片耳の女の子

片耳の女の子

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■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
澪(みお) 20歳
ミーナ
店長 32歳
坂田 35歳

■台本

猫メイド喫茶の中。

接客している澪。

澪「ご主人様、お帰りなさいだにゃん!」

坂田「ただいまー、澪ちゃん!」

澪「ご主人様、喉乾いてないかにゃん?」

坂田「そうだね。じゃあ、とりあえず、ミルクとにゃんにゃんゼリー貰おうかな」

澪「ありがとうございますにゃん! ミルクとにゃんにゃんゼリー入りまーす」

場面転換。

バックヤード。

澪「ふう……」

店長「お疲れ、澪」

澪「あ、店長。お疲れ様です」

店長「澪、あの客には気を付けろよ」

澪「坂田さんですか?」

店長「ああ。あの客はそろそろヤバイ」

澪「そうですか? いい人ですよ、坂田さん」

店長「いや、ああいう、安全そうなのに限ってヤバいんだ。目で大体わかる。そろそろ、うちの飼い猫になってくれとか、わけのわからんことを言ってくるはずだ」

澪「あはは……。まさか……」

店長「とにかく、気を付けろよ。何かあったら、私に言え」

澪「わかりました」

場面転換。

注文を持ってやってくる澪。

澪「お待たせしましたにゃん。ミルクとにゃんみゃんゼリーだにゃん!」

坂田「ありがとー、澪ちゃん」

澪が隣に座る。

澪「ミルク、熱いから、澪がふーふーするにゃん。ふーふー!」

坂田「……ねえ、澪ちゃん」

澪「にゃん?」

坂田「そろそろ、僕の家の飼い猫になってくれにないか?」

澪「……っ!」

坂田「ね? いいだろ? もう、この店に10マンも突っ込んでるんだ!」

澪「そ、そういうのはちょっと……」

坂田「あ、そうだ! 澪ちゃんがうちの猫になった証に……」

ガサガサとカバンを漁る坂田。

坂田「これ! 新しい耳!」

澪「……」

坂田「ねえ、僕の飼い猫になってよ! ね? ね?」

澪「いや、それはちょっと……」

坂田「ほら、そんな耳、取っちゃってさ!」

澪「ちょ、放してください!」

坂田「なんだよ、さっきから! ちゃんとにゃを付けろよ!」

澪「痛い痛い!」

揉み合いになる。

そして、ブチっという音がする。

澪「ああー! 耳がー! 左耳が取れたー」

坂田「それなら、ほら、僕が用意したこの耳付けてよ、ね?」

澪「うう……。自分で作った、お気に入りの耳だったのにぃ」

坂田「はあ、はあ、はあ……。さあ、僕の猫になるんだ、澪ちゃん……」

店長「このブタやろー!」

坂田「ほげーーー!」

店長が坂田を殴る。

店長「貴様は出禁だ」

坂田「そ、そんなぁーー!」

澪「うう……。私の耳が……」

場面転換。

バックヤード。

店長「大丈夫か、澪」

澪「はい……」

店長「ほら、帰りにこれで新しい耳でも買って来い」

澪「いえ、次も手作りします」

店長「そうか。ま、それは材料と慰謝料ってことで受け取っておけ」

澪「ありがとうございます……」

場面転換。

路地裏を歩く澪。

澪「えーっと、確か、この辺だったんだよなぁ。端材屋さん……」

そのとき、猫の鳴き声が聞こえてくる。

澪「あ、猫だ! あれ? あの子、耳が……」

猫がもう一度鳴き、さらに奥に進んでいく。

澪「ちょっと待って! どこ行くのー」

後を追う澪。

場面転換。

草むらを進む澪。

澪「へー。こんなところに森があるんだー。って、さっきの猫さん、どこ行ったんだろ?」

ミーナ「ふう。ったく、えらい目にあったぜ」

澪「……あれ? 誰かいる?」

ガサガサと草むらを掻き分ける音。

ミーナ「ん? なんだお前?」

澪「あ、いや、その……この辺に猫、来ませんでしたか?」

ミーナ「白いやつ?」

澪「はい、そうです」

ミーナ「耳が片方欠けたやつ?」

澪「そう、その子です!」

ミーナ「ああ、それなら私だ」

澪「え?」

ミーナ「だ、か、ら、私!」

澪「……えーっと」

ミーナ「見ろ、ほら、ここ」

澪「あ、右耳がない」

ミーナ「だろ? あー、もう、やっちまったよ」

澪「……それ、誰かにやられたとかですか?」

ミーナ「ん? 私がそんなヘマするかよ。落としたんだよ」

澪「……そっちの方がどうかと思うんですけど」

ミーナ「あーあ。どこ落としたのかな? あんた、見なかったか?」

澪「い、いえ……」

ミーナ「そっか……。どうすっかな」

澪「……やっぱり、耳がないとヤバいんですか?」

ミーナ「そりゃそうだろ!」

澪「で、ですよね」

ミーナ「格好悪いだろ」

澪「あ、そこなんですか……」

ミーナ「あー、もう! いっそ、こっちも取ろうかな」

澪「いや、それはかなりヤバいと思いますよ」

ミーナ「んー。そうか?」

澪「猫っぽくなくなっちゃうかと……」

ミーナ「あー、確かに、そりゃマズいな。なあ、あんた、どうしたらいいと思う?」

澪「そ、そう言われても……」

ミーナ「しょうがない。他の奴から奪うか」

澪「それはダメですよ! その子が可哀そうじゃないですか」

ミーナ「……そりゃそうだけどさ」

澪「……あ、そうだ! こ、これじゃ……ダメですか?」

カバンから耳のカチューシャを出す。

ミーナ「それって……」

澪「カチューシャ、ですけど……」

ミーナ「いいな、それ!」

澪「いいんだ」

ミーナ「ちょうど、左耳ないしな。いいのか? もらっちゃって」

澪「はい。いいですよ」

ミーナ「サンキュー。よっと」

ミーナがカチューシャを付ける。

ミーナ「うん。良さそうだ。じゃあ、ありがとな」

ガサガサと歩き去っていく。

澪「……」

そのとき、猫の鳴き声がして、澪の前を歩いていく。

澪「あ、さっきの猫ちゃん!」

猫の鳴き声。

澪「……耳が治ってる。それに、この耳の柄、私のカチューシャの柄だ」

猫鳴き声。

澪「ま、まさかね……」

猫の鳴き声。

終わり。

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