■関連シナリオ
<西田家の受難 幼馴染の謎の行動>
■概要
人数:4人
時間:10分程度
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
中島沙良
先生
西田正志
高坂 陽菜
■台本
沙良(N)「……はあ。今日もいい天気。あ、あの雲、ハトみたいな形してる。鳥はいいよね。自由に飛び回れて。何もかも忘れて、私も大空を気軽に飛びたいな。あー、でも、私、飛行機とかダメだから、飛ぶのは嫌かも。そういえば中学のときの修学旅行は最悪だったなぁ。あの飛行機の揺れは完璧、トラウマもんだよ」
ポンと教科書で頭を叩かれる。
教師「中島。ほおづえ付いて、ボーっとしてるなよ。今年は受験なんだからな」
沙良「は、はあ……」
教師「そこは、すみませんだろ。まあ、困るのはお前だからな。希望校落ちても、先生は責任持たんぞ」
沙良「すみません。そこは責任持ってください」
教師「すみませんは、そこで使うところじゃない。……それにしても、お前はいつも何も考えないでボーっとしてるな。ある意味、先生は羨ましいよ。ある意味才能だな」
沙良「……」
沙良(N)「そう。私はよく勘違いされる。何も考えてないって。でも、それは違う。何も考えてないどころか、色々と考えてしまう。見た目で人を判断してはいけないといういい例だ。……それに先生はほおづえ付いてボーっとしていることを注意したけど、それって逆に、ほおづえ付いて外を何気なく見てられるっていうのは、ある意味、平和の証明になる。それって素晴らしいことじゃないのかな。この世界には気を抜ける暇がないほど、危険なところだってあるはずだ。……まあ、例えばどこ? って言われても知らんけど。とにかく、平和っていいことなんだ」
チャイムが鳴る。
先生「おっと、もう授業が終わりか。進まなかった分、宿題にするからな」
教室中からブーイングの嵐。
先生「お前ら……。今年、受験生なの自覚してるのか? 宿題くらい軽くこなさないでどうする……ん?」
ゴゴゴゴゴゴと大気が揺れる音。
先生「なんの音だ?」
ドーンという爆発音。
同時に教室内が阿鼻叫喚に包まれる。
先生「落ち着け! みんな落ち着くんだ!」
陽菜「先生、グランドを見てください」
先生「なんだ? ……穴? 隕石でも降ってきたのか?」
陽菜「で、でも……なんか変ですよ」
先生「なんか、穴から出てきたぞ……って、うわああああ! 化物だ!」
陽菜「なんなの、あれ……」
正志「陽菜、無事か!」
陽菜「正志!」
正志「あれは、たぶん、ゴブリンだ。何かのショックで異世界と繋がっちまったんだと思う」
先生「ご、ゴブリン? なんだ、それは?」
正志「先生、ゲームとかやらないの? 雑魚的でよく出てくる奴だよ。スライムと同じくらい有名なモンスターだ」
先生「ざ、雑魚……ってことは弱いのか。なら大丈夫だな」
正志「いや、それはあくまでゲーム内の話だよ。こういう場合は……」
陽菜「あ、正志、誰かがゴブリンに向かって行くわよ」
正志「ば、バカ!」
男の断末魔が響く。
陽菜「きゃああああ!」
正志「やっぱりな。人間に比べれば遥かに身体能力が高いんだ」
陽菜「正志……どうしよう?」
正志「戦っても、勝ち目はない。逃げるぞ」
先生「おい、勝手に動くな! ここは、落ち着いて、みんなで非難するぞ。全員、廊下に出て整列しろ!」
正志「いや、そんな時間はない」
陽菜「見て、たくさん出てきた」
正志「やっぱりな。一体なわけないか」
先生「全員、早く屋上に上がるんだ! 急げ!」
教室内が騒ぎになる。
陽菜「正志、私たちも早く屋上に行こうよ!」
正志「いや、屋上なんかに逃げたら、袋の鼠だ。非常階段から何とか外に出るぞ」
陽菜「う、うん!」
二人が走っていく。
沙良「陽菜、良かったね。正志君と二人で生き残るんだよ」
先生「中島! お前も、こんなときまでボーっとしてるんじゃない! 早く来い!」
沙良「先生、私の言った通りでしょ?」
先生「何がだ?」
沙良「ほおづえ付いて、外を見てられるのは平和の証明になるって。ほおづえ付いて外を眺められるのって、いいことなんだよ」
先生「いや、それ、お前が思ってただけで、言ってないだろ」
沙良「あ、そうだった……」
バンとドアが壊され、ゴブリンが入ってくる。
同時に教室が阿鼻叫喚に包まれる。
先生「くそ、入ってきた! 先生が囮になるから、みんなは逃げろ!」
沙良「あ、先生、それフラグ……」
先生「え?」
ドスという鈍い音が響く。
先生「ぎゃーーー!」
ドサッと倒れる先生。
沙良「やっぱり……」
沙良(N)「あー……。ゴブリンに女子高生か……。今後の展開は何となく想像つくよね……」
チャイムが鳴り響く。
先生「よし、今日はここまでだ。残った分は宿題に出すからな」
教室中からブーイングの嵐。
先生「お前ら……。今年、受験生なの自覚してるのか? 宿題くらい軽くこなさないでどうするんだ。高坂、号令」
陽菜「起―立! 礼!」
先生「……おいおい、中島。せめて最後くらいはちゃんと立って、礼をしろ」
沙良「……」
ガラガラと椅子の音を立てて立ち上がる沙良。
沙良(N)「うん。やっぱり、ほおづえ付いて外を見られるくらい平和な世界が一番いいよね」
終わり