【声劇台本】二人の夢
- 2020.12.20
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:6~8人
時間:15分
■ジャンル
ボイスドラマ、時代劇、シリアス
■キャスト
武蔵(たけぞう) 5歳
小太郎(こたろう) 7歳
宮本 武蔵(みやもと むさし)
佐々木 小次郎(ささき こじろう)
清十郎(せいじゅろう)
宝蔵院(ほうぞういん)
梅軒(ばいけん)
木下
モブ ※兼ね役
■台本
木剣で打ち合う音。
武蔵「はああ!」
小太郎「はあああ!」
武蔵の木剣が弾かれる。
武蔵「あっ!」
小太郎「てい!」
ゴンと木剣で頭を打たれる武蔵。
武蔵「痛ってー」
小太郎「ふふん。今日も俺の勝ちだな」
武蔵「ちっきしょー! なんで小太郎に勝てないんだよ」
小太郎「いやいや。武蔵(たけぞう)も結構強くなったよ。俺もかなり危なかった」
武蔵「お世辞はいいよ」
小太郎「ホントだって。それに俺の方が2歳年上なんだぞ。お前に負けてたら逆に俺がヤバいって」
武蔵「嫌だ! 俺は小太郎にも勝って、一緒に天下無双になるんだ!」
小太郎「一緒に天下無双になるのは無理だ」
武蔵「なんでだよ!?」
小太郎「えーっと、天下無双は一人しかなれないんだよ」
武蔵「そうなのか。まあ、いいや。それより、もう一回勝負だ!」
小太郎「はいはい」
場面転換。
関ヶ原の合戦。周りでは壮絶な戦いが繰り広げられている。
武蔵「これが……関ケ原」
小太郎「武蔵! ボーっとするな、死ぬぞ!」
武蔵「あ、ああ……」
小太郎「いいか。戦は乱戦に入る。手柄をあげるために、俺は向こうに向かう。……お前はどうする?」
武蔵「俺は山の方へ向かう。お前と一緒だと、全部手柄を取られそうだ」
小太郎「わかった。じゃあ、戦が終わったら、この一本杉の下で落ち合おう」
武蔵「ああ」
小太郎「よし、行くぞ!」
二人が走り出す。
場面転換。
武蔵「うおおおお!」
敵兵1「ぐあっ!」
武蔵が敵兵を斬る。
武蔵「はあ、はあ、はあ……」
敵兵2「くそ、この小僧化物か! よし、囲め! 一気にやるぞ」
敵兵3「はああ!」
武蔵「うおおお!」
場面転換。
足を引きずりながら歩く武蔵。
武蔵「はあ、はあ、はあ。あった。一本杉。小太郎はまだ来てないみたいだな……」
そこに複数の敵兵が歩いてくる。
敵兵4「ダメだ。この戦は負けだ。早く、戦場を離れよう」
武蔵が慌てて木の陰に隠れる。
武蔵「敵兵か……。相手は2人か。勝てなくはないが……って、え? あの刀は……」
武蔵が走って、敵兵の前に出る。
敵兵4「むっ! 敵か!」
武蔵「おい、その刀……。なんでてめえが持ってる?」
敵兵4「あ? これか? その辺の死体が握ってたのから貰ったんだ。どうせ、死んでたら使えないだろうからな」
武蔵「……死体? 嘘だ」
敵兵5「なんだ? 知り合いの刀だったのか? 残念だな。戦場では誰だって、すぐ死ぬ」
武蔵「うおおおお!」
敵兵4「くそ!」
場面転換。
武蔵「はあ、はあ、はあ……。小太郎……。くそ、お前が討ち死になんて……」
小太郎の刀を手に取る武蔵。
武蔵「小太郎……。お前の刀、貰うぞ。お前と一緒に俺は天下無双になってみせる。お前と共に過ごした村での日々は絶対に忘れない。今日から俺は宮本武蔵(みやもとむさし)だ。この名を天下に轟かせてやる」
場面転換。
清十郎「吉岡に喧嘩を売るとはいい度胸だ」
武蔵「……いざ、尋常に勝負!」
清十郎「はああ!」
武蔵「うおおお!」
清十郎と武蔵が斬り結ぶ。
場面転換。
宝蔵院「宮本武蔵。吉岡一門を潰したことは耳に入っている」
武蔵「宝蔵院流槍術。ぜひ、勝負してほしい」
宝蔵院「いいだろう。来い!」
武蔵「うおおお!」
武蔵が宝蔵院に向かって走る。
場面転換。
