女の子はちょい悪が好き
- 2023.10.23
- ボイスドラマ（10分）
■概要
人数：３人
時間：１０分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
春馬（はるま）
高山 奈美恵（たかやま なみえ）
雅史（まさし）
■台本
学校の屋上。
タバコを吸っている春馬。
春馬「すーはー！ あー、今日もいい天気だなぁ」
バタンとドアが開く音。
奈美恵「やっぱり！ またタバコ吸ってる！」
春馬「げっ！ 高山！」
奈美恵「ったく！ 毎度毎度、注意させないでよね」
春馬「……別に俺のことなんて放っておけばいいだろ」
奈美恵「あのねぇ。私、学校の生活委員の委員長なの」
春馬「知ってるよ」
奈美恵「しかも、春馬くんは私と同じクラス」
春馬「だから知ってるって」
ツカツカと歩いてきて、春馬の頬を引っ張る。
春馬「ひでででで！」
奈美恵「委員長のクラスの人間が、タバコで停学になんてなったら、私が笑いものでしょ」
春馬「は、はなへ（放せ）」
パッと手を放す奈美恵。
奈美恵「じゃあ、はい」
春馬「なんだ？」
奈美恵「なんだ、じゃない！ さっさと持ってるタバコ出す！」
春馬「ちょ、ちょっと待てよ。もう吸わないって。没収はやめてくれ」
奈美恵「吸わないなら、渡せるでしょ」
春馬「……わ、わかったよ。ほら」
奈美恵「よろしい。じゃあ、もう、吸わないようにね。あと、吸い殻、ちゃんと掃除しておきなさい。屋上だからって、油断しないように」
春馬「はいはい……」
奈美恵がドアを開けて、屋上から出て行く。
春馬「あー、くそ。買って、１本目だったのに」
ブツブツ言いながら、タバコの吸い殻を片付ける。
春馬「……あれ？ 俺、こんなに吸ったっけ？」
場面転換。
放課後の廊下。
春馬と雅史が歩いている。
春馬「ってことがあってよぉ。ったく損したぜ」
雅史「ははは。それは災難だったね」
春馬「にしても、あいつは本当に目ざといよ。俺がタバコ吸ってたら、すーぐやってくるんだぜ？」
雅史「そうなんだ？ 高山さんは結構、抜けてるって噂だけどね」
春馬「ホントか？ あいつ、エスパーなんじゃないかってくらい、嗅ぎつけてくるぞ」
雅史「タバコだけに？」
春馬「全然、うまくねーよ」
雅史「けどさ、それって春馬くんのこと、好きだからじゃないかな？」
春馬「……は？ いやいや……そんなことないだろ」
雅史「わからないよ、そんなの」
春馬「あんな固い奴が俺みたいな不良を好きになるはずねーだろ」
雅史「甘いなぁ、春馬くんは。逆だよ、逆」
春馬「どういうことだよ？」
雅史「真面目だからこそ、ちょっと悪いのに憧れるんだよ」
春馬「……そんなもんか？」
雅史「そうだよ。だって、高山さん、春馬くん以外で、注意してるの見たことないもん。それって、好きの裏返しじゃない？」
春馬「けどさ、あいつ、注意してくるの、タバコだけなんだぜ？ 喧嘩とか、遅刻とか、サボりとか、そういうのは全スルーだぞ？」
雅史「うーん。もしかしたら、タバコは本当に止めて欲しいのかもね」
春馬「え？」
雅史「ほら、タバコって体に悪いでしょ。きっと、春馬くんのこと、気遣ってるんだよ」
春馬「そ、そうかな……」
雅史「そうだよ。僕もね、止めた方がいいと思ってる」
春馬「……」
場面転換。
学校の屋上。
春馬「あー、今日もいい天気だ……」
ガチャリとドアが開く。
奈美恵「また、屋上でタバコ吸って……ない？」
春馬「よお！」
奈美恵「え？ なんで？ なんでタバコ吸ってないの？」
春馬「そりゃ、お前……やめたんだよ」
奈美恵「なんで？」
春馬「体に悪いからな」
奈美恵「……」
春馬「どうしたんだ？」
奈美恵「……なさいよ」
春馬「ん？」
奈美恵「吸いなさいよ、タバコ！」
春馬「な、なんでだよ！」
奈美恵「私が注意できないじゃない！」
そう言い残して、ドアを開いて屋上を出て行く奈美恵。
春馬「……なんなんだよ？」
場面転換。
放課後の廊下。
春馬と雅史が歩いている。
雅史「あー、それは接点がなくなっちゃうからだね」
春馬「どういうことだ？」
雅史「高山さんも言ったでしょ？ 春馬くんがタバコを吸わないと、注意ができない。注意できないってことは、春馬くんと話す機会がなくなる。だから、怒ったんだよ」
春馬「いや、普通に話しかければいいじゃん」
雅史「わかってないなぁ。女心だよ。普通の女の子が不良に話しかけるなんて、噂になっちゃうでしょ。でも、生活委員なら、注意といって話すこともできる。女の子って、そういうの気にするから」
春馬「めんどくせー」
場面転換。
学校の屋上。
タバコを吸っている春馬。
春馬「すーはー。やっぱ、美味いな」
バンとドアが開く。
奈美恵「やっぱりまた吸い始めたのね！」
春馬「お、おう……」
奈美恵「じゃあ、没収ね」
春馬「……ほらよ」
奈美恵「よろしい。じゃあ、またよろしくね」
バタンとドアを開いて屋上から出て行く奈美恵。
春馬「……んー。本当に、俺のこと、好きなのかぁ？」
場面転換。
廊下を歩く春馬と雅史。
雅史「まだ恥ずかしがってるんじゃないかな？」
春馬「そうかぁ？」
雅史「ゆっくり時間かけないと」
春馬「んー。ますます、面倒くさい……。あれ？」
雅史「どうしたの？」
春馬「財布落としたかも。屋上かな？」
雅史「取ってきなよ。待ってるから」
春馬「おう」
走り出す春馬。
場面転換。
バタンとドアを開けて、春馬が入っている。
奈美恵「……あっ！」
春馬「あれ？ 高山？ こんなところでなに……あっ！」
奈美恵「いや、これはそのあの……」
春馬「お前、まさか……」
奈美恵「……」
春馬「自分で吸うために、俺からタバコ没収してたのかよ！」
奈美恵「だ、だって、私だと、タバコ買えないから」
春馬「そういうことじゃねーだろ」
奈美恵「あ、あのさ、お金払うから、今度は私の分も買ってくれない？」
春馬「はあ……。お前の方がよっぽど悪だよ」
終わり。
