【ボイスドラマシナリオ】ビーストマスター

【ボイスドラマシナリオ】ビーストマスター

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■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、ギャグ

トーマ(N)「一流のビーストマスターの条件。それは、どれだけ珍しい生物を手懐けられるかだ。今や、モンスターを手懐けたくらいでは、噂にもならない。この業界は人気こそが正義だ。人気を得るためには命を張る。最近では、そんな人間も多くなってきた。まあ、俺もその一人なんだが……」

レナ「……ついにやったわ」

トーマ「ああ。長かったな……」

レナ「苦節五年……。ビーストマスターを名乗ってみたものの、人気はどん底」

トーマ「一か月のビジョンクリスタルの再生数がゼロだったこともあったな」

レナ「もちろん、そんな底辺の私たちに出資してくれるスポンサーもいない」

トーマ「収入がない俺たちが街に住めるわけもなく、森に家を作ってから四年が経過……」

レナ「でも! そんな自給自足の生活とも、これでおさらばよ!」

トーマ「ふっふっふ。これで俺たちの名は、一気に知れ渡る」

レナ「新たなトップビーストマスターの誕生よ」

トーマ「なぜなら、今回、手懐けるのは……」

トーマ・レナ「ドラゴン!」

レナ「あまりにも有名で、かつ、狂暴なドラゴンを手懐ける為に散っていったビーストマスターは数知れず」

トーマ「手懐けることは不可能とさえ言われていたドラゴン」

レナ「それを今回、手懐けさせてみせます」

トーマ「その伝説を残す、ビーストマスタの名は、トーマとレナ」

レナ「よかったら、チャンネル登録、お願いします」

トーマ「それでは、後半に乞うご期待!」

  パチンと指を鳴らすトーマ。

トーマ「まあ、煽りビジョンはこんなもんかな」

レナ「どうする? もうアップしちゃう?」

トーマ「うーん……。やっぱり、手懐けたビジョンが撮れてからの方がいいんじゃないか。ただの煽りと思われても嫌だし」

レナ「確かにね。でも、それだと最低でも一か月後くらいになるよね」

トーマ「そうだな」

レナ「あーあ、これで麦ごはん食べれると思ったのになぁ。もう、どんぐりは食べ飽きた」

トーマ「何言ってんだよ。このビジョンをアップした暁には、麦ごはんなんて目じゃないぞ。白米だって食べれるさ。それも、おかわりもできる」

レナ「お、おかわりまで……」

トーマ「こういうのはさ、一度人気が出れば、どんな内容のビジョンを上げても、それなりの再生数は稼げるはずだ」

レナ「ああー。それはあるね。この前、トップマスターが上げてた、マンドレイクを引き抜いてみた、ってビジョンが一時間で100万再生数を叩き出してたもん」

トーマ「それ知ってる。その後、マンドレイクを生でかじってみた、ってビジョンも上げてて、それが軽くフィーバーしたんだよな」

レナ「今だと1000万再生突破したって話だよね」

トーマ「1000万再生かぁ。どのくらいの収入になるんだろうな」

レナ「かなりの額になるよね。今のレートって一再生で、0.6ペルだっけ」

トーマ「有名なトップマスターなら、レートも上がるって話だぞ」

レナ「いいなぁ。普通に街に住めそう」

トーマ「いやいや、街に住めるどころか、家買えちゃうだろ。しかも、城並の」

レナ「きゃー! 夢が広がるー!」

トーマ「そりゃ、子供にも人気になるって話だよな」

レナ「この前の5歳から10歳へのアンケートで、将来、なりたい職業で勇者を抜いて一位になってたからね」

トーマ「憧れるのはわかるけど、実際、なってみると大変だよな」

レナ「普通の生活が維持できないからね。まだ遊び人の方が安定してるわ」

トーマ「遊び人かぁ。一時期、賢者にジョブチェンジするのが流行ったよな」

