まるで子猫のように

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■概要
人数:3人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
アシェル 31歳
ミケル 27歳
ミア 5歳

■台本

会社終わり。

夜道を歩くアシェルとミケル。

ミケル「アシェルさん。ちょっと、飲んでかないですか?」

アシェル「嫌だよ。お前、酒癖悪いから。それに、ミケルの場合は酒じゃなくて、女が目当てだろ?」

ミケル「わかってるなら、いいじゃないですかー。付き合ってくださいよ」

アシェル「一人で行けばいいだろ」

ミケル「そんなこと言わないでくださいよ。シェルさんと行けば、女の子たちの反応がいいし、サービスしてもらえるんですから」

アシェル「知らん。尚更、ひとりで行け」

ミケル「えー! じゃあ、アシェルさんは飲まなくていいです! 女の子とも話さなくてもいいです! なので、割り勘だけ、お願いできませんか?」

アシェル「ひ、と、り、で、行け!」

ミケル「はあ……。しゃーない。帰って、一人寂しく飲むかぁ」

アシェル「……少し、お酒、控えたらどうだ? この前も健康診断で脅されたんだろ?」

ミケル「でも、飲まないとやってられないですよ。毎日毎日、部長に怒られて、ストレスたまりまくりですよ」

アシェル「怒られるのはお前が悪い」

ミケル「うわー! アシェルさんに裏切られた―。アシェルさんだけは味方だと思ってたのに」

アシェル「よし。次からは、お前の失敗のフォローはしなくていいな」

ミケル「わー! 冗談です! 冗談! これからも何卒、よろしくお願いします―」

アシェル「ったく……。おっと。じゃあ、俺はこっちだから」

ミケル「あれ? スーパー寄ってかないんですか? この時間ならまだセールやってますよ」

アシェル「いや、帰る。あいつを待たせるわけにはいかないからな」

ミケル「あいつ?」

アシェル「あ、しまった」

ミケル「えーー! アシェルさん、女できたんですか? あー、そりゃ、飲み屋の女のところに行くわけないですよねー! で、当然、美人なんですよね? あ、その人に妹さんとかいないですか? できれば、紹介して……」

アシェル「ストップ! 落ち着け! 確かに女だが、そういうんじゃない?」

ミケル「ん? 不倫とかですか?」

アシェル「……なんで、そうなる? 姪だよ、姪。両親が旅行に行くから、しばらく預かってくれって言われたんだ」

ミケル「へー。アシェルさんの姪ですか……。何歳なんですか?」

アシェル「なんで、そんなことを聞く?」

ミケル「だって、アシェルさんの姪ですよね? 美人ってことじゃないですか」

アシェル「……余計、教えるわけにはいかなくなったな」

ミケル「どんな子なんですか?」

アシェル「んー。そうだなぁ。一言で言うと、子猫って感じか……」

ミケル「おおおー! 子猫ですか!」

アシェル「なんで、いきなりテンションが高くなるんだ?」

ミケル「俺、猫好きなんですよね」

アシェル「あ、そう。じゃあ、また明日な」

アシェルがスタスタと歩き出す。

その後ろから足音がついて来る。

アシェル「……おい」

ミケル「はい?」

アシェル「なんで、ついて来る?」

ミケル「え? 姪っこさんに会うためですけど」

アシェル「誰が会わせるって言った? 帰れ」

ミケル「ははは。いいじゃないですか」

アシェル「帰れ!」

場面転換。

ガチャリとドアが開く音。

アシェル「……ただいま」

返事はない。

ミケル「あれ? いないんですか?」

アシェル「いや、返事しないだけだ」

ミケル「あー、そういうのも猫っぽいですね。でも、一旦、懐けばすり寄って来るもんです」

アシェル「……」

無視して家の中に入るアシェル。

ミケル「お邪魔しまーす」

後に続くミケル。

ガチャリとリビングのドアを開くアシェル。

ミア「……」

アシェル「ミア。いるなら、お帰りくらい言ってもいいだろ」

ミア「……誰?」

ミケル「あー、俺、アシェルさんの会社の部下で、ミケルって言うんだ。よろしくね、ミアちゃん!」

ミア「……」

ミケル「いやあ、アシェルさんが言った通り、子猫って感じで可愛いなぁ、ミアちゃんは」

ミケルがミアの頭を撫でようと手を伸ばす。

アシェル「バカっ! 危ない!」

ミケル「へ?」

ミア「うががが!」

ミアがミケルの顔をバリバリと引っ掻く。

ミケル「ぎゃあああああああ!」

場面転換。

朝の出勤時。

歩いているミケル。

ミケル「いてて」

アシェル「不用意に頭を撫でようとするからだ」

ミケル「アシェルさん、アレのどこが子猫ですか?」

アシェル「え? 拾ってきた猫って、あれくらい狂暴だろ?」

ミケル「……まあ、拾ってきた子猫ならそうかもしれないですけど。それなら、子猫じゃなくて野良猫って言って欲しかったです」

アシェル「俺からしたら、子猫のように可愛いんだよ」

ミケル「……はいはい。いちちっ!(顔が痛い)」

終わり。

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