武蔵「そなたが、鎖鎌の宍戸だな?」
宍戸「宮本武蔵……。来たか。お前を斬って、俺の名をさらに轟かせよう!」
武蔵「いくぞ!」
宍戸「ふん!」
分銅を飛ばしてくる、武蔵。
武蔵「くっ!」
宍戸「くくく。この分銅からは逃げられん。貴様の間合いに入らずに、この分銅で仕留めてくれる」
武蔵「……行くしかない! うおお!」
宍戸「はあ!」
キンと、分銅を弾く武蔵。
宍戸「分銅を弾いたか、だが! 隙が大きいぞ!」
武蔵「ふん!」
武蔵がもう一つ刀を抜き、宍戸を斬る。
宍戸「ば、バカな……。二刀だと……」
宍戸が倒れる。
武蔵「……小太郎。お前の刀のおかげで勝てたぞ」
場面転換。
武蔵「……佐々木小次郎?」
木下「ええ。武蔵殿と同等……いや、小次郎殿の方が上だと噂されています」
武蔵「もし、俺が勝てば天下無双となれるのか?」
木下「疑う者はいないでしょう」
武蔵「……受けた」
木下「では、船島にて、決戦を行ってもらいます。邪魔が入らないよう、二人だけで島に入ってもらい、勝者だけが島から出られるという形です」
武蔵「承知した」
場面転換。
海辺。波の音。
武蔵「宮本武蔵だ。……って、え?」
小次郎「……お前、武蔵(たけぞう)か?」
武蔵「小太郎! お前、なんで生きてるんだよ!」
小次郎「こっちのセリフだ!」
武蔵「え? どういうことだ?」
小次郎「お前、生きてたなら、なんで一本杉の下に来なかったんだよ? ずっと待ってたんだぞ」
武蔵「いや、俺はお前が死んだと思って……ほら、この刀! 敵兵が持ってたんだ」
小次郎「ああ、その刀か。戦場でもっといい刀を見つけたから、持ち換えたんだよ」
武蔵「名前は? なんで、佐々木小次郎なんて名前を名乗ってるんだよ」
小次郎「あの後、佐々木家に世話になって、養子になったんだ。小次郎って名前は、鐘巻先生が新たな人生を送るためにってつけてくれたんだよ」
武蔵「……嘘だろ」
小次郎「お前だって、宮本武蔵って名前にしてるだろ」
武蔵「お互い、考えることは一緒だな」
小太郎「それに、夢も変わってない」
武蔵「天下無双。この夢は譲れない」
小次郎「いざ、尋常に」
武蔵「勝負!」
場面転換。
武蔵が小次郎の刀を弾く。
武蔵「勝った……」
小次郎「強くなったな」
武蔵「これで、俺が天下無双だな」
小次郎「ああ。俺に止めをさせばな」
武蔵「え?」
小次郎「昔、言っただろ。天下無双は一人だ。俺が生きている限り、お前は天下無双にはなれない」
武蔵「……わかった」
武蔵がブンと刀を振る。
小次郎「なにやってるんだよ?」
武蔵「佐々木小次郎は死んだ。今からお前はただの小太郎だ」
小次郎「なんだよそれ」
武蔵「小太郎は無名だからな。生きてたところで、誰もお前を天下無双とは言わない。つまり、天下無双は俺だけだ」
小次郎「ぷっ! あははは! わかったよ。佐々木小次郎はここで、宮本武蔵に敗れて死んだ。それでいいさ」
場面転換。
木剣で打ち合う音。
武蔵「はああ!」
小太郎「はあああ!」
武蔵の木剣が弾かれる。
武蔵「あっ!」
小太郎「てい!」
ゴンと木剣で頭を打たれる武蔵。
小太郎「ふん、天下無双の宮本武蔵の名が泣くぞ」
武蔵「くそっ! なぜだ! 結局、勝てたのって、船島の一回だけかよ……」
小太郎「ま、いいじゃねーか。世間では天下無双はお前なんだから」
武蔵「実力でも天下無双になりたいんだよ」
小太郎「それより、そろそろ完成するんだろ?」
武蔵「ああ、五輪の書か。お前のおかげでな。あれはすげー、兵法書になるぞ」
小太郎「二人で作ったからな。当然だ」
武蔵「さ、じゃあ、もう一本やるぞ」
小太郎「返り討ちにしてやるさ」
武蔵「いざ、尋常に」
小次郎「勝負!」
終わり。
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