【シナリオブログ】人生オークション②

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○  同・裕介の部屋内
  ベッドで寝ている裕介。
  ベッドの横には小さな段ボールがある。
  インターフォンが鳴り、起きて玄関に出ていく裕介。
配達員「オークションの者です。出展品を回収しに来ました」
裕介「ああ、ちょっと待ってください」
  裕介がベッドの横の段ボールを持って、配達員に渡す。
配達員「(受け取って)思い出の品はこれで全部ですか?」
裕介「はい。紛失してるのも多いけど、手元にあるのは、これで全部です」
配達員「分かりました。では、最後に右手を出してもらえますか」
裕介「え? あ、はい」
  裕介が右手を出すと、配達員が腰に付いているバーコードリーダーのようなもので、ピッと裕介の右手をスキャンする。
配達員「毎度ありがとうございます。それでは、これが代金になります」
  配達員が裕介に封筒を渡し、出て行く。
  裕介が封筒の中身を見る。中には三十五万が入っている。
裕介「すげー! マジで三十五万入ってる!」
  裕介が携帯で電話をかけ始める。
裕介「敏也! 今日暇か? 武史も呼んで遊ぶぞ! ……バイト? 休め休め! 今日は全部、俺の奢りだから!」

○  高級焼肉店
  裕介、敏也、武史が焼き肉を食べて、お酒を飲んでいる。肉は全て特上。

○  カラオケ屋・ビップルーム
  三人が酔っぱらいながら歌っている。
  テーブルには料理とお酒が置いてある。

○  キャバクラ
  女性囲まれている三人。
  裕介が伝票を渡され、財布からお金を取り出そうとするが、顔をしかめる。
裕介「すまん、敏也。ちょっと足んないから、出してくれる?」

○  裕介のアパート・部屋内
 裕介がパソコンに向かっている。

○  パソコンの画面・オークションサイト
  出展画面には、『男・中学校の修学旅行の思い出全部』、『男・高校の思い出全部』と入力されている。

○  同・部屋内
裕介「えーと、他に売れそうな思い出……」
  裕介がチラリと桜井の写真を見る。
  そして、パソコンの画面を見る。

○  パソコンの画面・オークションサイト
  『男・恋人との思い出・現在は別れている・写真有り』と入力されるが、すぐに削除される。

○ 同・部屋内
  頭を抱えている裕介。
  と、その時、携帯が鳴る。
  携帯には『親』と表示されている。
裕介「(出て)なに?」
裕介の母「ちょっと、裕介! しばらく連絡寄越さないで、どういうつもりなの?」
裕介「(鬱陶しそうに)忙しくて……」
裕介の母「就職活動はどうなの?」
裕介「やってるって」
裕介の母「そんなこと言って、もう五年くらいになるじゃない」
裕介「……」
裕介の母「そうそう。来月から、仕送り止めるからね」
裕介「は? なんでだよ!」
裕介の母「どうせ、ロクに就職活動しないで、あの子らと遊んでばっかりなんでしょ。縁切った方がいいわよ。大体、大学中退したのだって、あの子たちの……」
  裕介が電話を切り、電源も落とす。
  チラリと、桜井との写真が目に入る。
桜井の声「裕くん! 遊んでばっかりじゃダメだよ! このままだと留年しちゃうよ」
  パタンと写真を伏せる。
  再び、パソコンに向かう。

○ パソコンの画面・オークションサイト
  『男・家族との思い出』と入力される。

○  街中・公園横の通り
  裕介が不機嫌そうな顔をして、パチンコ屋から出てくる。
  ポケットから携帯を取り出して、掛ける。
裕介「敏也? これから出て来れねぇ? また、全部奢るからさ」
敏也の声「悪い。俺、これから面接あるんだ」
裕介「面接? バイト変えるの?」
敏也の声「いや、正社」
裕介「は? なにそれ!」
敏也の声「ほら、俺も結構、いい年だしさ。そろそろ就職しておかないと、ヤバいと思ってさ。色々会社受けてんだよ」
裕介「ふざけんなよ! なんで、教えてくれねーんだよ」
敏也の声「ライバルは一人でも少ない方がいいじゃん。ってことですまんな。受かったら、お祝いってことで奢ってくれよな」
  裕介が通話を切る。
  ふと顔を上げると牛丼屋がある。
  その店の、横の公園のベンチには木原が座っている。
  裕介が店に入っていく。

○  裕介のアパート・部屋
  ゲームをしている裕介。
  時計を見ると昼の一時。
  欠伸をしてテレビを消し、立ち上がる。

○  街中・公園横の通り
  裕介が牛丼の持ち帰りの袋を持って、牛丼屋から出てくる。
  ちょうど、公園のベンチに座っている木原の横顔が目に入る。
裕介「……」
  裕介の携帯が鳴り、電話に出る。
敏也の声「裕介、今日の夜って暇だよな? 約束通り、奢ってくれ」
裕介「約束?」
敏也の声「ほら、俺が就職できたら奢ってくれるって言ってただろ? この前の会社、受かったんだよ!」
裕介「奢るなんて言ってないぞ」
敏也の声「まあまあ、んなこと言わないでさ! 武史も呼んで、俺を祝ってくれって!」
  電話が切れる。
裕介「……なんだよ、あいつ」
  ベンチに座っている木原がチラリと裕介の方を見る。

○  焼肉屋
  裕介、武史、敏也がビールで乾杯している。
裕介・武史・敏也「かんぱーい!」
  三人が一斉にビールを飲み干す。
武史「敏也が社会人一番乗りかー」
裕介「お前、昔っからそうだよな」
敏也「なにが?」
  敏也が肉を焼き始める。
裕介「抜け駆け。大学だってお前だけ、普通に卒業したしさ」
敏也「また、その話かよ」
武史「でもさ、裕介は途中で止めて本当に良かったのか? 大学」
裕介「……また、その話か」
敏也「はいはい。暗い話は終わり! せっかくの祝いの席なんだから。お前らはなんか、良い話題ないのか?」
武史「あ、俺も職、決まりそう」
敏也「マジで? やったなっ!」
裕介「……暗い話だよ。それ」
敏也「お前はいっつもひがんでばっかだな」
武史「裕介は就活とかしてないの?」
裕介「大学中退だと、どこも雇ってくんねえんだって」
敏也「いつもそう言うけど、探してないだけだろ」
裕介「うるさいなぁ……。望みたいなこと言うなよ」
武史「あ、桜井さんと寄り戻したの?」
裕介「……」
敏也「お前、自爆してさらに暗くなるなよ。はいはい。もう、この手の話は終わり! さ、肉食おうぜ!」
  敏也が肉を頬張る。
裕介「……」

○  ハローワーク
  裕介がハローワークから出てくる。
  その手には求人情報誌がある。
  歩きながら、パラパラと本をめくる。
  『条件:大卒以上』というのが目に入り、本を地面に叩きつける。

○  面接室1
  面接官の男が、裕介の履歴書を見ている。
  その表情は険しい。
  面接官の正面には背広姿の裕介が俯いている。

○  面接室2
  面接官の男が、裕介の履歴書を見ている。
面接官「……中退かぁ」
裕介「……」
  俯く裕介。

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