【声劇台本】僕だけの花

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■概要
人数:5人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
内村 浩平(うちむら こうへい)
酒井 葵(さかい あおい)
おじさん
その他

■台本

浩平(N)「僕は何をやってもダメだ。何の才能も持ってない。きっと、僕はこの先もみんなにバカにされ続けるんだ……」

男の子1「浩平、何やってんだよ! トロくさいな」

男の子2「浩平は何をやらせても、ダメだよな」

浩平「……へへ、ごめん」

場面転換。

男の子1「えー、浩平と一緒のチームは嫌だよ。絶対負けるじゃん」

男の子2「ハンデ付ければいいんじゃない?」

浩平「……」

場面転換。

学校の教室内。教室には浩平が一人。

浩平「これと……これと……」

ガラガラっとドアが開く。

葵「あれ? 浩平君、まだ残ってたの?」

浩平「あ、酒井先生……。ごめんなさい。もう帰ります」

葵「うん、暗くならないうちに帰った方がいいかな」

浩平「はーい、すぐに片づけます」

葵「……もしかして、勉強してたとか? わからないところあるなら、教えるけど」

浩平「えへへ。勉強じゃないです」

葵「ふーん。何してたの? 随分と集中してたみたいだけど」

浩平「えへへへ……。えっと……」

葵「なーに? 先生には話せないことしてたの?」

浩平「……えっと、これ、やってました……」

浩平から本を受け取る葵。

ペラペラとページをめくる。

葵「えっと、これって……間違い探し?」

浩平「はい、こういうの好きなんです」

葵「へー、なかなか渋い趣味ね」

浩平「えへへ……」

葵「あ、違うの、別に悪いってわけじゃなくて、変わってるなって思っただけよ」

浩平「……先生、さっきと言ってることがあんまり変わらないですよ?」

葵「え? あ、そうかな?」

浩平「あははは」

ペラペラとページをめくる葵。

葵「……それにしても、この間違い探し、難しいのね。……全然、わからないんだけど」

浩平「え? そうですか? 割と簡単だったと思うんですけど……」

葵「ええ? じゃあ、これは?」

浩平「……この男の子の手に持ってる旗の線の数が違うのと、こっちの女の子のスカートの花の柄が一つ多いのと……」

葵「うわ、見つけるの、早いわね。すごい」

浩平「えへへ……。僕の唯一の特技ですから……」

葵「じゃあ、このページの間違いは?」

浩平「……ここと……ここと、ここです」

葵「すごい、すごい! 浩平くん、すごいわよ。才能あるんじゃない?」

浩平「……」

葵「あれ? どうかしたの?」

浩平「どうせなら、もっと違う才能が欲しかったです」

葵「あら、どうして?」

浩平「だって、こんなの、役にたたないですから……」

葵「そうかなぁ?」

浩平「僕、スポーツとか、勉強とかの才能の方が欲しかったです」

葵「うーん。学校の中だとそう思うかもしれないわね」

浩平「……」

葵「でも、浩平くんって、スポーツとか勉強とか好きなの?」

浩平「……嫌いです」

葵「なら、先生はよかったと思うけど」

浩平「え? どういうことですか?」

葵「嫌いなものの才能があっても、意味ないと思うわよ。どうせ、才能があってもやりたくないなら、やらないでしょ?」

浩平「えっと……そ、そう……ですね」

葵「それなら、好きなものの才能があった方が、やってて楽しいんじゃない?」

浩平「確かに、楽しいですけど、学校じゃ役に立たないですし……」

葵「まあね、学校じゃ、あんまり役に立たないスキルね」

浩平「そうですよね」

葵「でも、学校の外なら役に立つと思うわ」

浩平「……家でも、役に立ったことないですけど」

葵「浩平くん、次の土曜日に、ある場所に見学に行こうか」

浩平「……ある場所?」

場面転換。

たくさんの、ひよこの鳴き声が響く。

葵「おじさん、こんにちは」

おじさん「おう、葵ちゃん。久しぶりだな。……で、そっちの坊主かい?」

葵「はい。そうです。ほら、浩平くん、挨拶して」

浩平「あ、あの、こんにちは……」

おじさん「ははは。そんなに緊張しなくていいよ。取って食ったりしないからさ」

浩平「あの、酒井先生……。ここって?」

葵「ここはね、ひよこを鑑別するところよ」

浩平「ひよこを?」

おじさん「ひよこを見て、オスかメスかを見分けるんだよ」

浩平「へー」

おじさん「坊主。ひよこはな、肛門の形でオスかメスかを見分けるんだ。こっちがメスで……こっちがオスだ」

浩平「うん……」

おじさん「じゃあ、こっちはどっちかわかるか?」

葵「……全部同じに見えるんですけど」

おじさん「ははは。まあ、普通だとそうだな。坊主、わかるか?」

浩平「オス」

おじさん「おお、正解だ! じゃあ、こっちはどうだ?」

浩平「メス」

おじさん「こっちは?」

浩平「メス」

おじさんが浩平の頭をガシガシと撫でる。

おじさん「すげえな! 坊主、才能あるんじゃないか?」

浩平「……えへへ」

葵「どう? 浩平くん。浩平くんの才能が役に立つ場所もあるでしょ?」

浩平「う、うん」

葵「例え、学校だと役に立たないことだって、必ずその才能が役に立つ場所があるのよ。だから、自信持って、その才能を伸ばしなさい」

浩平「はい!」

おじさん「へー。葵ちゃん、先生らしいこというじゃねーか」

葵「もう、茶化さないでください」

浩平「あの、おじさん。僕、もっとやりたいです」

おじさん「ん? そうか。じゃあ、あそこにいるひよこの判別、やってみるか?」

浩平「うん!」

場面転換。

浩平「おじさん、こんにちわー」

おじさん「おう、来たな、浩平」

浩平「今日は、こっちのひよこの判別やってみるね」

おじさん「なあ、浩平。お前、本気で鑑定士、目指してみないか?」

浩平「え?」

おじさん「正直、浩平の才能を遊ばせておくのは勿体ない。お前くらい凄いやつはみたことないからな」

浩平「うん! 僕、やってみたい!」

おじさん「ははは、そうか! よし、じゃあ、特訓するぞ」

浩平「うん!」

場面転換。

15年後。

アナウンサー「5、4、3、2、1……それまで!」

カンカンカンとベルが鳴る音。

アナウンサー「さあ、どうでしょうか? 宮下崇選手は……125羽だ。坂本昭選手は……113羽。そして……内村浩平選手は……おおっと、205羽! 圧倒的だ! 優勝は内村浩平選手に決定です!」

浩平・青年(N)「役に立たないと思っていた僕の特技。でも、先生のおかげでその才能が輝ける場所を見つけることができた。僕の中に眠っていた、才能の種を花開くことができたのだ。先生やおじさんには感謝してもしきれない。だから、僕はこれからもこの花を大事に育てていくつもりだ」

終わり。

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