【長編シナリオ】人生オークション①
- 2018.08.04
- シナリオ本編
○ 駅前・時計台の下
桜井望(27)がポツンと立っている。
時計は『十一時三十五分』を差している。
そこに三田村裕介(28)がやってくる。
裕介「望、まだいたんだ?」
望「……連絡、なかったから」
裕介「ふーん。ま、いいや。じゃあ、行くか」
裕介が歩き出し、桜井が横に並ぶ。
桜井が手を繋ごうとしてするが、裕介が振り払う。
裕介「そういうの、なんか鬱陶しいから嫌なんだよね」
○ パソコンの画面内・オークションサイト
ハートマークのアイコンの横に『男・バレンタインのチョコを貰った。相手、クラスでも人気の女子』。現在価格の欄に『¥15000』と書かれている。その下には、音譜マークのアイコンの横に『女・彼氏との全思い出。写真有り。現在も交際中』。現在価格の欄に『¥365000』と書かれている。
その下にも延々とオークション内容が書かれている。
不意に、パソコンの電源が切れて画面が真っ暗になる。
タイトルコール「人生オークション」
○ パチンコ屋
裕介がパチンコをしていて、画面上でリーチがかかる。
裕介「お、お、お! 来た来た来たー!」
○ 街中・公園横の通り
肩を落として歩く裕介の横には、青柳敏也(28)と佐藤武史(28)が歩く。
敏也「バッカ。裕介、あれって嵌る演出なんだって。なのに五万もぶっこむし」
裕介「……」
武史「飯、食ってかない?」
武史が、前方にある牛丼屋を指差す。
牛丼屋の横には公園とベンチがあり、木原順子(72)が座っている。
敏也「またか。武史、ホントあそこ好きだな」
裕介がポケットから財布を出して中身を見る。
裕介「……金無いからパス」
敏也「俺と武史は勝ったし、奢ってやるって」
裕介「マジで? やった!」
○ 牛丼屋
裕介たち三人が店内に入ってくる。
食券機の前に並ぶ裕介たち。
武史が財布を見て。
武史「あ、万札しかない。敏也。立て替えてくれない? 明日返すからさ」
敏也「トイチな」
敏也が千円札二枚を食券機に入れる。
武史「トイチって十日で一割だぞ。明日返すなら、利子無いだろ」
敏也が並盛の牛丼のボタンを押す。
敏也「げっ! そうなの? ぼったくり失敗」
裕介が特盛の牛丼と卵のボタンを押す。
敏也「ちょ、裕介、お前、奢ってもらうのに特盛とか、なくねぇ?」
裕介「奢りだからこそ、だ!」
武史が大盛の牛丼のボタンを押す。
敏也「ホント、ふてぶてしい奴だな……」
三人がテーブル席に座り、店員が水を置き、食券を持って行く。
その時、若い男が綾部美沙(21)の手を引っ張り、無理やり店内に入ってくる。
男「ほら、ここよく一緒に飯食っただろ!」
美沙「離して! 知らないって言ってるでしょ!」
男「馬鹿言うなよ。何回も一緒に来てるだろ!」
美沙「あんたとなんか来てない。っていうか、誰? ナンパ? だとしたら、下手過ぎ!」
美沙が男の手を振り払って店を出る。
男「美沙っ! 待ってくれって!」
男も店を出て行く。
武史「……喧嘩かな?」
敏也「にしては、なんかおかしくね?」
裕介「女の方が記憶喪失っぽい感じ、だよな」
敏也「どっちにしても、ありゃ、終わりだな」
武史「終わりって言えば、裕介。望ちゃんからは連絡とか全然ないの?」
裕介「……」
敏也「あんなに邪険にしてたのにな。別れて初めて好きって気付いたってやつ?」
裕介「うるせえ……」
店員が注文した牛丼を持ってくる。
敏也「よし、食べよーぜ。腹減った」
敏也が牛丼をがっつき始めると、二人も牛丼を食べ始める。
敏也「なあ、お前ら、バイト休み取れない? どっか、温泉でも行かね?」
武史「一週間前くらいに言えば、休みは貰えると思う。いつにする?」
裕介「……ごめん。俺、この前、バイト辞めたばっかで、金無い……」
敏也「は? お前、また辞めたの? 今年で何回目だよ」
裕介「だってさ、あそこ、店長は厳しくてうざいし、他のバイト連中も妙に絡んできたりして面倒くさかったんだよ」
敏也「そんな理由で辞めるなよ。……けどさ、逆に言うと暇はあるってことだよな? 金さえあれば、行けるってことだろ?」
裕介「奢ってくれるのか?」
敏也「お前、人生舐めてるな」
武史「なんか、いらないもの売れば? 最近はネットで色々なもの売れるらしいよ」
裕介「売る?」
敏也「そうそう。ネットオークションなら、結構くだらないものとかでも、高値で売れたりするんだってよ」
裕介「オークションか……」
○ 裕介のアパート・部屋
パソコンに向かって操作している裕介。
机の横には、桜井と裕介が一緒に微笑んでいる写真が飾られている。
裕介「オークションって、これか……」
○ パソコンの画面・オークションサイト
様々な品が出展されている。
○ 裕介のアパート・部屋
裕介「ホント、いろんなのあるんだな。うわっ! こんなくだらねーもん、十万で買うやついるのかよ。へー。すごいな」
パソコンを操作し続ける裕介。
○ パソコンの画面・オークションサイト
画面上でマウスカーソルが動き、『カテゴリ』の方へと進む。
様々なカテゴリがある中、『思い出』という項目の部分でカーソルが止まる。
○ 裕介のアパート・部屋
裕介「……思い出?」
○ パソコンの画面・オークションサイト
音譜マークの横に『男・恩師との思い出全部・恩師は女性』。価格の欄には『¥300000』と書かれている。
その下にはハートマークの横に『男・不倫の思い出(現在も交際中)。写真有り』。価格の欄には『¥505000』と書かれている。
その下にも様々な出展の内容が書かれている。
○ 裕介のアパート・部屋
裕介「なんだこれ? 思い出を売る? 馬鹿馬鹿しい。……けど、結構高く売れるな」
○ パソコンの画面・オークションサイト
契約について、長々と説明文が書かれているが、直ぐに『承認』のボタンを押す。
出展用の画面が表示される。
必要項目が埋められていく。
性別は男、マークは音譜、内容は小学校の思い出、と入力される。
決定ボタンを押すと『思い出を売ることに関して起こる問題は、弊社は一切責任を負いません』とポップアップが出るが、それもすぐに『OK』のボタンが押される。
○ 裕介のアパートの外観(朝)
スズメが屋根から飛んでいく。
○ 同・裕介の部屋内
ベッドから起きてくる裕介。
すぐにパソコンを起動させる。
裕介「……売れてるかな?」
○ パソコンの画面・オークションサイト
裕介が出展した、『小学校の思い出』の欄が、『¥350000』と表示されている。
その下に、『確定』、『取消』というボタンが並んでいる。
○ 同・裕介の部屋内
裕介「マジで! 三十五万!? うっそ! すげー! 売る売る! すぐ売る!」
○ パソコンの画面・オークションサイト
『確定』ボタンが押される。
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