【声劇台本】ステーション
- 2021.07.07
- ボイスドラマ(10分)
■概要
主要人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ラブストーリー?
■キャスト
希美(のぞみ)
ひかり
その他
■台本
希美(N)「私はその日――恋に落ちた」
希美が改札に走って来る。
希美「はっ! はっ! はっ!」
ピッと定期をかざして、改札を抜けていく。
アナウンス「3番線を急行列車が通過します。白線より下がってお待ちください」
電車がゴーっと音を立てて通過していく。
希美(N)「一目見たときに電流が走ったような、そんな感覚が私の体を駆け抜けていった。……たぶんそれは、一目惚れというものだったんだろう」
場面転換。
希美が改札に走って来る。
ピッと定期をかざして、改札を抜けていく。
希美「お願い! 間に合って!」
階段を駆け上がっていく希美。
目の前をゴーっと電車が通過していく。
希美「あー……。間に合わなかった」
場面転換。
学校。
希美「はあー」
机に突っ伏す希美。
ひかり「なーに、落ち込んでんのよ」
希美「あ、ひかり……。聞いてよー。今日は間に合わなかったの―」
ひかり「間に合わなかったって……。別にあんた、遅刻してなかったじゃない」
希美「違うのよー。目の前で通過しちゃってさー、お姿を見ることができなかったの」
ひかり「あー、はいはい。希美が一目惚れしたっていう、愛しのお姿が見れなかったってことか」
希美「そう! あー、もう最悪―。今日一日、ホントやる気出ない」
ひかり「……見れなくて、そんなに落ち込むなら、写真とか撮ったら? それなら、いつでも見られるんじゃない?」
希美「ダメ! 絶対ダメ! そんな隠し撮りみたいなことできないよー。それに、この目で見るってことに意味があるの!」
ひかり「あんたも変わってるよね。見るだけでいいなんてさ」
希美「届かない恋は、そんなものだよ。すぐ近くでも、見てるだけ。……この絶妙な距離感がいいんだよ」
ひかり「……ごめん。理解できない」
希美「ひかりだって、好きな人が出来れば、この気持ちわかってもらえると思う」
ひかり「いやー。さすがに見てるだけなんて、マゾっぽいのは無理だわ」
希美「近づき過ぎたら怪我をする。当たり前のことでしょ?」
ひかり「まあ、それはシャレにならないと思うけど……」
希美「ねえ、ひかり。今度、一緒に見て見ない? ひかりだって、あの凛々しい姿を見れば、イチコロだよ」
ひかり「イチコロって……。いや、止めとくよ。親友と取り合うなんて嫌だからさ」
希美「ええー……」
ひかり「けどさ。あんた、ホントにこのままでいいの?」
希美「なにが?」
ひかり「もうすぐ卒業だよ? 卒業したら、引っ越すんだからさ。そしたら、もう……」
希美「……お願い。それ以上は言わないで」
場面転換。
蛍の光が流れる。
場面転換。
希美が走って来る。
希美「お待たせ!」
ひかり「……あーあ。もう卒業か。なんか、実感湧かないよね」
希美「……」
ひかり「……さ、最後に会いに行こっか」
希美「うん……」
場面転換。
駅。
希美「……」
アナウンス「3番線に電車が参ります。白線より下がってお待ちください」
電車がやってきて、停まる。
そして、プシューとドアが開く。
ひかり「……ほら、行ってきな」
希美「う、うん……」
希美が走って行き、立ち止まる。
希美「……ずっと、ずっと好きでした。最後に……写真……撮らせてください……」
パシャと写真を撮る音。
そして、プシューとドアが閉まる音。
電車が出発する。
希美「……」
ひかり「……気が済んだ?」
希美「……う、うう……。うわーん!」
ひかりに抱き着き、大泣きする希美。
ひかり「よしよし、思い切り泣きな」
希美(N)「こうして、私の恋は終わりを告げた……」
場面転換。
希美が改札に走って来る。
希美「はっ! はっ! はっ!」
ピッと定期をかざして、改札を抜けていく。
階段を駆け上がって、駅に出る。
アナウンス「6番線に電車が参ります。白線より下がってお待ちください」
希美「はー、はー、はー。……ごめん。寝坊した……」
ひかり「あんたねえ。この電車逃したら、遅刻だったよ。入学式から遅刻なんてシャレにならないって」
希美「ごめんごめん。でも、間に合ったからいいじゃな……」
電車がやってきて停まる。
そして、プシューとドアが開く。
希美「……格好いい」
ひかり「はあっ!?」
希美「見てよ、ひかり! すごいクールなお姿! 惚れた!」
ひかり「そ、そう……」
希美「ひかりも格好いいと思わない?」
ひかり「ごめん。理解できない……って、乗らないと!」
ひかりが希美を引っ張って、電車に乗る。
希美「ふふ。うふふふふ」
ひかり「……あんたさ、そろそろ人間の男の人に興味持ったら?」
希美「ああ……これから毎日、この電車に乗って大学に通うとか、最高!」
ひかり「……うーん。やっぱり、私には鉄ちゃんの感覚は、わからないわね」
希美(N)「私はその日――恋に落ちた。こうして、私の恋は再び走り始めたのだった」
終わり。
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