女装

〈前の10枚シナリオへ〉  〈次の10枚シナリオへ〉

〈声劇用の台本一覧へ〉

■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
朱里(あかり)
蒼(あおい)
春奈(はるな)
母親
女性
女生徒1~2
男生徒1~2

■台本

朱里と蒼が赤ん坊の頃。

母親が2人をベビーカーに乗せて散歩している。

そこに女の人が通る。

女の人「あらー。可愛い。双子?」

母親「はい。一卵性双生児なんです」

女の人「へー。どうりでソックリ。2人とも男の子?」

母親「いえ、朱里が女の子で、蒼が男の子なんですよ」

女の人「あー、朱里ちゃんは女の子だったのー」

母親「なんですかね。朱里はよく、男の子に間違われるんですよね」

女の人「大丈夫よ。大きくなれば、女の子らしくなるわ」

母親「そうなんですかね……」

場面転換。

朱里と蒼が成長し、高校生になっている。

休み時間の教室。

女生徒「ねえねえ、朱里。今度、このお店に行かない?」

朱里「んー。別にいいけど、ちょっと高いね。このお店」

女生徒「大丈夫! なんと、ここのお店って、カップルだと3割引きになるんだよねー」

朱里「……カップル?」

女生徒「そ。だから、行くときはズボン履いてきてね」

朱里「……私、女なんだけど」

女生徒「あはは。知ってるよ。けど、周りからはそう見えないって話。じゃあ、よろしくね」

朱里「やっぱり、行かない」

女生徒「えー! なんでぇ!?」

場面転換。

朱里の部屋。

コンコンとノックされる音。

朱里「開いてるよー」

ガチャリとドアが開き、蒼が入って来る。

蒼「ねえ、朱里。お願いがあるんだけど」

朱里「断る」

蒼「……まだ、何も言ってないけど」

朱里「蒼のお願いなんて、ろくでもないものばっかりでしょ」

蒼「ひでーなー」

朱里「とにかく、お願いはきかないから」

蒼「まあまあ、話を聞くだけ聞いてよ」

朱里「手短ならね」

蒼「今度、文化祭あるだろ?」

朱里「あるね」

蒼「朱里のクラスって何やるの?」

朱里「手短って言ったよね?」

蒼「ごめんごめん。えっと、うちのクラスは喫茶店をやるんだけどさ」

朱里「へー。蒼のクラスにしては普通じゃん」

蒼「女装喫茶なんだよね」

朱里「……前言撤回。やっぱ、あんたのクラス変だわ」

蒼「で、俺、ウェイトレス係になったんだよね」

朱里「却下! 無理!」

蒼「まだ、なんも言ってないじゃん」

朱里「どうせ、代わってくれって言うんでしょ?」

蒼「おお! 正解!」

朱里「正解、じゃないし。すぐバレるし、なにより、私、女なんだけど。女装って」

蒼「だからだよ。これは朱里のために提案してるんだけど」

朱里「どういうこと?」

蒼「うちのクラスにさ、読モやってる子がいるんだけど、スゲー、化粧上手いんだよ」

朱里「それと、私がどう関係してるの?」

蒼「だーかーら! 朱里って、いつも男に間違われるの嫌がってるだろ?」

朱里「もしかして、化粧を押して貰えってこと?」

蒼「というか、その日だけは絶対に、男に間違われなくなるって話」

朱里「うーん」

蒼「やるだけやってみろよ」

朱里「……わかった」

場面転換。

学校の文化祭当日。

ワイワイと準備で賑わっている。

春奈「おーい、男子―! そろそろ、化粧するからこっちきてー」

男子生徒1「おう! 待ってました」

男子生徒2「可愛くしてくれよな」

春奈「あのね。化粧っていっても、骨格から変えれるわけじゃないから。過度な期待はしないでよ」

男子生徒1「いやー、楽しみだなー」

春奈「聞けよ、人の話。まあ、いいや。蒼くんも、こっちきて」

朱里「え? あ、はい」

朱里が春奈の前に座る。

春奈「蒼くん?」

朱里「え? あ、うん。そうだけど」

春奈「なんか、いつもより雰囲気違うね。もしかして、もう役作りに入ってるとか?」

朱里「は、はは……。そうかも」

春奈「蒼くんは素材がいいから、結構、良い感じになると思うよ」

朱里「お願いします」

場面転換。

春奈「ふう! 完成! どうよ、この力作」

男子生徒1「おおー! 蒼、いいじゃん!」

女生徒2「どれどれ? あ、ホントだ! すごーい」

男子生徒2「やっぱ、春奈の化粧術はすげーな」

朱里「そ、そんなに?」

男子生徒1「うんうん。女装にしては超レベル高いと思う」

朱里「え?」

男子生徒2「なんていうか、綺麗だよな。女って言われると首を傾げるけど」

朱里「……」

春奈「あのね。いくら私でも、性別を変えることはできないから」

女子生徒2「なんか、そういうお店にいそうだよね」

女子生徒3「あー、わかるー」

朱里「……」

男子生徒1「これは、大盛り上がり間違いなしだ!」

朱里「……」

場面転換。

ドンドンドンとドアを叩く音。

蒼「おーい! 朱里! 出て来いよ! いつまで閉じこもってるつもりだ?」

朱里「うっさい! 黙れ!」

蒼「なんだよ、もう! 結構、朱里、人気だったんだぞ。女装って感じでよかったって」

朱里「私は女だ!」

終わり。

〈前の10枚シナリオへ〉  〈次の10枚シナリオへ〉