初めてのお使い

初めてのお使い

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■概要
人数:3人
時間:10分程度

■ジャンル
ボイスドラマ、現代劇

■キャスト
佐伯 真(8)小学生
母   (38) 真の母
おじさん(45) お店の店主

■台本

真(N)「僕の名前は佐伯真。今年で8歳になる。8歳といえば、もう色々と出来る年だ。友達の将太くんなんかは、一人で留守番ができるし、誠二くんは一人で電車を乗り継いでおばあちゃん家に行ったって、言ってた。だから、僕だって……僕だって……一人で買い物くらいできるんだ!」

母「あら! みりん、切れちゃった……。うーん、まあ、ちょっと足りないけどいいかな」

  トタトタと真がやってくる。

真「ねえ、お母さん、僕が買いに行ってこようか?」
母「え? いいのよ、別に。それより宿題やったの?」
真「うん、もう終わったよ。だから、買い物してくる」
母「でも……危ないわ。あ、そうだ、お母さんと一緒に行こうか?」
真「それじゃ意味ないよ! 僕、一人で行きたいの!」
母「でも……」
真「どうしてダメなの? お店、すぐそこでしょ!」
母「すぐそこって……歩いて、十五分もかかるじゃない」
真「学校のほうが遠いよ!」
母「学校はお友達と行くじゃない。でも買い物は一人でしょ」
真「前にも一人で買い物行ったもん! だから、大丈夫だよ!」
母「でもあれは……」
真「……」
母「(ため息)わかったわ。じゃあ、お願いしようかな」
真「やったぁ!」
母「その代わり、どこにも寄り道しないで、まっすぐ行って、すぐに帰ってくるのよ」
真「うん、わかってる!」
母「道路に出ちゃダメよ。絶対に歩道を歩いて行くの。約束できる?」
真「子供じゃないんだから、大丈夫だって」
母「何言ってるのよ。子供じゃない」
真「それじゃ、行ってくるね。えっと、みりんでいいんだよね?」
母「……いや、みりんはいいわ。真の好きなお菓子買ってきて」
真「なんだよ、それ。それじゃお使いにならないよ」
母「でも……みりん重いし」
真「持てるよ、それくらい」
母「そう? それじゃ、みりん、お願いしようかしら」
真「それじゃ、お金ちょうだい」
母「そうね。……じゃあ、はい、一万円」
真「こんなにいらないよ」
母「でも、足りなかったら、困るでしょ?」
真「お母さん、僕のこと馬鹿にしてる? 千円あればお釣りもらえるくらい、僕だってわかるよ!」
母「……でも、ほら、迷子になったらタクシー使うかもしれないでしょ?」
真「お母さん……」
母「ごめんなさい、そんな顔しないで。わかったわ。はい、千円。余ったら、お菓子買ってきていいからね」
真「大丈夫だよ、家にいっぱいあるんだから」

  パタパタと歩き出す真。

真「それじゃ、行ってきます」
母「行ってらっしゃい。気を付けるのよ」

  ドアを開き、真が家を出ていく。
  歩き出す真。

母「車に気を付けるのよ! 信号は赤で渡ったらだめだからね!」
真「わかってるって! もう、家でちゃんと待っててよ!」
母「……もう、わかったわよ」

  速足で歩く真。

真(N)「家のお母さんは心配し過ぎる。周りからはよく、過保護だ、なんて言われるくらいだ。意味はよくわからないけど、なんだか恥ずかしい気分になる。だから、お母さんに僕は大丈夫って見せるんだ。だから、この初めてのお使いをしっかりやらないと」

  自動ドアが開き、真が入ってくる。

おじさん「いらっしゃいませーって、おお、真くん」
真「おじさん、こんばんは。みりんください」
おじさん「お使いかい? 偉いね」
真「うん、一人できたんだよ」
おじさん「そっか。よく、お母さんが許したね」
真「説得したの」
おじさん「ははっ。真くんは難しい言葉を知ってるなぁ。えっと、みりんだったね」

  おじさんが戸棚からみりんを取って、真に渡す。

真「ありがとう。はい、お金」
おじさん「はい、千円お預かりで、643円のお返しだ」
真「ありがとう。レシートもください」
おじさん「はは、しっかりしてるね。はい」

  真がポケットにお釣りとレシートを入れる。

真「それじゃ、帰るね」
おじさん「みりんだけでいいのかい? お母さんと一緒の時はお菓子買ってくじゃないか」
真「いらない。今日は、一人だから!」
おじさん「ああ、そっか。そうだったね。じゃあ、このお菓子はおじさんからのサービスだ。一人でお使いに来たからご褒美に」
真「ありがとう。でも、いらない」
おじさん「どうして?」
真「今日はお使いだから。お使いだけして、帰るだけにするんだ」
おじさん「そっか……。偉いね。じゃあ、気を付けて帰るんだよ」
真「うん、わかった。それじゃ、さよなら」
おじさん「はい、さようなら」

  自動ドアが開き、真が出ていく。

真「よし、お使い終わり。帰ろうっと」

  家のドアが開き、真が入ってくる。

真「ただいまー」
母「お帰りなさい」
真「うわっ! びっくりした。……ずっと、玄関にいたの?」
母「え? あ、うん。そうよ。ずっと玄関で待ってたの」
真「……」
母「それより、みりん、ちゃんと買えた?」
真「うん、はい、これ」
母「すごい! ちゃんと買えたのね! 偉いわ」
真「これくらい、全然だよ……。それと、これお釣り」
母「ありがとう。ちゃんとレシートももらったのね。偉いわ」
真「ねえ、お母さん。わかったでしょ? もう、僕一人でお使いくらいできるんだからね」
母「……え? あ、うん。そうね。また頼もうかしら」
真「うん」
母「あ、そうだ。真、おじさんからのお菓子断ったの、偉かったわね。お母さん、良い息子持って、鼻が高かったわ」
真「……やっぱり」

真(N)「あーあ、一体、僕はいつになったら初めてのお使いができるんだろう……」

終わり

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