【声劇台本】明かりの無い部屋の中で
- 2022.03.03
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
淳一(じゅんいち)
亮平(りょうへい)
その他
■台本
二人が歩く音。
亮平「なあ、淳一、知ってるか? あそこのマンションの話」
淳一「あそこのマンション? ……別に普通だけど、なんかあるの?」
亮平「あのマンション……出るんだってよ」
淳一「……いや、亮ちゃん、また適当なこと言ってない? そりゃ、古そうだけど、普通のマンションだよ。出るわけないって」
亮平「いやいや、本当だって。あそこのマンションの一階の、一番端っこ。やべーんだってさ」
淳一「うっそだぁ」
亮平「なら、確かめに行くか?」
淳一「え?」
亮平「なんだよ、お前、怖いのか?」
淳一「べ、別に怖くないけど」
亮平「じゃあ、今日の夜、家、抜け出せるか?」
淳一「ねえ、亮ちゃん。肝試しって、普通、夏にやるものじゃない?」
亮平「なんだよ、やっぱり怖いんじゃねーか」
淳一「だから、怖くないって!」
亮平「じゃあ、今日の夜10時に、あのマンション前の公園に集合な」
淳一「僕は全然平気だけど、亮ちゃんの家は厳しいから無理なんじゃない?」
亮平「もういいよ。怖いなら、来なくて。俺一人で行くから」
淳一「だから、怖くないって、言ってるでしょ!」
場面転換。
淳一が歩いて来る。
亮平「よお、淳一。ちゃんと来たな」
淳一「当たり前でしょ。じゃ、じゃあ、寒いし、早く行こうか」
亮平「なんだよ、足震えてるぞ。大丈夫か?」
淳一「これは怖いんじゃなくて、寒くて震えてるの!」
場面転換。
亮平と淳一が歩いてい来る。
亮平「よし、着いたな」
淳一「一番端っこって言ってたよね?」
亮平「ああ。あっち」
淳一「……一番端っこだけ、電気ついてないね」
亮平「ああ。もし怖いならここで……」
淳一「さ、早く行くよ!」
歩き出す淳一。
亮平「無理しちゃって……」
場面転換。
二人は小声でしゃべる。
淳一「ね、ねえ、亮ちゃん……」
亮平「なんだよ?」
淳一「この部屋。電気がついてないだけじゃなくて、カーテンもしてないみたいだよ」
亮平「いや、カーテンしてないんじゃなくて、上の方で千切れてるんだよ、ほら」
淳一「あ、ホントだ」
亮平「うわあ、汚い部屋だな」
淳一「いかにも、廃屋って感じだね」
亮平「こりゃ、出るな」
淳一「……よし、中も見たし、帰ろうよ」
亮平「せっかく、家を抜け出してきたんだぞ。もう少し調査を……」
ガタガタという音がする。
淳一「ひぃ!」
亮平「……っ!」
淳一「ね、ねえ、今の音、なんだろ?」
亮平「しっ! 耳をすませてみろ。ずっとカタカタいってる」
物が小さく震えている音。
淳一「ほ、ホントだ……。なにこれ、怖い」
亮平「きっと、地縛霊の仕業だぜ」
淳一「や、やめてよ……」
亮平「見ろ! あそこ、人影が!」
淳一「ひいっ!」
亮平「なーんて、冗談だよ、冗談」
淳一「ホント、やめてよ!」
亮平「いや、ごめんごめん。じゃあ、入ってみようぜ」
淳一「ええ!? 入るの? さすがにやめようよ」
亮平「せっかくここまで来たんだから、な?」
淳一「勝手に入ったら、マズイって」
亮平「じゃあ、許可を貰おうぜ」
淳一「許可?」
亮平「お邪魔しまーす。入りますよー。……な? これで大丈夫……」
男の声「ん?」
淳一「ぎゃあああああああ!」
亮平「でたーーーーーーーー!」
二人が一目散に逃げる音。
場面転換。
ドアが開く音と、淳一が家の中に入って来る音。
母親「淳一―! こんな時間に遊びに行くなんて、どういうつも……」
淳一「うわーーん! お母さん!」
母親「え? なに? どうしたの?」
場面転換。
母親「ああー。あのマンションに端のことか」
淳一「お母さん、知ってるの?」
母親「そりゃ、有名だもん」
淳一「や、やっぱりあの部屋で首を吊ったとか?」
母親「首を? なんの話?」
淳一「幽霊」
母親「……ぷっ! あはははははは」
淳一「え? なになに? どうしたの?」
母親「あそこに住んでる人、亡くなってないわよ」
淳一「ええ? でも、部屋に明かりもついてなかったよ! 住んでるなら、明かりとか付けるでしょ!」
母親「ああ、電気止められてるのよ」
淳一「じゃあ、カタカタと音がしてたのは?」
母親「寒くて震えてたんじゃないの?」
淳一「なーんだ。ビビッて損した」
母親「まあ、階段話なんてそんなもんよ」
淳一「明日、亮ちゃんを弄ってやろうっと」
場面転換。
教室内が騒がしい。
男の子1「すげー!」
亮平「だろ? 本物見えたってことは俺達霊感あるってことだ」
男の子2「いいなぁ。すごいなぁ」
ガラガラと教室のドアが開く。
淳一「おはよー……って、なに? みんな、亮ちゃんの周りに集まって」
亮平「昨日の幽霊の話してたんだよ! 二人で果敢にも幽霊と渡り合ったってさ!」
男の子1「やっぱ、亮ちゃんはすげーな!」
男の子2「ホント、違うよな」
亮平「へへへ。淳一だって、すごかったんだぜ。な?」
淳一「あー、いや……う、うん。そうだね」
男の子3「ねえ、もっと詳しく聞かせてよ!」
亮平「いいぜ。それでな……」
淳一がつぶやくように言う。
淳一「……今更、ただの貧乏な人だったなんて言えないな」
終わり。
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