【シナリオブログ】無人島にある秩序②

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智也(N)「結局、この日は有志会のメンバーを見つけることはできかなかった。そもそも、俺たちは有志会のメンバーの名前はおろか、顔すら知らないのだ。見回るだけで、見つけられるわけがない……」

  会議室。
  智也とヨモギ餅店の店主(56)が会議をしている。
智也「場所は加太港の船着き場付近がいいと思います。狙いは観光客に絞りましょう」
店主「しかしねえ、智也くん。急に店を出しましょうと言われても、資金が……」
智也「別にお店を建てる必要はありません。出店のような屋台タイプで大丈夫です」
店主「屋台か……。なるほどなあ……」
智也「実際、友ヶ島の人気はいつまで続くかわかりませんからね。あまり費用をかけるのはリスクが高いです」
店主「しかしねえ……。屋台だと、あまり数が置けないんじゃないかい?」
智也「本店のように、土産のセットではなく、バラで売るんです。その場で食べてもらう、もしくは島に行ってから食べるように」
店主「なるほど。それなら、スペースはそれほど必要ないな」
智也「バラで売るので、少し単価を上げましょう。観光客は雰囲気で物を買うので、多少高くても気にしないことが多いです」
店主「うん。……確かに」
智也「あとは『和歌山名物よもぎ餅』という旗を用意してください。和歌山名物と付けた方が、食いつきがいいですから」
店主「いやあ、やっぱり智也くんだと話が早い。じゃあ、さっそく、屋台と旗の方を手配してみるよ」
智也「よろしくお願いします」
店主「なあ、智也くん。観光協会を辞めて、うちの商店街のアドバイザーにならないかい? 君のおかげで、随分と街の景気も良くなったよ」
智也「はは。友ヶ島のおかげですよ」
店主「友ヶ島かあ……。なんで、あんな島が人気になったのかわからないが、本当に助かってるよ。街に活気が出てきた」
智也「……こういうブームはいつ過ぎるかわかりません。人気がなくなると、一気に客は減りますから、その辺の対策が必要です」
店主「あまり考えたくないな。できれば、ずっとこの景気は続いて欲しいところだよ」
智也「……」

  観光協会事務所。
  智也が部屋に入って来る。
智也「戻りましたー」
  智也が自席まで歩く。
  隣の席では、美香がマウスの操作とキーボードを叩いている。
智也「あれ? 課長は?」
美香「外出中です」
智也「外出? なんの用事? 戻りはいつ?」
美香「(パソコンに夢中で)さあ……」
智也「……聞いておけよ」
  智也が椅子に座る。
智也「……で? 何してんだ?」
美香「ネットサーフィンです」
智也「お前、すげえな……」
美香「何がです?」
智也「よく、仕事中に堂々とネットやれるな」
美香「そう言われると照れちゃいますね。……でも、こんなの普通ですよ」
智也「褒めてねえし、普通でもねえよ」
  美香がマウスを操作する。
美香「あっ! ビンゴかも」
智也「俺、一応、嫌味を言ったんだからさ、ネットするの止めたらどうだ?」
美香「そんなことより、これ見てください」
智也「……そんなこと?」
美香「有志会の手がかり発見したかもです」
  智也がガタンと音を立てて立ち上がる。
智也「本当か!?」
美香「このサイト見てください。ボランティア募集の板なんですけど……」
智也「……友ヶ島の魅力について語り合いましょう。詳しくは下記のアドレスにメールをください。……これがどうかしたのか?」
美香「まず、詳細を載せないっておかしいと思うんですよね。だって、隠す必要、なくないですか?」
智也「……まあ、言われてみれば」
美香「本文もなんか変です。普通、ボランティア募集で、島の魅力について語り合おうなんて書きます?」
智也「まさか、お前の口から普通って言葉を聞くとは思わなかったな」
美香「一番おかしいのはですね、他にあるんですよ、ボランティア団体」
智也「確かに怪しいけど、これだけで有志会って当たりをつけるのもなぁ……」
美香「でも、他に手がかりがないなら、駄目元で調べてみるべきだと思うんですけど」
智也「うっ! お前はなんで、その鋭さを普段の仕事に生かさないんだよ」
美香「今、まさに生かしたとこですが」
智也「まあ、そうなんだけど……。じゃあ、島に行って、あのボランティアの人に話を聞いてみるか」
美香「頑張ってきてください」
智也「……お前も一緒に行くんだよ!」
美香「ええー。私はここまで調べたからいいじゃないですかー。十分、仕事しました」
智也「うるさい! いいから、来い!」

  加太港の船着き場。
  智也と美香が並んで歩いている。
美香「うう……暑いです。早く、夏、終わって欲しいですね」
智也「始まったばかりだぞ」
  耕三が船から出てきて、声をかけてくる。
耕三「おう! 御門君。この時間に港に来るなんて珍しいな。また有志会の件か?」
智也「ええ、まあ……」
耕三「そういえば、ヨモギ餅屋、この辺に店を出すんだって? さっきまで、下見に来てたよ」
智也「随分と、張り切ってるみたいですね」
耕三「景気のいい話はな、気が急いちまうもんよ。御門君も気合い入るんじゃないか?」
美香「いやー。興味ないですね」
智也「立場上、お前がその台詞を言うのはマズイだろ……」
耕三「あ、そうだ! 景気がいいと言えば、街に新しい公民館が建つって話だな」
智也「そうなんですか? そんな情報は、うちには入ってきてませんけど……」
耕三「観光名所じゃないからな。でも、ようやく街も景気が良くなって、活気付いてきたってことだ。ホント、友ヶ島様様だよ」
智也「そのためにも、有志会を何とかしないといけないですね」
耕三「そうだな。期待してるぞ!」

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