【シナリオブログ】無人島にある秩序③

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友ヶ島の森の中
智也と美香が歩いている。
美香「確か、この辺ですよね。この前、あのボランティアの人がいたところは」
智也「……異臭はもう、消えてるな」
美香が奥に走り、智也がついていく。
美香「うわあ。綺麗になってる」
智也「結構、時間かかっただろうな」
そのとき、乾いた破裂音がする。
女の声「きゃあっ!」
智也「悲鳴!? 行くぞ!」
智也と美香は音がした方向へと走る。
智也「どうしました!?」
智也たちが駆け付けると、そこには十代後半のカップルがいた。
女1「もう、びっくりしたじゃん!」
男1「ごめんごめん。夜にやろうって思って、持ってきてたんだよ。湿気ってないかのテストしてみた」
美香「……なんだ。花火か」
智也「ちょっと、君たち! はしゃぐのはいいけど、他の人に迷惑になるような行為は控えてね」
女1「なに? このオヤジ?」
智也「……オヤジ。まだ二十八なのに」
美香「あの年代から見たら、二十五以上は十分オヤジですよ」
智也「お前はどっちの味方なんだよ」
男1「他の人って言ってもさー。ここ、無人島じゃね? 人いないっしょ」
女1「あははは。言えてるー」
智也「……バカップル」
美香「今の子は、大体こんなノリですよ」
智也「とにかく、あまり騒がないように。あと、ゴミはちゃんと持って帰るようにね」
男1「はーい。さーせーん」
智也「(怒って)……君、本当に分かったの?」
美香「智っちさん。無駄です。行きましょう」
美香が智也の腕を掴んで、歩き出す。
智也「お、おい、腕を掴むな! 危ないって」
智也と美香が並んで歩く。
智也がピタリと立ち止まる。
智也「あ、ペットボトルだ。……さっきの奴らが捨てたのか?」
美香「違うんじゃないですかね」
智也「なんで、そう思うんだ?」
美香「だって、結構、その辺に色々落ちてますよ、ゴミ」
智也「……本当だ」
美香「きっと、一組の観光客じゃなくって、みんなが少しずつ汚していってるんじゃないですかね」
智也「……」
美香「こういうのって、一度気にし始めると、目が行っちゃいますよね」
智也「……そうだな」
再び、歩き始める智也と美香。
智也「帰ったら、ちゃんと清掃業者の提案をしてみるか。通るかわからないけど」
美香「(クスリと笑う)」
智也「なんだ?」
美香「いやあ、現金だなあって思いまして」
智也「馬鹿にしてるのか?」
美香「いえいえ。褒めたんですよ」
智也「……そうは聞こえなかったぞ」

智也(N)「今まで、ゴミ問題は懸念事項として挙げられているのを見てきた。だけど、実際、自分の目で何度も見ていると、思ったよりも深刻な状況だとわかる。立場が違えば、恐らく俺も、清掃業者を入れない市の対応に不満を爆発させていただろう」

砲台跡付近を歩く、智也と美香。
美香「この辺が砲台跡……ですか」
智也「当時の砲台がそのまま残ってるらしいな。中には爆撃されて壊れたものもあるみたいだぞ」
美香「レンガ造りの壁とか、雰囲気があっていいですね。人気になるのもわかる気がします」
智也「この辺が、アニメの世界観に似てるって話題の所だな」
美香「確かに、ファンタジーチックですね。……ただ」
智也「なんだ?」
美香「ゴミが落ちてると台無しですね」
智也「……だな」
美香「そろそろ、帰ります? 日も暮れてきましたし」
智也「結局、今回も収穫なしか……」
そのとき、どこからか、曲が大音量で流れてくる。
同時に、歓声があがる。
智也「……今度はなんだ?」
智也と美香が走り出す。