レナ「負け組から一気に勝ち組入りだもんね。そりゃ、人気も出るわよ」

トーマ「けど、それができるのなんて、一握りなんだよなぁ」

レナ「どのジョブもそうだけど、結局、一流になれるの何て、少数よ」

トーマ「ま、当然ちゃ、当然だけどな」

レナ「あ、そういえばさ、最近、モンスターが少なくなってきてる問題、あったじゃない」

トーマ「ああ、勇者系のジョブの人たちが嘆いてたな」

レナ「あれさ、魔王の引きこもりが原因らしいよ」

トーマ「は? 魔王なんて、元々、城に引きこもってるだろ」

レナ「そうじゃなくて、ずっと部屋に閉じこもってるんだってさ」

トーマ「……なに? 魔王も精神病になったとか?」

レナ「部屋にこもって、ずっとビジョン見てるんだって」

トーマ「ニートかよ!」

レナ「でもさあ、そんな生活してても、別に困らないっていうのが羨ましいよね」

トーマ「親の財産がハンパないからな」

レナ「定期的にモンスターからの収入もあるだろうしね」

トーマ「いいなぁ。俺も、そんな生活してーな」

レナ「大丈夫! すぐに私たちも、そんな奴らの仲間入りできるわ!」

トーマ「そうだったな!」

レナ「さっそく、様子見てこようよ」

トーマ「そうだな」

  ドアが開き、部屋にトーマとレナが入る。

トーマ「どうだ?」

レナ「うーん。まだみたい」

トーマ「どうせなら、生まれる瞬間をビジョンで撮っておいた方がいいか」

レナ「ダメだよ。そんなのアップしたらやり方、真似されるって」

トーマ「あ、そっか。危ない危ない」

レナ「でもさー、まさかドラゴンにも刷り込みがあったなんてね」

トーマ「図書館でその記述を見つけたときは興奮だったよな」

レナ「ドラゴンって、超メジャーなのに、生態とか全然わかってないもんね」

トーマ「まあ、調べるにしても命懸けだもんな」

レナ「そりゃ、誰も調べないよね」

トーマ「調べてる途中で死ぬことが多いからな」

レナ「……私たちも、苦労したもんね」

トーマ「正直、よく生きて帰ってこれたよな」

レナ「何回、トーマを囮にして逃げようと考えたか、わからないわ」

トーマ「マジで? いざとなったら、裏切る気満々だったのか」

レナ「そりゃ、命あっての物種だもん」

トーマ「思っててもいいけど、口には出すなよ」

レナ「いいじゃない。結果オーライってことで。こうして無事にドラゴンの卵を取ってこれたんだからさ」

トーマ「釈然としないけど、まあいいや」

  そのとき、卵からピシっとヒビが入る音がする。

トーマ「おおお! 卵にヒビが入ったぞ!」

レナ「ついに生まれるのね!」

  ピシピシと、どんどんヒビが入っていく。

トーマ・レナ「ごくり」

  パカっと卵が割れる音がする。

トーマ「おお!」

レナ「きたー!」

  ピヨっという鳴き声が響く。

トーマ「……」

レナ「……」

トーマ「なあ、レナ」

レナ「なに? トーマ」

トーマ「これ、ひよこに見えるんだが……」

レナ「奇遇ね。私もよ……」

  ピヨピヨと泣き声が響く。

トーマ「え? え? え? なにこれ? なんで、ドラゴンの卵からひよこ出てくんの?」

レナ「ドラゴンの巣にニワトリの卵が混じってたとか?」

トーマ「いや、どういうシチュエーションで混じるのかわからねえよ」

レナ「でも待って! 見て、ちゃんと刷り込みは成功したみたいよ!」

トーマ「……ひよこの刷り込みに成功しても意味ないだろ。てか、どうする?」

レナ「ちょっと待って、トーマ。今、私、凄いこと思いついちゃった」

トーマ「なんだ?」

レナ「これで、毎日卵、食べれるようになるわ」

トーマ「趣旨変わってね?」

トーマ(N)「こうして、俺たちの野望が潰えた……かと思われたのだが、実は意外にもそうではなかった。ただ、その話は別の機会に話そうと思う」

終わり

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