片耳の女の子
- 2024.06.22
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
澪(みお) 20歳
ミーナ
店長 32歳
坂田 35歳
■台本
猫メイド喫茶の中。
接客している澪。
澪「ご主人様、お帰りなさいだにゃん!」
坂田「ただいまー、澪ちゃん!」
澪「ご主人様、喉乾いてないかにゃん?」
坂田「そうだね。じゃあ、とりあえず、ミルクとにゃんにゃんゼリー貰おうかな」
澪「ありがとうございますにゃん! ミルクとにゃんにゃんゼリー入りまーす」
場面転換。
バックヤード。
澪「ふう……」
店長「お疲れ、澪」
澪「あ、店長。お疲れ様です」
店長「澪、あの客には気を付けろよ」
澪「坂田さんですか?」
店長「ああ。あの客はそろそろヤバイ」
澪「そうですか? いい人ですよ、坂田さん」
店長「いや、ああいう、安全そうなのに限ってヤバいんだ。目で大体わかる。そろそろ、うちの飼い猫になってくれとか、わけのわからんことを言ってくるはずだ」
澪「あはは……。まさか……」
店長「とにかく、気を付けろよ。何かあったら、私に言え」
澪「わかりました」
場面転換。
注文を持ってやってくる澪。
澪「お待たせしましたにゃん。ミルクとにゃんみゃんゼリーだにゃん!」
坂田「ありがとー、澪ちゃん」
澪が隣に座る。
澪「ミルク、熱いから、澪がふーふーするにゃん。ふーふー!」
坂田「……ねえ、澪ちゃん」
澪「にゃん?」
坂田「そろそろ、僕の家の飼い猫になってくれにないか?」
澪「……っ!」
坂田「ね? いいだろ? もう、この店に10マンも突っ込んでるんだ!」
澪「そ、そういうのはちょっと……」
坂田「あ、そうだ! 澪ちゃんがうちの猫になった証に……」
ガサガサとカバンを漁る坂田。
坂田「これ! 新しい耳!」
澪「……」
坂田「ねえ、僕の飼い猫になってよ! ね? ね?」
澪「いや、それはちょっと……」
坂田「ほら、そんな耳、取っちゃってさ!」
澪「ちょ、放してください!」
坂田「なんだよ、さっきから! ちゃんとにゃを付けろよ!」
澪「痛い痛い!」
揉み合いになる。
そして、ブチっという音がする。
澪「ああー! 耳がー! 左耳が取れたー」
坂田「それなら、ほら、僕が用意したこの耳付けてよ、ね?」
澪「うう……。自分で作った、お気に入りの耳だったのにぃ」
坂田「はあ、はあ、はあ……。さあ、僕の猫になるんだ、澪ちゃん……」
店長「このブタやろー!」
坂田「ほげーーー!」
店長が坂田を殴る。
店長「貴様は出禁だ」
坂田「そ、そんなぁーー!」
澪「うう……。私の耳が……」
場面転換。
バックヤード。
店長「大丈夫か、澪」
澪「はい……」
店長「ほら、帰りにこれで新しい耳でも買って来い」
澪「いえ、次も手作りします」
店長「そうか。ま、それは材料と慰謝料ってことで受け取っておけ」
澪「ありがとうございます……」
場面転換。
路地裏を歩く澪。
澪「えーっと、確か、この辺だったんだよなぁ。端材屋さん……」
そのとき、猫の鳴き声が聞こえてくる。
澪「あ、猫だ! あれ? あの子、耳が……」
猫がもう一度鳴き、さらに奥に進んでいく。
澪「ちょっと待って! どこ行くのー」
後を追う澪。
場面転換。
草むらを進む澪。
澪「へー。こんなところに森があるんだー。って、さっきの猫さん、どこ行ったんだろ?」
ミーナ「ふう。ったく、えらい目にあったぜ」
澪「……あれ? 誰かいる?」
ガサガサと草むらを掻き分ける音。
ミーナ「ん? なんだお前?」
澪「あ、いや、その……この辺に猫、来ませんでしたか?」
ミーナ「白いやつ?」
澪「はい、そうです」
ミーナ「耳が片方欠けたやつ?」
澪「そう、その子です!」
ミーナ「ああ、それなら私だ」
澪「え?」
ミーナ「だ、か、ら、私!」
澪「……えーっと」
ミーナ「見ろ、ほら、ここ」
澪「あ、右耳がない」
ミーナ「だろ? あー、もう、やっちまったよ」
澪「……それ、誰かにやられたとかですか?」
ミーナ「ん? 私がそんなヘマするかよ。落としたんだよ」
澪「……そっちの方がどうかと思うんですけど」
ミーナ「あーあ。どこ落としたのかな? あんた、見なかったか?」
澪「い、いえ……」
ミーナ「そっか……。どうすっかな」
澪「……やっぱり、耳がないとヤバいんですか?」
ミーナ「そりゃそうだろ!」
澪「で、ですよね」
ミーナ「格好悪いだろ」
澪「あ、そこなんですか……」
ミーナ「あー、もう! いっそ、こっちも取ろうかな」
澪「いや、それはかなりヤバいと思いますよ」
ミーナ「んー。そうか?」
澪「猫っぽくなくなっちゃうかと……」
ミーナ「あー、確かに、そりゃマズいな。なあ、あんた、どうしたらいいと思う?」
澪「そ、そう言われても……」
ミーナ「しょうがない。他の奴から奪うか」
澪「それはダメですよ! その子が可哀そうじゃないですか」
ミーナ「……そりゃそうだけどさ」
澪「……あ、そうだ! こ、これじゃ……ダメですか?」
カバンから耳のカチューシャを出す。
ミーナ「それって……」
澪「カチューシャ、ですけど……」
ミーナ「いいな、それ!」
澪「いいんだ」
ミーナ「ちょうど、左耳ないしな。いいのか? もらっちゃって」
澪「はい。いいですよ」
ミーナ「サンキュー。よっと」
ミーナがカチューシャを付ける。
ミーナ「うん。良さそうだ。じゃあ、ありがとな」
ガサガサと歩き去っていく。
澪「……」
そのとき、猫の鳴き声がして、澪の前を歩いていく。
澪「あ、さっきの猫ちゃん!」
猫の鳴き声。
澪「……耳が治ってる。それに、この耳の柄、私のカチューシャの柄だ」
猫鳴き声。
澪「ま、まさかね……」
猫の鳴き声。
終わり。