智也(N)「現場についてみると、学生らしき三人の男女が薪を集めて、たき火をしていた。その火はかなりの勢いで燃えている」

男2「ちょっ、まだキャンプファイヤーには早くね?」
男3「いいって。どうせ、すぐ暗くなんだろ」
女2「でもさ、この勢いで燃やしてたら、木とかすぐなくなっちゃうんじゃない?」
男3「木なんて、その辺にたくさんあんだから、大丈夫だって」
智也がズカズカと歩み寄る。
智也「こんな森で火を使うなんて、何考えてるんだ! すぐに消しなさい!」
男2「何、こいつ?」
男3「うぜえ、お前が消えろ」
智也「火事になったらどうするんだ? 君たち以外にも、観光客はいるんだぞ?」
男3「は? 知らねえし」
智也「……」
男2「何、睨んでんだ? コラ!」
そのとき、パシュっという音が聞こえる。
男2「いてぇ!」
続けて、数回、同じ音が響く。
男3「いてっ! いてえっ!」
女2「きゃあっ! なに!?」
森の中から、迷彩服を着た恭平と田中和樹(26)、御子柴亮介(28)が現れる。
恭平「和樹、亮介! 男二人に一斉射撃! 注意した方は撃つなよ! 僕は火を消す!」
和樹「了解!」
亮介「わかった!」
男二人に向けて、和樹と亮介がガス銃を撃ち続ける。
男3「マジでいてえって!」
男2「すいませんでした! 撃たないで!」
女2「ちょっと、止めてよ!」
和樹「早く立ち去れ! ここにとどまる限り、撃ち続ける!」
男2「お、おい! お前ら、行くぞ!」
男2と3、女2が立ち去っていく。
同時に、バケツの水で火を消す恭平。
恭平「ふう。何とか消えたか……」

智也(N)「手慣れた手つきで、バケツに入った水で火を消したのは、以前、ゴミを片付けていた、ボランティアの青年だった」

智也「……やっぱり、君が有志会の……」
恭平「え? なんで、あなたたちがここにいるんですか……?」
智也「ちょっと話を聞かせてくれないか?」
恭平「二人とも! 逃げるぞ! 観光協会の奴らだ!」
恭平、亮介、和樹が散らばって逃げる。
智也「くそ! 散らばったか! 星野! そっちを追え!」
美香「無理です」
智也「即答かよ! ……じゃあ、船着き場で待ってろ!」
美香「はーい」
智也が恭平を追う。
草木の中を走る、恭平と智也。
智也「待ってくれ! 話を聞かせてほしいだけなんだ!」
恭平「悪いですけど、捕まるわけにはいきません」
智也「どうして、あんなことをするんだ?」
恭平「あなたも見ましたよね? 観光客は好き勝手やっていきます。追い払わないと、いつか、この島はゴミの山になってしまう」
智也「……」
恭平「そんなことは絶対に許しません! 僕がこの島を守ります!」
智也「だけど、観光客のおかげで街に活気が出てきた。それは君もわかってるだろ」
恭平「そんなの一時的なものです! だから、街は島に頼らずに人を呼べる方法を考えるべきじゃないんですか?」
智也「……確かに正論だ。でも、そんなに簡単にはいかないんだ。だから、この好機を生かすべきなんだよ」
恭平「その為なら、島を汚してもいいって言うんですか!?」
智也「!」
恭介がスピードを上げ、走り去っていく。

智也(N)「咄嗟に言い返すことができなかった。それは俺の中で湧き出していた矛盾そのものだったからだろう。……そんな俺が、信念を持って行動している人間に追い付けるわけがなかった」

友ヶ島の船着き場。
智也がトボトボと歩いて来る。
美香「随分と遅かったですね」
智也「……結局、逃げられた」
美香「まあ、あっちは鍛えてるみたいだですし、仕方ないですよ」
智也「……どうしたんだ? てっきりなじられるかと思ってたんだけどな」
美香「そんなことしませんよ。元々、捕まえられると思ってなかったですし」
智也「そっちの方が凹むな……」
美香「今は逃げられても、こっちから出向けばいいと思いますよ」
智也「出向く? 出向くって言っても……」
美香「顔が割れたんですから、探す方法はいくらでもありますよ。手配書をばらまいてもいいですし」
智也「いや、手配書ってなぁ……。それに、そもそも作れないだろ手配書なんか。誰かに似顔絵でも描いてもらうのか?」
美香「その必要はありませんよ」
美香がポケットから、スマホを取り出して、操作を始める。
美香「再生っと」
再生ボタンを押すと、動画が流れる。
以下、動画の内容。
恭平「和樹、亮介! 男二人に一斉射撃! 注意した方は撃つなよ! 俺は火を消す!」
和樹「了解!」
亮介「わかった!」
男二人に向けて、和樹と亮介がガス銃を撃ち続ける。
ここで、動画の内容が終わり。
智也「……録画してたのか?」
美香「だって、課長、言ってましたよね? ビデオ回しておけって」
智也「ああ……。そんなこと言ってたな」

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