足跡
- 2024.02.29
- 映像系(10分~30分) 退避

■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ドラマ、アニメ、現代、シリアス
■キャスト
ロバート
エマ
サム
子供1~3
警察官
■台本
〇警察署内
ロバート(32)が事件ファイルを見ながら、ため息を付く。
ロバート「……くそ」
そこにサム(25)がやってくる。
ロバートの隣の席に座るサム。
サム「先輩、またそのファイルを見てるんですか?」
ロバート「今月だけで3人だぞ、3人」
サム「先輩がそういうから、捜査したじゃないですか。でも、結局、いつも空振り。で、本部がただの失踪。事件性なしって、決着したじゃないですか」
ロバート「俺は納得してない」
サム「どうでもいいですけど、ちゃんと仕事してくださいよ。他にもまだまだ事件は山積みなんですから」
ロバート「……」
立ち上がって歩き出すロバート。
サム「ちょっと、先輩? どこ行くんですか? 先輩―?」
〇公園
ベンチに座り、ファイルを見ているロバート。
ファイルには様々な人の顔写真と情報が載っている。
ロバート「サミュエル・スミス。10歳。川で遊んでいる中、行方不明。エミリー・ウィリアムズ。12歳。マディソン・ブラウン。8歳……。年齢も性別も、場所もバラバラ。共通しているのは子供ってだけ……。そして、いつも足取りがつかめなくなる」
頭を抱えるロバート。
ロバート「……」
ため息をついて、空を見上げる。
ロバート「なんとか、犬でも借りられればな……」
エマ「19―、20! もういいかい?」
ロバート「ん?」
ロバートが声がした方向に顔向けると、エマ(9)が木の方向を向いている。
両腕を顔の前で交差させて、そこに顔をつけている。
遠くから子供たちの声が聞こえる。
子供たち「もういいよー」
エマがパッと振り返り、公園を見渡す。
みんなうまく隠れていて、誰もいない。
すると、エマが地面をジッと見つめる。
そのまま、下を見ながら歩いていく。
そして、遊具の陰を除く。
エマ「みーつけた!」
子供1「えー、もう?」
エマ「えへへ。じゃあ、次は……」
再び、エマが地面を見ながら歩き出す。
〇同
エマの周りに子供たちが集まっている。
子供2「ちぇ。エマが鬼だと、簡単に見つけられちまうな」
エマ「えへへ。凄いでしょ」
ロバートがベンチに座ったままで、その様子を見ていた。
ロバート「……」
立ち上がり、エマの方へ歩いていくロバート。
ロバート「お嬢ちゃん、凄いな。どうやって見つけてるんだ?」
エマ「おじさん、誰?」
ロバート「おじっ……」
子供3「あれ? チャーリーは? エマ、まだチャーリー見つけてないんじゃないか?」
エマ「ううん。チャーリーは帰ったわよ」
子供3「ええ? 嘘だー。帰るなんて言ってなかったぞ」
エマ「でも、お父さんと一緒に、公園の外に行ってるから、帰ったんじゃない?」
子供3「えー。チャーリーのお父さん、いつも仕事遅いはずだぞ」
エマ「……でも、絶対、公園の外に行ったよ」
ロバート「見たのか?」
エマが首を横に振る。
エマ「足跡が、公園の外に行ってるから」
ロバート「足跡……。ああ、なるほど。それで、みんなを見つけてたのか」
エマ「あー、言っちゃダメ―」
子供1「え? どういうこと?」
ロバートが子供3に顔を向ける。
ロバート「なあ、確かに、そのチャーリーくんは、帰るって言ってないんだよな? それと、お父さんがこの時間に公園に来るはずがない。そうだな?」
子供3「う、うん。だって、チャーリーはいつも、お父さんの帰りが遅いから、夜までここで遊んでるんだもん」
ロバート「……」
ロバートが辺りを見渡す。
すると少し遠い場所に山があるのが見える。
ロバートが今度はエマの方を見る。
ロバート「なあ、エマちゃん。俺は警察なんだ」
ロバートが警察手帳を出す。
ロバート「ちょっと捜査を手伝ってくれないか?」
〇山
獣道。エマが地面を見ながら進んでいる。
その後ろを、辺りを警戒しながらロバートがついていく。
ロバート「凄いな。こんな状態でも足跡を追えるのか?」
エマ「えへへ。すごいでしょ」
ロバート「ああ。鑑識いらずだな」
だが、ピタリとエマが立ち止まる。
ロバート「どうした?」
エマ「足跡がなくなっちゃった」
ロバート「どういうことだ?」
エマ「チャーリーの足跡がここでなくなっちゃったの」
ロバート「無くなった?」
エマ「うん」
ロバート「一緒にいた大人のは、どうだ?」
エマ「それも一緒になくなった」
ロバート「……」
ロバートが辺りを見渡す。
だが、特に変わったところはない。
ロバート「またか。いつも、足跡が途切れる。ヘリを使った? いや、こんな山奥で使えるわけがない。車なんて、さらにだ。……どういうことだ?」
エマ「わかんない」
ロバート「……」
考え込むロバート。
ロバート「また、ここで手掛かりが途切れるのか……」
エマ「あ、わかった!」
ロバート「なんだ?」
エマ「誰かにおんぶしてもらったんだよ」
ロバート「あはははは。なるほど。けど、それなら、おんぶした人の足跡が残ってるはずだろ?」
エマ「あるよ」
ロバート「え?」
エマ「新しい足跡が2つ」
ロバート「2つ? どこから来たかわかるか?」
エマ「ううん。わかんない」
ロバート「わかんない? なんでだ?」
エマ「だって、この人、急に出てきたから」
ロバート「……急に出てきた? ……あっ! そうか!」
エマ「え?」
ロバート「わかったぞ」
ロバートが携帯を出して、電話を掛ける。
ロバート「課長。誘拐です。人を寄越してください」
〇山奥
小さな小屋が建っていて、そこから、警察に捕まった男が連行されている。
それを見ているロバートとエマ。
ロバート「やっぱりか」
エマ「どういうこと?」
ロバート「いつも、足跡が途切れることで、見失っていたんだ。だけど、それは単純なトリックだった。いや、トリックっていうほどでもないな」
エマ「……?」
ロバート「つまり、犯人は途中で、自分と子供の靴を履き返させてたのさ」
エマ「あー、それで急に出てきたんだ?」
ロバート「そういうこと」
エマ「わー。頭いいー」
ロバート「はははは。今回は本当に助かった。ありがとな」
エマ「ううん。いいよ。じゃあ、帰るね」
エマが駆け出そうとするが、ロバートがあることに気づいて、止める。
ロバート「あ、ちょっと待って」
エマ「なに?」
ロバート「捜査に付き合ってもらったせいで、靴がドロドロになっちゃったな」
エマが自分の靴を見る。
ドロドロになっている。
エマ「ホントだ」
ロバートが財布を出し、お金を渡す。
ロバート「これで、新しい靴を買ってくれ」
エマ「ありがとう! 新しい靴になったら、エマを見つけられなくなるね!」
ロバート「はははは。そうだな」
エマが元気よく、駆け出していく。
終わり。
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