【声劇台本】切り裂きジャックの伝説

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■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
奈々(なな)
ジャック
その他

■台本

奈々(N)「今、この町にはある噂が流れている。切り裂きジャック。女性ばかりを狙い、彼女たちをズタズタに切り裂くというのだ」

場面転換。

署内。

奈々「どうして、捜査しちゃダメなんですか?」

先輩「捜査をするなとは言ってない。一人でするなと言ってるんだ」

奈々「でも、手伝ってくれる人、いないんですけど」

先輩「まあ、今はもっとデカい案件があるからなぁ」

奈々「事件に大きさは関係ありません!」

先輩「……ドラマみたいなこと言うなよ。大きな事件は、被害者も多くなる。事件に優先度を設けるのは当然だろ」

奈々「……」

先輩「あと、お前、少し休んだらどうだ? 目の下にクマができてるぞ」

奈々「被害者が出ているのに、休んでいられません!」

先輩「……はあ。一日、3時間だけ。日没前まで。守れるか?」

奈々「ありがとうございます!」

先輩「ったく。俺が止めないと、お前は一晩中、捜査しそうだからな」

場面転換。

奈々が歩く音。

奈々(N)「切り裂きジャックの目的はわかっていない。なぜ、女性たちを切り裂くのか。なんのためにやっているのか。それにジャックは被害者のことを調べ上げている。つまり、計画的犯行……。犯行が行われるのは、23時から26時の間……。ブラック会社に勤めている女性が狙われている」

奈々「囮になろうと思っても、日没後の血捜査は先輩に怒られるからなぁ……。って、あ、ここね」

立ち止まる音と、インターフォンを押す音。

ガチャリとドアが開く音。

女性「先ほど、電話していただいた刑事さんですね」

奈々「はい。あの……娘さんにはお話、聞けますか?」

女性「……それが、会社を辞めて、部屋に閉じ込もってしまって」

奈々「そうですか。お母さんは娘さんから何か聞いてませんか?」

女性「それがなにも……」

奈々「そう……ですか」

女性「ただ、おかしいんです」

奈々「おかしい?」

女性「色々とネットで注文しているみたいで」

奈々「何を買っているか、わかりますか?」

女性「全部は、ちょっと……。ただ、化粧品を買っていることだけはわかってます」

奈々「化粧品を? 以前はあまり買ってなかったんですか?」

女性「はい。いつもはお店で安い物を買ってたみたいで……」

奈々「……わかりました。協力、ありがとうございました」

場面転換。

奈々が歩く音。

奈々(N)「なかなか、ジャックの情報が集まらない……。このままじゃ、また犠牲者が出てしまう。……やっぱり、私が囮になるしかない……」

場面転換。

奈々が歩く音。

奈々「……大丈夫。家に手帳は置いてあるから、今は、あくまで個人として歩いているだけ……」

後ろから足音が近づいて来る。

ピタリと奈々が立ち止まり、振り向く。

奈々「……あなたがジャックね」

ジャック「いけないわ。こんな真夜中に女の子が一人で歩くなんて」

奈々「……なっ! ジャックは女性だったの?」

ジャック「あなたのことは、この数日、ずっと見ていたけど……」

奈々「私を狙っていたのね。なぜ?」

ジャック「ダメよ! ぜんっぜんダメっ!」

奈々「ダメ? なにが?」

パシャリと写真のシャッター音。

奈々「きゃっ! な、なんで写真を……」

ジャック「ふふふふ……。あはははは!」

奈々「きゃあああああー!」

場面転換。

奈々「……こ、これが私?」

ジャック「どうかしら? あなたはこれだけの美貌の持ち主なのよ」

奈々「……」

ジャック「言っておくけれど、化粧の効果だけではないのよ。あなたの素材があってこそなの」

奈々「……」

ジャック「つまり、あなたは仕事を言い訳にして、自分を磨いていなかったのよ!」

奈々「で、でも、忙しかったから……」

ジャック「チッチッチ。今、あなたの化粧をした時間はどのくらいだった?」

奈々「じゅ、十分くらい……」

ジャック「でしょ? 仕事を10分、早く帰るだけで、磨く時間を確保できるわ」

奈々「……」

ジャック「磨けるのに磨いていない。これは美への冒涜よ!」

奈々「っ!」

ジャック「あなたは単に、仕事に逃げているだけだわ!」

奈々「……っ!」

ジャック「もう一度考えてみて。あなたにとって、仕事ってなに? あなたが人生で一番大切なものはなんなの?」

奈々「……」

奈々(N)「切り裂きジャック。仕事ばかりで周りが見えてない女性を狙い、警告を発する。そして、警告された女性は心を切り裂かれたようにショックを受けてしまう。……私もその例外じゃない。……たまった有休を使って、少しのんびりしてみよう」

終わり。

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