【シナリオ】王様の憂鬱

【シナリオ】王様の憂鬱

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バロット(N)「王。それは一国の主であり、国民全ての命を預かる重要な役職だ。私の采配一つで、国民は幸せにも不幸にもなっていく。王という冠には、全国民の命が乗っているのだ」

  コネリアが歩いて来る。

コネリア「バロット王、サイロットの森の奥で、オークを見かけたという情報が入ってきています」

バロット「……またか。兵長に手練れの者を十名ほど連れて、半日調査するように言っておいてくれ」

コネリア「十名も? 些か、大げさではありませんか? ただの噂ですので、下級兵を二人程度、調査に回すでよいかと」

バロット「(ため息をついて)まあ、十中八九、見間違いか何かだろうな」

コネリア「では……」

バロット「だがな、コネリア。もし、本当だった場合、どうする?」

コネリア「……」

バロット「オークは群れを成す魔物だ。一体見かければ、十体はいると言われる。下級兵2人が遭遇すれば、まずは生きては帰れまい」

コネリア「しかし、兵長が十名を連れてとなると、食料や特別手当を出さなければなりません」

バロット「わかっておる。だが、下級兵が死んだ場合、費用はその比ではない。それに、下級と言え、重要な戦力だ。簡単に失うわけにはいかぬ」

コネリア「はっ! 申し訳ありません。些か、口が過ぎました」

バロット「いや、お前には感謝している。これからも忌憚のない意見を頼む」

コネリア「はっ!」

  コネリアが去っていく。

バロット(N)「玉座に座る。普通の男ならば、誰でも一度は憧れるものだろう。私も、普通の家に生まれたのならば、もちろん、憧れていたはずだ。だが、実際はそんなにいいものではない。日々、選択の連続。間違えば、国に甚大な損失を招いてしまう。野心がある者なら、国を大きくしたい、もっと豊かな国にしたいなどと考えるだろうが、私は、どちらかというと無難に過ごしたいという、なんとも肝が小さい人間なのだ」

  コネリアが部屋に入ってくる。

コネリア「バロット王、明日、サイラスの息子が十六を迎えるとのことで、母親が挨拶をさせていただきたいと申し出がありました」

バロット「勇者サイラスの息子か……。サイラスが死んで、もう五年。あやつが抜けた穴は未だに埋まっていない……」

コネリア「惜しい男を亡くしました……」

バロット「サイラスの息子の意思は、変わらないのか?」

コネリア「はい。何度も説得しましたが、父親の意思を継ぎ、旅に出ると」

バロット「もう少し、国で経験を積ませてからでよいのではないのか? 十六で旅に出るなど、早すぎる」

コネリア「ですが、サイラスは十五で既に、旅に出て、戦果をあげておりました」

バロット「それはそうだが……。あの才能を受け継ぐ者を失うのは、国にとって大きな損失だぞ」

コネリア「十分に準備をさせてから出立させましょう。特別予算で資金を捻出させて、最高の装備を持たせ、優秀な傭兵をつけましょう。そして、十万ゴールドほど持たせるということでいかがでしょうか?」

バロット「そうだな。経験を積ませる意味で、旅に出させるとしよう。成長して帰ってきてれれば、十分元はとれるだろう」

コネリア「承知しました。では、すぐに特別予算の申請を行います」

バロット「……サイラスの息子には、くれぐれも魔王を倒そうなどと考えるなと伝えておいてくれ。つまらん欲を出すと、すべてが水の泡となるからな」

コネリア「サイラスの息子です。才能が開花すれば、あのサイラスを超える人材になるかもしれません。そうなれば、魔王を打ち倒す可能性もあるかと……。成長を見守ってから判断を下すのでよいのではないのですか?」

バロット「いかん。魔王を倒すなど、夢物語だ。そんな無謀の賭けで、重要な人材を失うわけにはいかん」

コネリア「はっ、承知しました。では、サイラスの息子につける、傭兵にはそのように伝えておきましょう」

バロット「頼んだぞ」

  コネリアが去っていく。

バロット(N)「勇者サイラスの再来と言われていた、サイラスの息子は国を挙げ、盛大に送り出した。今回のことで、大きな出費になったが、力を付けて戻ってきてくれれば、出費に上回る戦力になってくれるはずだ」

  コネリアが走ってくる。

コネリア「バロット王! サイラスの息子がギアンの火口で行方不明になったと報告がありました!」

バロット「なんだと!」

コネリア「すぐに調査隊を結成して探しに行った方がよいかと」

バロット「そうだな。すぐに捜査隊を結成してギアン火口へ向かわせるのだ」

コネリア「はっ!」

  コネリアが足早に去っていく。

バロット(N)「しかし、サイラスの息子を見つけることはできなかった。サイラスの息子は旅立って三年、各地で多くの戦果を挙げて活躍していた。国からも何かと支援をしていただけに、この出来事は落胆を隠せなかった」

  コネリアが部屋に入ってくる。

コネリア「バロット王、今、町の青年が旅立つので王に謁見を希望しています」

バロット「……またか。今月だけで、もう五人だぞ」

コネリア「勇者というのは、男の憧れですからね。サイラスの息子が各地で活躍して名を上げたことも影響してるかと」

バロット「結局、そのサイラスの息子も死んだのだぞ」

コネリア「自分なら大丈夫と思っているのでしょうね」

バロット「(ため息)なぜ、そう思えるのだろうな。大体、旅立った者の半数は一年もたたずに行方不明か、命からがら逃げかえっているのだぞ」

コネリア「その話は町で噂になるように情報を流しているのですが……」

バロット「まあ、いい。その青年を通せ。餞別の鋼の剣と一万ゴールドを用意しておけ」

コネリア「……はっ」

  コネリアが部屋から出て行く。

バロット(N)「だが、その青年も三か月で行方不明になったとのことだった。街には若い者が少なくなりつつある。さらに……」

  コネリアが部屋に入ってくる。

コネリア「バロット王、また、少年が旅立つので、王に謁見を求めております」

バロット「(ため息)わかった。餞別の鋼の剣と一万ゴールドを用意しておけ」

コネリア「恐れながら、バロット王。……そこまで用意する必要はないのではないでしょうか?」

バロット「どういうことだ?」

コネリア「どうせ、また、すぐに魔物にやられたり、行方不明になったりするのです。国からそこまで支援する必要はありません。国の予算も無限ではないのです」

バロット「確かにな。……よし、これからの選別はこんぼうと五十ゴールドにしよう」

コネリア「え? そこまで削らなくても……」

バロット「いや、そのくらいの餞別しかなくても、旅立ちたいのかを見たい」

コネリア「なるほど、過酷な状態にすることで、ふるいにかけるわけですな」

バロット「まあ、街の人間からは、王様のくせにケチ臭いなどと言われるだろうが、この際、仕方あるまい」

バロット(N)「やってきた少年はこんぼうと四十ゴールドを受け取って、本当に旅立ってしまった。予想通り、ケチ臭い王として国民からは叩かれた。驚くことに、このことは他国にも知れ渡り、ケチな王として一時期、私の名前は有名になってしまった」

  コネリアが走って部屋にやってくる。

コネリア「バロット王! あの少年がついに魔王を討伐したと報告が入りました!」

バロット「なんだと!」

バロット(N)「こんぼうと四十ゴールドを受け取って旅立ったあの少年は、見事、魔王を倒すほどに成長し、偉業を成し遂げた。そして、私の名は、勇者を輩出させた国の王として、他国に轟くことになる。(ため息)本当に、世の中はわからない。王という役職は本当に大変である」

終わり

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