【フリー台本】100パーセントのパフォーマンス
- 2022.03.23
- ボイスドラマ(10分)

■概要
人数:2人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
響兵(きょうへい)
梨花(りか)
■台本
響兵(N)「俺にとって音楽は命……いや、人生そのものだ。俺は音楽によって生かされているといってもいい。というより、音楽をやるために生まれてきたんだ。だから、俺は音楽に嘘は付きたくない。そして、俺の音楽を聞いてくれる人に、100%のものを届けたい。俺にとって、妥協の音楽は命を奪われると同じことなんだ」
場面転換。
ドアが開く音。
梨花「響兵、大人しく座ってる?」
響兵「おお、梨花。どうだ? 人の入りは?」
梨花「んー。半分くらい……かな」
響兵「ってことは、三分の一ってところか」
梨花「あー、えっと、うん。まあ、そうともいうかな」
響兵「あんま、気を遣うなって。たとえ一人しかいなくても、俺が届ける音は同じだ」
梨花「……これだけは言っておくけど。響兵の音楽は、今までどのバンドよりも最高だからね。これはライブハウスの店長じゃなくて、一、音楽ファンとしての意見」
響兵「梨花には感謝してるよ。路地裏で歌ってる俺を見つけてくれてなかったら、俺は今でもあそこにいたと思う」
梨花「……あんたの中の最高の音楽を届ければ、きっとみんながあんたのことに気づいてくれるはずよ」
響兵「わかってる」
梨花「いい? 舞台の上で100パーセントの力を出すのよ」
響兵「梨花、いつも言ってるだろ。俺はいつでも100パーセントだ。どこでも、誰もいなくても、俺が音楽を奏でるときは、常に100パーセントなんだ」
梨花「うん、その心意気は買うんだけどね。けど……。まあ、いいわ。私はこれから会場の最終チェックするから、あんたは座ってるのよ」
響兵「……なあ、梨花」
梨花「いいから! 黙って座ってなさい! いいわね!」
響兵「わ、わかったよ。大人しくしてるさ」
梨花「今度こそ、約束だからね」
ドアを開けて、部屋を出ていく梨花。
響兵「……」
少しの静寂。
響兵「俺にとって、音楽は人生だ。だけど、音楽から見たら、俺なんて大勢の中の一人……。最高の音楽をいつでも、必ず出せるわけじゃない」
少しの静寂。
響兵「やっぱり、俺は……」
ギターを手に取り、軽く弾く。
響兵「アスリートだって、試合前にウォームアップをする。それはアーティストでも一緒だ」
ギターを思い切り弾き始める。
響兵「そう! これはあくまで、ウォームアップだ、いえぃ!」
段々と激しくなっていく演奏。
響兵「いやああああーーーほぉう!」
場面転換。
ドアが開き、梨花が入って来る。
梨花「響兵、大人しく……」
響兵「ふぉおおおおおおおお!!」
響兵による激しい演奏。
梨花「ちょ! ちょっ! あんた、なにやってんのよ!」
響兵「心配ない! ウォームアップだ!」
梨花「いや、あんた、汗、尋常じゃないわよ」
響兵「俺は音楽に妥協しない男。それは、ウォームアップでも同じだ! いつでも100パーセント! ふぉーーー!」
梨花「それだと、ウォームアップにならないでしょ! とにかく、止めなさい!」
場面転換。
ライブ会場。
パラパラとした拍手。
ヘロヘロになった響兵の声。
響兵「みんな……今日は……来てくれて……ありがとう……。それじゃ、一曲目……いくぞー……」
ヘロヘロのギターの音色。
梨花「……はあ。また、いつもと同じか」
響兵(N)「俺にとって音楽は人生そのものだ。だけど、音楽から見たら、俺はそうでもないらしい。未だに音楽の神は俺に頬絵ではくれていない……」
終わり。
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