言ってくれないとわかんない!

言ってくれないとわかんない!

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■概要
人数:5人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
鈴莉(すずり)
翔和(とあ)
美穂(みほ)
女生徒
川田(かわだ)

■台本

鈴莉と翔和が5歳の頃。

鈴莉「バカバカバカー! 翔和なんか嫌い!」
翔和「ご、ごめん、鈴莉ちゃん……」
鈴莉「もういい!」

場面転換。
鈴莉が17歳になっている。
鈴莉がパチッと目を覚ます。

鈴莉「……夢か。随分と昔の夢だったなぁ。……あのとき、私、なんで怒ってたんだっけ?」

部屋の外から声が聞こえる。

母親の声「鈴莉―! そろそろ起きなさい。学校、遅刻するわよ」
鈴莉「はーい」

ベッドから起き上がる。

場面転換。
鈴莉と美穂が歩いている。

美穂「そういえば、鈴莉、髪切った?」
鈴莉「切ったー! さすが美穂! やっぱ、気づいた」
美穂「そりゃ、まあね。毎日見てるし、これでも私、女だからね。髪のことは気づくよ。鈴莉だって、私が髪切ったら、すぐ気づくじゃん」
鈴莉「あー、まあ、そりゃそっか」
美穂「けどさー」
鈴莉「ん?」
美穂「男子って、そういうの、気づかないよね」
鈴莉「そう! それな! ……なんで、男子ってそういうの疎いのかな?」
美穂「興味ないからじゃない?」
鈴莉「興味ないって、髪のこと? けど、いつも男子って、禿げないか気にしてるじゃん」
美穂「……禿げるのと髪切ったのとを同じにして考えないでよ……」
鈴莉「え? 違う?」

場面転換。
教室内。
ガラガラと教室に入って来る鈴莉。

鈴莉「おはよー」
女生徒「おはよー」

鈴莉が席に座る。

翔和「鈴莉」
鈴莉「あ、翔和、おはよー」
翔和「ほれ、飴」
鈴莉「飴? ……なんで?」
翔和「いらないのか?」
鈴莉「いや、いるけど……。それより……」
川田「なあ、翔和―。今日の数学だけどさ」
鈴莉「ねえ、川田くん」
川田「ん? なんだ?」
鈴莉「……私、なんか変わった気がしない?」
川田「へ? んー。えーっと……」
鈴莉「あー、もういいや」

場面転換。
鈴莉と美穂が歩いている。

鈴莉「……1人だった」
美穂「なにが?」
鈴莉「男子で、私が髪切ったことに気づいたの」
美穂「1人って……翔和くん?」
鈴莉「違う違う。あいつは、いつものように何にも言わないよ」
美穂「そっか……」
鈴莉「はあ……。やっぱり、あいつも私に興味ないってことかなぁ」
美穂「まあまあ。女の子って、髪切ったっていっても、数センチでしょ? 男子からしたら、なかなか気づかないって」
鈴莉「そうかなぁ? 毎日見てるんだから、気づかない?」
美穂「難しいんじゃないかなぁ」
鈴莉「……はあ」
美穂「いつも、気づかれないの?」
鈴莉「うん……。いつも、それらしい話を振ってみるんだけど……」

回想。

鈴莉「おはよー、翔和。私さー」
翔和「ほい、飴」
鈴莉「飴? ありがと……」

回想。

鈴莉「ねえ、翔和。昨日の私と変わったところがあります。さて、どこでしょう?」
翔和「んー。……飴やるよ」
鈴莉「ありがとー……って、誤魔化さないでよ」

回想。

鈴莉「ねえ、翔和!」
翔和「ほれ」
鈴莉「へ? ……飴?」

回想終わり。

鈴莉「……あれ?」
美穂「どうしたの?」
鈴莉「もしかして……」

場面転換。
インターフォンの音と、ドアが開く音。

翔和「ん? 鈴莉か。どうした?」
鈴莉「ねえ、あんたさ。もしかして、ずっと気づいてた?」
翔和「なにが?」
鈴莉「えっと、私の……」
翔和「髪切ったことか?」
鈴莉「そう! それ!」
翔和「んなもん、気づくだろ。毎日、顔合わせてるんだから」
鈴莉「それならなんで、可愛いとか、似合ってるとか言わないかなぁ? いつも雑に飴で済ませるってどうなの?」
翔和「お前、飴好きだろ?」
鈴莉「そ、そりゃそうだけどさ……。やっぱり、その、普通に髪切ったくらい、言ってくれてもよくない?」
翔和「……はあ。お前、覚えてないのか?」
鈴莉「なにが?」
翔和「昔さ、お前が髪切ったとき、俺、褒めたんだよ。そしたら、お前がさー」

回想。
鈴莉と翔和が5歳の頃。

鈴莉「う、うう……」

翔和がやってくる。

翔和「あ、鈴莉ちゃん、髪切ったんだね」
鈴莉「……」
翔和「似合うよ。可愛いじゃん」
鈴莉「……失敗したの」
翔和「え?」
鈴莉「切り過ぎて変になっちゃったんだよ!」
翔和「そ、そうなんだ? でも、似合ってるよ」
鈴莉「変なのが似合ってるってこと?」
翔和「あー、いや、その……」
鈴莉「バカバカバカー! 翔和なんか嫌い!」
翔和「ご、ごめん、鈴莉ちゃん……」
鈴莉「もういい!」

回想終わり。

鈴莉「あー……。あったね、そんなこと」
翔和「あれ以来、どうしていいかわかんなくなったんだよ。なんて言っていいか」
鈴莉「……それは、その……思ったこと、言ってくれればいいのに……」
翔和「言ったのに、お前、怒ったじゃねーか」
鈴莉「え? あれって、お世辞じゃなかったの?」
翔和「俺はホント、可愛いと思ったんだけどな、あの髪型」
鈴莉「……言ってくれればよかったのに」
翔和「いや、言っただろ」
鈴莉「じゃあ、今までも……」
翔和「ああ。似合ってると思ってるぞ。だから、飴あげてるんじゃねーか」
鈴莉「じゃあ、いつも、翔和は私が髪切ったことがわかってて、似合ってるって言いたかったわけ?」
翔和「……だから、そう言ってるだろ」
鈴莉「……じゃあ、次からはちゃんと言ってほしいな。似合ってるって」
翔和「……わかった」

場面転換。
数ヶ月後。
鈴莉と美穂が歩いている。

美穂「あれ? 鈴莉、帽子被ってるなんて、珍しいね」
鈴莉「え? あー、うん。ちょっとね……」

場面転換。
教室内。
ドアを開けて、鈴莉が入って来る。

鈴莉「……おはよ」
女子生徒「おはよー。あれ? どうしたの、帽子なんか被っちゃって」
鈴莉「うう……」

帽子を取る音。

女子生徒「ああ……。まあ、その……どんまい」
鈴莉「うう……」

そこに翔和がやってくる。

翔和「お? 鈴莉、髪切ったんだな。似合ってるぞ」
女子生徒「あっ……」
鈴莉「……もう! バカ!」
翔和「な、なんなんだよ……」
鈴莉「空気読んでよー!」
翔和「どうすれって言うんだよ……」

終わり。