勝てばいいのだ
- 2024.02.22
- 映像系(10分~30分) 退避

■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
アニメ、ファンタジー、コメディ
■キャスト
リアム
セリーナ
魔物
■台本
〇ダンジョンの出口
リアムとセリーナがボロボロの格好で出てくる。
リアム「ふう。死ぬかと思ったぜ」
セリーナ「もう、嫌。帰りたい……」
リアム「何言ってるんだ! もう、魔王の城は目の前だろ!」
リアムが指差す方向には魔王城が佇んでいる。
セリーナ「あのさ、リアム。ここまで来るのだって、モンスターから逃げまくってきたのよ」
リアム「それが?」
セリーナ「そんなんで魔王に勝てるわけないでしょ!」
リアム「そうかなぁ?」
セリーナ「あのね。私たちより、100倍強い、西の勇者たちでさえ、魔王城の門番に勝てなかったのよ」
リアム「そんなのやり方しだいだろ」
セリーナ「どういうこと?」
リアム「まあまあ、俺を信じてついて来いって。後悔はさせないからさ」
セリーナ「……今の段階で、これ以上ないってくらい後悔してるんだけど」
リアムが進み、その後を渋々ついていくセリーナ。
〇魔王城・門前
仰々しく、禍々しい門。
だが門の前には誰もいない。
リアム「あれ? 門番がいないぞ」
セリーナ「ホントね。どういうことかしら」
リアム「ラッキー。よし、行こう」
セリーナ「ちょちょちょっと、いいの?」
リアム「いいだろ、別に」
セリーナ「こういうのは肩慣らし的に門番を倒していくもんじゃないの?」
リアム「あのなぁ。俺たちが門番に勝てるわけないだろ」
セリーナ「……」
リアムがこそこそと門を開いて中に入ってく。
セリーナ「ちょっと待ってよ」
セリーナも慌ててついて行く。
〇魔王城・廊下
物陰に隠れながら進んでいくリアム。
その後ろについていくセリーナ。
セリーナ「ねえ、なんでコソコソと進んでいくの?」
リアム「なんでって、堂々と歩いてて魔物が襲ってきたらどうするんだよ?」
セリーナ「いや、だからさ、そういう魔物を倒しながら進んでいくものじゃないの、普通」
リアム「セリーナ。お前はまだわかってないようだな」
セリーナ「なにが?」
リアム「こういうのはササッと魔王のところに行って、魔王だけ暗殺して帰ってくればいいんだよ」
セリーナ「うわー。勇者とは思えない台詞」
リアム「うるさいな。勝てばいいんだよ、勝てば」
セリーナ「けど、そもそも魔王に勝てるの? 門番にすら勝てないなら無理じゃない?」
リアム「ふっふっふ。だから、これを使う」
リアムが懐からある玉を出す。
セリーナ「あ、それって!」
リアム「そう。どんなモンスターでも一撃で倒せるという強力な玉だ。一回しか使えないけどな」
セリーナ「……ますます卑怯」
リアム「うるさいな。こうでもしないと魔王に勝てないだろ」
セリーナ「でも、魔王に効くかな? そういうアイテムって、普通、魔王には効かないんじゃない?」
リアム「気づかれないように背後から使って、ダメだったらさっさと逃げる」
セリーナ「……卑怯すぎる」
リアム「うるさいってば」
〇魔王城・廊下
キョロキョロと周りを見ながら進んでいくリアムとセリーナ。
リアム「にしても、魔物が全然いないな」
セリーナ「ホントね……」
リアム「昼寝でもしてるのか?」
セリーナ「全員で一斉に寝ないでしょ、普通」
リアム「でもまあ、見つからなくてラッキーだよな。ささっと魔王の部屋に行って、暗殺しようぜ」
セリーナ「はあ……。もうどうにでもなれよ」
〇魔王城・魔王の部屋の前
扉の前で、さすがに生唾を飲み、緊張するリアムとセリーナ。
リアム「よ、よ、よし、行くぞ」
セリーナ「ホントに、大丈夫なんでしょうね?」
そのとき、通路の角から魔物が歩いてきて、2人に気づく。
魔物「あっ! 人間!」
リアム「げっ! 見つかった!」
セリーナ「逃げましょ」
魔物「お、おい! みんな、起きろ! 人間が入り込んでるぞー!」
リアム「とにかく、魔王の部屋の中に入るぞ」
セリーナ「ええー!」
魔物「おい! 待て、ダメだ! 勝手に入るな!」
リアム「ふん。ダメだと言われて、やめるバカがどこにいるんだ!」
リアムが扉を開けて、中に入る。
〇魔王城・魔王の間
中に入るリアム。
リアム「魔王、覚悟! ……ってあれ?」
部屋の中はもぬけの殻。
魔王はおろか、誰もいない。
セリーナ「どういうこと?」
ドアから魔物が入って来る。
魔物「魔王様は今週、有休をとって旅行中だ」
リアム「ええー! タイミング悪っ!」
セリーナ「あー、だから、城のみんな、だらけてたのね」
魔物「……魔王様がいないとなれば、そりゃ、みんな羽を伸ばすさ」
リアム「……なんだろ。どこの世界も、下っ端は苦労するもんだな」
セリーナ「そうね」
魔物「魔王様は不在なんだ。さっさと帰ってくれ。あと、このことは魔王様には秘密な」
リアム「わかったよ。じゃあ、帰るか」
セリーナ「そうね」
魔物「今度は事前に予約してくれよ」
リアム「はいはい。わかったよ」
セリーナ「でも、予約なんてしたら、ここまでたどり着けないんじゃない?」
リアム「……確かに」
〇森
リアムとセリーナが並んで歩いている。
リアム「なんだか、くたびれ損だったな」
セリーナ「そうね」
リアム「ま、人間、分相応が一番だな」
セリーナ「……だから、最初から言ってるのに」
スタスタと二人が歩いていく。
終わり。