■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
実写ドラマ・漫画原作、現代ファンタジー、コメディ
■キャスト
クリス
ハンナ
アルフレッド
ミーナ
男性
女性
■台本
舞踏会会場。
多くの人たちが踊っている。
女性1「クリスさん、わたくしと踊っていただけますか?」
クリス「申し訳ありません。次は妻と踊る予定でして」
遠くからハンナが男性1と話しながらやってくる。
男性1「ハンナ。もう一曲、いいだろう?」
ハンナ「ごめんなさい。次は夫と踊る予定なの」
男性1「ははは。君たちは相変わらず、仲がいいな。じゃあ、また誘うよ」
ハンナ「ええ。それじゃ」
ハンナがクリスの前に立つ。
ハンナ「お待たせ、ダーリン」
クリス「やあ、ハニー。待ちわびたよ」
クリスが手を出し、その手を握るハンナ。
音楽にのせて、二人が踊り出す。
クリス(N)「よし、今日こそ、決めるぞ。アルフレッド、頼んだからな」
クリスが踊りながら、壁際の方へ誘導していく。
クリス(N)「あと、3歩……」
クリスが3歩進み、ハンナも一緒に動く。
クリス(N)「今だ!」
だが、ハンナが急に激しく大きく回る。
クリス「なっ!」
同時にパシュっと音を立てて、床に弾丸が撃ち込まれる。
ハンナが回っていなければ、ハンナに当たっていた場所。
そして、周りがざわざわと騒ぎ始める。
ハンナ「なにか変な音がしなかった?」
クリス「んー。狙撃のような音がした気がする」
ハンナ「……ここは危険ってこと?」
クリス「ああ。そのようだ」
ハンナ「せっかく、盛り上がってたところなのに」
クリス「また機会はあるさ。帰ろう」
ハンナ「そうね」
場面転換。
朝。ハンナが料理をしている。
小刻みに包丁で野菜を切る音が響く。
そこにクリスがやってくる。
クリス「おはよう、ハンナ」
背を向けたまま返事をするハンナ。
ハンナ「おはよう、あなた。あ、冷蔵庫からトマトを出してくれる?」
クリス「ああ、いいよ」
クリスが冷蔵庫の方へ行き、冷蔵庫を開ける。
クリス「えーと、トマトトマト……あ、あった」
トマトを取り出して、ハンナに渡そうとする。
クリス「はい、トマト」
ハンナ「ありがと……」
野菜を切る手を止めて、クリスの方へ向くハンナ。
しかし、包丁を持っている手から、包丁がすっぽ抜ける。
ハンナ「あっ!」
包丁がクリスの方へ飛んでいく。
クリス「おっと!」
すんでのところで人差し指と中指で挟むように包丁を止める。
ハンナ「ごめんなさい! 大丈夫だった?」
クリス「ああ。平気だよ。けど、今度からは気を付けてくれ」
包丁とトマトを渡すクリス。
ハンナ「ありがとう」
受け取って、包丁でトマトを切るハンナ。
クリス「……」
ちらりとテーブルの上に載っているサラダの皿を見る。
サラダの皿が2つ並んでいる。
クリス「……」
クリスが服の裾から小袋を取り出し、サラダの皿の1つに、薬をサラサラとかける。
ハンナ「あとはトマトを乗せてっと」
ハンナが2つのサラダの皿にトマトを乗せていく。
クリス「じゃあ、俺はこっちの皿を……」
クリスが薬を入れてない方の皿に手を伸ばす。
が。
ハンナ「はい、あなた」
ハンナが、薬が入った方の皿をクリスに差し出す。
クリス「あ、ありがとう」
クリスが渡された方の皿を受け取る。
場面転換。
トイレの中。
クリスが吐いている。
クリス「ふう。危なかったな」
ポケットから小瓶を出して、中の液体を飲む。
クリス「念のために解毒剤を持っててよかった」
そのとき、スマホが鳴る。
チラリと画面を見ると、『非通知』と出ている。
場面転換。
秘密機関。
ドアが開いて、クリスが入ってくる。
アルフレッド「よお、クリス。首尾はどうだ?」
クリス「……わかってて言ってるんだろ?」
アルフレッド「すまねえ。けど、A級エージェントのお前がここまで手こずるなんてな」
クリス「俺自身、予想外だったよ」
アルフレッド「さすが現役スパイだな」
クリス「ああ。そのせいか、妙に勘が良いというか……。とにかく、こっちの作戦が潰されるんだ」
アルフレッド「敵国の要人をようやく補足できたんだ。なんとか暗殺を成功してもらわないと困るぞ」
クリス「わかってる。A級エージェントの名にかけて、絶対に彼女は始末してみせる」
アルフレッド「……まさか、バレてるってことはないよな?」
クリス「いや、それはないさ」
アルフレッド「それならいんだが……」
場面転換。
裏道のある小屋。
ハンナが入ってくる。
ミーナ「お疲れ様。調子はどう?」
ハンナ「はあ……。わかってて言ってるんでしょ?」
ミーナ「あら、ごめんなさい。まさか、あなたがここまで時間がかかるなんて信じられなくて」
ハンナ「さすがA級エージェントね。勘がいいわ」
ミーナ「絶対に暗殺を成功させるのよ。それが国のためなんだから」
ハンナ「わかってるわ」
ミーナ「……ねえ、もしかして、相手にバレてる、なんてことはないかしら?」
ハンナ「それは大丈夫よ。絶対にバレてないわ」
ミーナ「そう。それならいいわ。じゃあ、頑張ってね」
ハンナ「ええ。必ず、始末してみせるわ」
場面転換。
家の中。
ガチャリとドアが開き、クリスが入ってくる。
クリス「ただいま、ハニー」
ハンナ「おかえりなさい、ダーリン」
クリス「これ、プレゼント」
ハンナ「あら、どうしたの?」
クリス「忘れたかい? 今日は君と出会った記念日だよ」
ハンナ「ふふふ。覚えてるわ。だから、私もプレゼントを用意したの」
お互いが箱を相手に渡す。
そして、お互い、相手に見えないように悪い笑みを浮かべる。
終わり。