【オリジナルドラマシナリオ】神様のプレゼント⑥

【オリジナルドラマシナリオ】神様のプレゼント⑥

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〇 病院外観・駐車場(夜)

  駐車場の端で立っている隆志。

  そこに美早紀の車が入ってきて、停車する。

  車から出てきた美早紀が、隆志に駆け寄る。

美早紀「隆志くん。どうしたの? こんなところに呼び出し……」

  隆志がスタンガンを出し、美早紀に当てる。

  体を震わせて倒れる美早紀。

  美早紀のカバンを漁る隆志。

  そして、中から鍵を取り出す。

  立ち上がり、進もうとするが、一度、ピタリと立ち止まり、気絶している美早紀を悲しそうに見る。

隆志「……」

  すぐに決意した表情に戻り、病院のほうへ歩いていく。

〇 同・診察室

  薬品棚を漁る隆志。

  そして、『Mifepristone and Misoprostol』と書かれた箱を手に取る。

〇 マンション・リビング

  ソファーに座っている隆志。

  そこへ、お盆を持ってやってくる美沙。

隆志「この前は、感情的になってごめんなさい」

  美沙が隆志の目の前にコーヒーを置く。

美沙「いいのよ。私たちのこと、心配してくれて嬉しいわ」

隆志「兄さんと話し合った上で決めたんだよね?」

美沙「うん。一晩、ずっと話したのよ」

  美沙が隆志の隣に座る。

美沙「浩平さんは、不安だって言ってたけど、私、やっぱり生みたいから……」

隆志「……そっか」

美沙「そんな暗い顔しないで。何かあるって決まったわけじゃないんだから」

隆志「……俺の母さんは、俺を生む際に死んだって話はしたよね?」

美沙「う、うん。そのことがあるから、私のこと、心配してくれてるんだよね?」

隆志「父さんと母さんは、とっても仲が良かったって聞いてた」

美沙「……」

隆志「父さんは、すごく母さんのことが好きで大切で、一緒にいると幸せだったって言ってた」

美沙「……」

隆志「母さんに対しての愛が深すぎたんだろうね。母さんが死んでからの父さんは、まるで抜け殻だった。きっと、父さんの人生は母さんが死んだときに終わったんだと思う」

美沙「……」

隆志「父さんは、ずっと後悔してた。俺を産ませるんじゃなかったって」

美沙「隆志くん、それは……」

隆志「父さんは俺と向き合ってくれたことはなかった。ずっと、母さんの死だけを見てた……。最初はね、勝手だって思った。勝手に生んで、勝手に見放して、勝手に俺の人生を狂わせた……」

美沙「隆志くん……」

隆志「でも、実際に見てわかったよ。父さんには母さんが必要なんだって」

美沙「……え?」

隆志「子供がいない家庭だって、きっと幸せになれる」

美沙「……隆志くん?」

隆志「これからも、兄さんを……父さんをよろしくね」

  隆志がスタンガンを美沙に当てる。

  気絶する美沙。

  隆志がポケットから錠剤が入った袋を取り出す。

〇 隆志の家(元浩平の家)・リビング

  部屋の中央で立っている隆志が、じっと自分の手を見ている。

  その手が徐々に透明になってくる。

  そのとき、ドアが激しく叩かれる。

浩平の声「おい、隆志! いるんだろ! 開けてくれ!」

隆志「開いてるよ」

  勢いよくドアが開かれ、浩平が入ってくる。

  そして、隆志の胸ぐらをつかみ上げる。

浩平「どういうことだ?」

隆志「……(冷たい目で)」

浩平「なんで、あんなことした!?」

隆志「……」

浩平「流産したぞ。美沙さん、すごく落ち込んでる……」

隆志「よかった。うまくいって」

浩平「どうしてだ! どうして!」

隆志「兄さんが支えるんだ」

浩平「……隆志?」

隆志「兄さんは、美沙さんから多くの幸せをもらった。今度は兄さんが返す番だ」

浩平「なにを言ってる?」

隆志「兄さんにとって一番大切なのは美沙さんだ。……俺なんかよりもね」

浩平「……」

隆志「だから、今度こそ、放さないようにちゃんとつかんでおくんだ」

浩平「……」

  浩平の手を外し、浩平に背を向ける隆志。

隆志「いやあ、最初は結構迷ったんだよね。いっそ会わせないほうがいいんじゃないかってさ」

浩平「……?」

隆志「でも、実際、会ってみて思ったんだ。父さんには母さんが必要だって。きっと美沙さんと出会わなければ、ずっと独身で、ずっとつまらない人生を送るだろうって容易に想像できたよ」

浩平「お前、何言ってるんだ……?」

隆志「復讐も考えたんだ。ずっと俺を無視してきたことのさ。でも、やっぱり父さんはいいやつで……母さんは素敵な人だった」

浩平「……」

隆志「……本当はこうだったんだなって。母さんが生きてたら、こんな感じだったんだなって」

浩平「……」

隆志「ずっとこの生活が続けばなぁって思った。けどさ、そうそううまくはいかないよな」

浩平「隆志、お前……」

  振り返ると隆志は涙を浮かべている。

隆志「母さんには生きていてほしいって思ったんだ。……たとえ、俺が消えることになってもね」

  隆志が徐々に薄くなっていく。

浩平「……隆志?」

隆志「一緒に入れた、この一年半はとっても幸せだったよ。ありがとう」

浩平「隆志? おい、隆志?」

隆志「頼むから、今度は幸せになってくれよ。そうじゃないと、俺が報われない」

  隆志が笑みを浮かべ、そして消えてしまう。

浩平「隆志、隆志ー!」

〇 マンション・リビング

  欠伸しながらリビングに入ってくる浩平。

  リビングのテーブルには朝食が並んでいる。

美沙「おはよう。早く、食べないと遅刻するわよ」

浩平「うん」

  椅子に座って、ボーっとしている浩平。

美沙「まずは顔を洗ってきたら」

浩平「そうだな……」

  立ち上がる浩平。

  美沙がリビングのドアのところまで歩き、ドアを開けて叫ぶ。

美沙「隆志―、起きなさい! 遅刻するわよ」

  だが、返事がない。

美沙「もう、朝が弱いのはお父さんの血ね」

  椅子に座る美沙。

  そこに顔を洗った浩平がやってくる。

  そして、リビングのドアが開く。

  ここから、隆志(16)のナレーションが入る。

隆志(N)「俺が過去に戻ったことには意味があったんだと思う」

隆志(6)がリビングに入ってくる。

隆志「遅刻遅刻!」

隆志(N)「俺が見たかった、何事もない、普通の家族の風景」

美沙「まずはおはようでしょ」

浩平「さ、ごはん食べるぞ」

隆志「はーい」

隆志(N)「きっとこれは、神様のからのプレゼントなのかもしれない」

  三人が椅子に座る。

三人「いただきます!」

終わり

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