拙者のライバル。前日ギリギリまで特訓とは恐れ入った」
伊代「ちょっと、諒真も見てないで、止めてよ。勝負は明日でしょ?」
涼真「ふっ! ここは武士として負けてられないな」
伊代「へ?」
涼真「うおおおおお!」
涼真が走り出す。
伊代「あっ! 諒真まで走り出しちゃった」
涼真と勇樹が並んで走る。
勇樹「うおおおおおお!」
涼真「おおおおおおお!」
伊代「はあ……付き合いきれない。勝手にしなさい」
伊代が歩き去っていく。
場面転換。
体育祭で大賑わいのグラウンド。
涼真「ふふふ。伊代よ、今年こそは我がB組が優勝をいただくぞ」
伊代「……まだ一競技終わっただけでしょ。体育祭の競技、何個あると思ってるのよ」
涼真「ふむ。まあ、B組の優勝はいただくが、吾輩の目的は一つ、勇樹を完膚なきまでに叩きのめすことだ」
伊代「9勝9敗だっけ?」
涼真「今年で真の決着をつけてやる! ふははははは! ……って、そういえば、勇樹はどこ行ったのだ? さっきから姿が見えんが」
伊代「あ、言われてみれば」
そこにスタスタと歩く勇樹。
勇樹「はあ……」
伊代「あ、いた。おーい、勇樹」
勇樹「……伊代か」
伊代「どうしたの? いつも暑苦しいあんたが元気ないじゃない」
涼真「どうしたのだ? 吾輩との決着の時なのだぞ」
勇樹「終わりだ……」
伊代「何言ってるのよ……って、あれ? あんた、ハチマキは?」
勇樹「……」
伊代「まさか、忘れたの?」
勇樹「気合を入れて、洗ったんだよ。だけど……朝起きたら……」
伊代「無くなってたの?」
勇樹「……」
伊代「あー、昨日、風強かったもんね」
勇樹「終わりだ。もう……終わりだ」
伊代「何言ってるのよ。諒真と決着つけるんじゃなかったの?」
涼真「そうだぞ! 気合を入れ直さないか!」
勇樹「もう俺の負けでいい……」
伊代「ちょっと! あんたがそんなんじゃ、A組負けちゃうじゃない!」
勇樹「そう言われても……」
伊代「ハチマキが何よ! そんなの無くなって影響なんてないでしょ」
勇樹「ダメなんだ。ハチマキがないと気合が入らない。……いや、ハチマキの方が本体といっても過言じゃないんだ」
伊代「いや、それは過言でしょ」
涼真「代用はできんのか?」
伊代「代用……。そうよ、なにかで代用するわよ」
場面転換。
伊代「どう?」
勇樹「ダメだ」
涼真「ふむ。ビニール紐では無理か」
伊代「んー」
場面転換。
伊代「今度はどう?」
勇樹「ダメだ」
涼真「タオルでもダメか」
伊代「んー」
場面転換。
伊代「今度はどう?」
勇樹「ダメだ」
涼真「リボンでもダメか」
伊代「んー」
場面転換。
伊代「今度はどう?」
勇樹「ダメだ」
涼真「包帯でもダメか」
伊代「んー」
場面転換。
伊代「今度はどう?」
勇樹「ダメだ」
涼真「ターバンでもダメか」
伊代「んー」
涼真「む?」
伊代「どうしたの?」
涼真「そろそろ、競技が始まる時間だ」
伊代「ど、どうするのよ?」
涼真「……仕方がない。アレを試してみるか」
伊代「あれ?」
場面転換。
グラウンド。
歓声が沸き上がる。
勇樹「うおおおおおおおお!」
涼真「おおおおおおおおお!」
伊代「やったぁ!」
場面転換。
伊代「やったじゃん、勇樹!」
勇樹「ふっ! 諒真、勝ったぜ!」
涼真「ふん! 体育祭はまだ始まったばかりだ! ここから巻き返す!」
勇樹「面白い! 俺だって負けないぞ……って、緩んできた。締め直してくる」
涼真「ああ」
勇樹が歩いていく。
伊代「ふふ。やっぱり、勇樹はハチマキが合った方が引き締まるわね」
涼真「だろう? あれでこそ、吾輩のライバルだ」
伊代「けどさ、ハチマキ持ってるなら、最初から出せばよかったんじゃない?」
涼真「む? あれはハチマキではない」
伊代「え? 違うの?」
涼真「違うな」
伊代「じゃあ、あれってなに?」
涼真「吾輩のフンドシだ」
伊代「……」
涼真「どうした?」
伊代「あいつ、あんたのフンドシ頭に巻いてるってこと?」
涼真「ああ、そうだ」
伊代「勇樹は知ってるの?」
涼真「あ、そういえば、言ってないかもしれないな」
伊代「言わない方がいいと思う……」
涼真「え? なぜだ?」
伊代「いいから」
涼真「……よくわからんが、わかった」
伊代「……はあ」
終わり。