足跡

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ドラマ、アニメ、現代、シリアス

■キャスト
ロバート
エマ
サム
子供1~3
警察官

■台本

〇警察署内

ロバート(32)が事件ファイルを見ながら、ため息を付く。

ロバート「……くそ」

そこにサム(25)がやってくる。

ロバートの隣の席に座るサム。

サム「先輩、またそのファイルを見てるんですか?」

ロバート「今月だけで3人だぞ、3人」

サム「先輩がそういうから、捜査したじゃないですか。でも、結局、いつも空振り。で、本部がただの失踪。事件性なしって、決着したじゃないですか」

ロバート「俺は納得してない」

サム「どうでもいいですけど、ちゃんと仕事してくださいよ。他にもまだまだ事件は山積みなんですから」

ロバート「……」

立ち上がって歩き出すロバート。

サム「ちょっと、先輩? どこ行くんですか? 先輩―?」

〇公園

ベンチに座り、ファイルを見ているロバート。

ファイルには様々な人の顔写真と情報が載っている。

ロバート「サミュエル・スミス。10歳。川で遊んでいる中、行方不明。エミリー・ウィリアムズ。12歳。マディソン・ブラウン。8歳……。年齢も性別も、場所もバラバラ。共通しているのは子供ってだけ……。そして、いつも足取りがつかめなくなる」

頭を抱えるロバート。

ロバート「……」

ため息をついて、空を見上げる。

ロバート「なんとか、犬でも借りられればな……」

エマ「19―、20! もういいかい?」

ロバート「ん?」

ロバートが声がした方向に顔向けると、エマ(9)が木の方向を向いている。

両腕を顔の前で交差させて、そこに顔をつけている。

遠くから子供たちの声が聞こえる。

子供たち「もういいよー」

エマがパッと振り返り、公園を見渡す。

みんなうまく隠れていて、誰もいない。

すると、エマが地面をジッと見つめる。

そのまま、下を見ながら歩いていく。

そして、遊具の陰を除く。

エマ「みーつけた!」

子供1「えー、もう?」

エマ「えへへ。じゃあ、次は……」

再び、エマが地面を見ながら歩き出す。

〇同

エマの周りに子供たちが集まっている。

子供2「ちぇ。エマが鬼だと、簡単に見つけられちまうな」

エマ「えへへ。凄いでしょ」

ロバートがベンチに座ったままで、その様子を見ていた。

ロバート「……」

立ち上がり、エマの方へ歩いていくロバート。

ロバート「お嬢ちゃん、凄いな。どうやって見つけてるんだ?」

エマ「おじさん、誰?」

ロバート「おじっ……」

子供3「あれ? チャーリーは? エマ、まだチャーリー見つけてないんじゃないか?」

エマ「ううん。チャーリーは帰ったわよ」

子供3「ええ? 嘘だー。帰るなんて言ってなかったぞ」

エマ「でも、お父さんと一緒に、公園の外に行ってるから、帰ったんじゃない?」

子供3「えー。チャーリーのお父さん、いつも仕事遅いはずだぞ」

エマ「……でも、絶対、公園の外に行ったよ」

ロバート「見たのか?」

エマが首を横に振る。

エマ「足跡が、公園の外に行ってるから」

ロバート「足跡……。ああ、なるほど。それで、みんなを見つけてたのか」

エマ「あー、言っちゃダメ―」

子供1「え? どういうこと?」

ロバートが子供3に顔を向ける。

ロバート「なあ、確かに、そのチャーリーくんは、帰るって言ってないんだよな? それと、お父さんがこの時間に公園に来るはずがない。そうだな?」

子供3「う、うん。だって、チャーリーはいつも、お父さんの帰りが遅いから、夜までここで遊んでるんだもん」

ロバート「……」

ロバートが辺りを見渡す。

すると少し遠い場所に山があるのが見える。

ロバートが今度はエマの方を見る。

ロバート「なあ、エマちゃん。俺は警察なんだ」

ロバートが警察手帳を出す。

ロバート「ちょっと捜査を手伝ってくれないか?」

〇山

獣道。エマが地面を見ながら進んでいる。

その後ろを、辺りを警戒しながらロバートがついていく。

ロバート「凄いな。こんな状態でも足跡を追えるのか?」

エマ「えへへ。すごいでしょ」

ロバート「ああ。鑑識いらずだな」

だが、ピタリとエマが立ち止まる。

ロバート「どうした?」

エマ「足跡がなくなっちゃった」

ロバート「どういうことだ?」

エマ「チャーリーの足跡がここでなくなっちゃったの」

ロバート「無くなった?」

エマ「うん」

ロバート「一緒にいた大人のは、どうだ?」

エマ「それも一緒になくなった」

ロバート「……」

ロバートが辺りを見渡す。

だが、特に変わったところはない。

ロバート「またか。いつも、足跡が途切れる。ヘリを使った? いや、こんな山奥で使えるわけがない。車なんて、さらにだ。……どういうことだ?」

エマ「わかんない」

ロバート「……」

考え込むロバート。

ロバート「また、ここで手掛かりが途切れるのか……」

エマ「あ、わかった!」

ロバート「なんだ?」

エマ「誰かにおんぶしてもらったんだよ」

ロバート「あはははは。なるほど。けど、それなら、おんぶした人の足跡が残ってるはずだろ?」

エマ「あるよ」

ロバート「え?」

エマ「新しい足跡が2つ」

ロバート「2つ? どこから来たかわかるか?」

エマ「ううん。わかんない」

ロバート「わかんない? なんでだ?」

エマ「だって、この人、急に出てきたから」

ロバート「……急に出てきた? ……あっ! そうか!」

エマ「え?」

ロバート「わかったぞ」

ロバートが携帯を出して、電話を掛ける。

ロバート「課長。誘拐です。人を寄越してください」

〇山奥

小さな小屋が建っていて、そこから、警察に捕まった男が連行されている。

それを見ているロバートとエマ。

ロバート「やっぱりか」

エマ「どういうこと?」

ロバート「いつも、足跡が途切れることで、見失っていたんだ。だけど、それは単純なトリックだった。いや、トリックっていうほどでもないな」

エマ「……?」

ロバート「つまり、犯人は途中で、自分と子供の靴を履き返させてたのさ」

エマ「あー、それで急に出てきたんだ?」

ロバート「そういうこと」

エマ「わー。頭いいー」

ロバート「はははは。今回は本当に助かった。ありがとな」

エマ「ううん。いいよ。じゃあ、帰るね」

エマが駆け出そうとするが、ロバートがあることに気づいて、止める。

ロバート「あ、ちょっと待って」

エマ「なに?」

ロバート「捜査に付き合ってもらったせいで、靴がドロドロになっちゃったな」

エマが自分の靴を見る。

ドロドロになっている。

エマ「ホントだ」

ロバートが財布を出し、お金を渡す。

ロバート「これで、新しい靴を買ってくれ」

エマ「ありがとう! 新しい靴になったら、エマを見つけられなくなるね!」

ロバート「はははは。そうだな」

エマが元気よく、駆け出していく。

終わり。

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