【オリジナルドラマシナリオ】神様のプレゼント⑤
- 2020.05.25
- シナリオ本編
〇 美早紀の家
テーブルの上に本を広げて勉強している隆志。
美早紀がジュースとお菓子をお盆にのせてやってくる。
隆志の前に置く。
美早紀「少し休憩したら?」
隆志「ああ、うん。そうするよ」
隆志がジュースを一口飲む。
美早紀「でも、なんで隆志はこんなマニアックな勉強してるの?」
美早紀が机の上の本を手に取って、ぱらぱらとめくる。
隆志「将来、美早紀さんと一緒に働きたいからって言ったら信じる?」
美早紀「信じない」
隆志「どうして?」
美早紀「産婦人科って言っても医者は医者よ。医者になるならまずは医大に向けて勉強するでしょ」
隆志「……」
美早紀「それなのに、勉強してるのは産婦人の方面だけ。しかも妊婦を中心に」
隆志「美早紀さんにはまだ話してなかったかもしれないけど、俺の母さん、俺を生むときに死んだんだ」
美早紀「……初耳」
隆志「ごめん。正直、このことはトラウマっていうか、俺の家族の崩壊につながったことだから、あまり人には話したくなくて……」
美早紀「そう……。詮索してごめんね」
隆志「でね、今度、姉さんが子供を産むんだ。……だから、助けたいって思ってさ」
美早紀「そっか。……でも、こんなこというのもなんだけど、お姉さんのことは医者に任せたほうがいいと思うわ。正直、その……隆志の付け焼刃な知識は返って危険よ」
隆志「うん……。わかってる。でもさ、その……やれることはやっておきたくて」
美早紀「……」
隆志「……そりゃ、家に入り浸って、ずっと勉強なんてしてたら、美早紀さん、迷惑だよね」
美早紀「ううん。そんなことないわよ」
隆志「美早紀さん、勉強教えてくれるからつい甘えちゃったかな」
美早紀「……ねえ、隆志って学校は……」
隆志「え?」
美早紀「(慌てて)な、なんでもない。それより、ピザでも食べよっか。キッチンにカタログあるはずだから持ってきてくれない?」
隆志「わかった」
隆志が立ち上がり歩いていく。
美早紀「……」
机の上の隆志の財布を手に取り、開く。
あるものを探す美早紀。
隆志の声「ないよー?」
美早紀「(ビクッと震えて)じゃあ、棚の中かも」
美早紀があるものを見つける。
それは隆志の学生証。
美早紀は携帯を取り出し、学生証をカメラで写す。
すぐに財布の中に戻して、机の上に財布を戻す。
隆志「あったよ」
隆志が戻ってくる。
美早紀「ありがと」
ぎこちなく笑う美早紀。
〇 マンション
外観。
〇 リビング
ソファーに座っている隆志。
そこにカップを二つ載せたお盆を持ってやってくる美沙。
美沙「隆志くん、ブラックでよかったんだよね?」
隆志「あ、言ってくれれば俺がやったのに。美沙さん、安静にしてないと」
美沙「あら、安静ばかりにしててもダメなのよ。少しは動かないと」
隆志「それはそうだけど……」
美沙が隆志の前にカップを置き、ソファーに座る。
美沙「それにしても、隆志くんは今日も学校、サボり?」
隆志「ははは……」
美沙「来てくれるのは嬉しいけど、そんなに心配しなくても大丈夫よ」
隆志「あのさ……本当に、順調なんだよね?」
美沙「うん。順調も順調だよ」
隆志「よかった……」
ホッとする隆志。
〇 聖将学園
外観。
看板に「聖将学園」と書かれている。
〇 同・校長室
校長と美早紀がテーブルを挟んで、向かい合って座っている。
テーブルの上には生徒の名前と顔写真が載っている本が置かれている。
〇 病院・病室
美沙がエコー検査を受けている。
〇 薬局前(夜)
隆志「お疲れさまでした」
隆志が店から出てくる。
そこに美早紀が現れる。
隆志「あれ? 美早紀さん、どうしたの?」
美早紀「……」
隆志をじっと見る。
〇 喫茶店
テーブルを挟んで向かい合っている隆志と美早紀。
隆志「そっか……バレちゃったか」
美早紀「どうして、こんな嘘付いたの?」
隆志「やっぱりさ、中退って格好悪いでしょ」
美早紀「過去に遡っても、山城隆志なんて生徒はいなかったわ」
隆志「そこまで調べたんだ」
美早紀「なにが目的なの?」
隆志「目的って……。大げさだなぁ、美早紀さんは。ただ、偽物の学生証を作っただけじゃん」
美早紀「……それにしては」
隆志「え?」
〇 聖将学園・校長室(回想)
学生証と美早紀の携帯の写真を見比べている校長。
校長「随分と精巧に作られてるみたいですね」
美早紀「……」
校長「しかし、不可解ですね」
美早紀「何がですか?」
校長「学生番号がおかしいんですよ」
美早紀「……?」
校長「いやね、ここまで精巧に作るなら、学生番号も実際にある番号か、似た番号にするはずだと思いましてね」
美早紀「はあ……」
校長「これはあまりにも、変な番号なんですよ」
回想終わり
〇 喫茶店
隆志「……美早紀さん? 美早紀さん?」
美早紀「(ハッとして)あ、ごめんなさい。ちょっと考え事してて」
隆志「それで、美早紀さんはどうしたい? 別れたいって話?」
美早紀「ううん。そうじゃなくって……。全部話してほしいの。隠してること」
隆志「……」
美早紀「他にもあるんでしょ? 隠してること」
立ち上がる隆志。
隆志「ごめん。もう少しだけ時間がほしいんだ。後から全部話すから、それまで待っててほしい」
行ってしまう隆志。
美早紀「……」
〇 マンション・リビング
ソファーにうなだれて座っている美沙。
呆然と立ち尽くしている浩平。
美沙「う、うう……ごめんなさい」
浩平「美沙さんが謝ることじゃないよ」
美沙「それでね。お医者さんは早めに判断したほうがいいって……」
浩平「……」
〇 同(昼)
ソファーに座っている浩平と美沙。
ショックを受けたように立っている隆志。
隆志「反対だ!」
浩平「……隆志」
隆志「一番大事なのは美沙さんの命だ」
美沙「隆志くん。私ね、ちょっとくらい危険でもこの子を産みたいって思うの」
隆志「ちょっとくらい? 冗談じゃない!」
浩平「隆志、落ち着いて」
隆志「なんで、兄さんはそんなに冷静なんだよ! 美沙さんの命の問題なんだぞ!」
浩平「大げさだよ。医者からは少しリスクが高いって言われただけだ」
隆志「命が危険なのは変わりないだろ!」
浩平「……隆志。お前のお母さんが出産で亡くなっているからナーバスになるのはわかる。でも、そのときとは状況は違うんじゃないのか?」
隆志「同じだよ!」
美沙「隆志くん、あのね、私、たとえ自分の命と引き換えになったとしても、この子を産みたい」
隆志「そんなの勝手だ! 親の都合を子供に押し付けるなよ!」
ズカズカと歩き、玄関から出ていく隆志。
〇 同・渡り廊下
ズカズカと歩く隆志。
隆志「こうなったら、やるしかない」
⑤終わり
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