嫌われ者の不良

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
高岡 青空(たかおか そら) 25歳
立山 貴弘(たてやま たかひろ) 17歳
恭二(きょうじ) 17歳
美咲(みさき) 28歳
校長 58歳
男子生徒1~5
女子生徒1~4

■台本

職員室。

青空「高岡青空です。今日から、こちらの高校でお世話になります。よろしくお願いいたします」

パラパラと教師たちの拍手が起こる。

校長「それでは、皆さん。こんな時期ですが、負けずに頑張っていきましょう」
青空「……?」

場面転換。
職員室。

美咲「高岡くん。ついてないね。よりによって、うちに配属なんて」
青空「……あの、なんかあったんですか?」
美咲「あれ? 知らない? うちで事故死者が出たの」
青空「ええ? そうなんですか?」
美咲「うん。その、死んだ子が、この辺じゃちょっと有名な不良でね」
青空「不良……」
美咲「だから、周りからはあまり、この件は問題になってないところが、不幸中の幸いかな」
青空「……普通の事故死、なんですよね?」
美咲「さあ」
青空「さあって……」
美咲「校長はあんまり、この件には触れてほしくないみたいだから、高岡くんもあんまり、首、突っ込まないようにね」
青空「はあ……」

場面転換。
廊下。

青空「えっと、ちょっといいかな?」
女生徒1「あ、高岡先生、なんですか?」
青空「あのさ、この前、その……事故に遭った生徒がいるって聞いたんだけど」
女生徒1「ああ。立山くんですね」
青空「結構な不良って聞いたけど」
女生徒1「そうですね。乱暴な口調で、すぐ怒ってたし、先生にも喧嘩を売ってたりしてたみたいですよ」
青空「ええ? 先生にも?」
女生徒1「はい。そう聞きました」
青空「そっか。ありがとう」

場面転換。
教室内。

男子生徒1「ああ。立山くんね。やべーやつだったよな?」
男子生徒2「うん。今どき、いるのかってくらいの古臭い不良だったよね」
男子生徒1「みんな、迷惑がってたよな? 立山くんが登校してきたら、一気にみんなのテンション下がるんだもん」
男子生徒2「そうそう」
青空「そうなんだ……」

場面転換。
化学準備室。

女子生徒2「確か、屋上から落ちたんだよね?」
女子生徒3「うん。落とされたって噂もあったんだっけ?」
青空「え? それ、どういうこと?」
女子生徒3「あー、私が言ったって言わないでくださいね。まあ、噂みたいなものだから、みんな知ってると思いますけど」
青空「わかった。教えてくれる?」
女子生徒3「立山くんって、不良で、いじめっ子だったんです」
女子生徒2「その子を屋上に呼び出して、虐めてたらしいんですけど……」
女子生徒3「その子に、抵抗されて、屋上から落ちたって話ですよ」
青空「……その子の名前ってわかる?」
女子生徒3「皆川恭二……だったと思う」

場面転換。
ガチャリとドアが開き、青空が屋上にやってくる。

恭二「……」
青空「えっと、君が皆川くんでいいのかな?」
恭二「はい……。そうですけど」
青空「立山って生徒のことを聞きたいんだけどいいかな?」
恭二「……」
青空「その……虐められてたってホント?」
恭二「はい」
青空「そっか……」
恭二「……それがなにか?」
青空「あ、いや。その……不謹慎だけど、これでもう虐められることないから、安心だね」
恭二「……何言ってるのですか?」
青空「え?」
恭二「……立山くんがいなきゃ、僕はもう……」
青空「……どういうこと? 君は立山って子にいじめられたんじゃないの?」
恭二「え? ……ああ。そういうことか。……そっか、そんなふうな噂を流したんだ。……校長らしいや」
青空「……話を聞かせてもらえる?」
恭二「逆ですよ。僕は……立山くんに助けてもらったんだ」

場面転換。
回想。

男子生徒4「あははははは。ほら、まだパンツが残ってるぞ!」
男子生徒5「ぬーげ! ぬーげ! ぬーげ!」
恭二「う、うう……」
男子生徒4「おら! 早く全裸になれってんだよ!」

バンとドアが勢いよく開く。

貴弘「……なんだ、お前ら?」
男子生徒4「げっ! 立山……」
貴弘「屋上は俺の休憩の場所だぞ。消えろ」
男子生徒5「ちっ!」

男子生徒4と5が部屋から出て行く。

貴弘「ふん」
恭二「……」
貴弘「ん? お前、なんでパンツ一枚なんだ?」
恭二「……」

場面転換。

貴弘「ふーん。虐めねぇ。だせぇなぁ」
恭二「……僕、もう行くね」
貴弘「暇だったら、また来てもいいぞ」
恭二「え?」
貴弘「屋上って言っても、広いからな。暇なら、また来いよ」
恭二「う、うん……」

場面転換。
屋上。

貴弘「あはははは。そりゃ、すげーな」
恭二「立山くんも、今度行こうよ。楽しいよ」
貴弘「うーん。俺が行ったら、目立つだろ。周りの奴らが嫌がるんじゃないか?」
恭二「あはは。立山くんって意外と、周りを気にするタイプなんだね」
貴弘「うっせーな……」
恭二「あははは」
貴弘「はははは」

場面転換。
職員室。
勢いよくドアが開き、貴弘が入って来る。

貴弘「おい! なんで、屋上のドアを閉めてんだよ!?」
教師「何を言ってる? 元々、屋上は立ち入り禁止だ」
貴弘「ふざけんな! あいつらはいいのかよ!?」
教師「あいつら? 誰のことだ?」
貴弘「しらばっくれやがって。あれだろ? 理事会の親族だから目を瞑ってたくせに」
教師「知らんな」
貴弘「てめぇ……」
教師「おい、手を放せ!」

職員室が騒がしくなる。

場面転換。
屋上。

恭二「やめてよ!」
男子生徒5「うるせえ! ほら、飛び降りろよ!」
男子生徒4「あはははは。ダイブ! ダーイブ! 屋上から、ダイブ!」
恭二「危ないから、やめてってば」

そのとき、バンとドアが開いて貴弘がやってくる。

貴弘「てめえら……」
男子生徒5「げっ! 立山! なんで?」
貴弘「おらああ!」

貴弘が男子生徒5と4を殴り飛ばす。

男子生徒5・4「うがっ!」

貴弘が恭二に駆け寄る。

貴弘「大丈夫か!?」
恭二「立山くん!」
貴弘「手を伸ばせ!」
恭二「あ、あぶないよ!」
貴弘「うるせー。早く、手を伸ばせって」
恭二「あ、ありがと……」
貴弘「動くなよ。今、引き上げる」

貴弘が恭二を引き上げるが、代わりに貴弘がバランスを崩す。

貴弘「うわっ!」
恭二「立山くん! 立山くん!」
貴弘「うわあああああああ!」

下で、ドンという音がする。

場面転換。
回想終わり。

青空「……」
恭二「学校側は事故にした上に、僕を虐めたのは立山くんってことにしたんだ」
青空「……そうだったのか」
恭二「僕は絶対に許さない。このままではおわらせない」
青空「……」
恭二「ごめんね、先生。来たばっかりなのに、ゴタゴタになるよ、この学校」
青空「……いや、別にいいよ」
恭二「……それじゃ、失礼します」

恭二が行ってしまう。

青空「……さてと、これからどうするかな」

終わり。

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