呪いのテレビ
- 2022.07.07
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
晴翔(はると)
佳音(かのん)
悠生(ゆうせい)
■台本
悠生「じゃあ、6時に集合な」
晴翔「わかった。……あ、悠生くん、何か持ってった方がいいものあるかな?」
悠生「ん? んー。塩……とかかな」
晴翔「塩ね。わかった、持ってくよ」
悠生「じゃあ、俺はお守りとかあったら、適当に持ってくわ」
晴翔「うん。じゃあね」
悠生「おう。またあとでな」
場面転換。
カチャカチャと機械を弄っている音。
佳音「んー。ここは、こうか……?」
ガラガラとドアが開く音。
晴翔「こんにちはー」
佳音「お、晴翔か。どうしたんだ?」
晴翔「ねえ、佳音お姉ちゃん。今日はこっちで晩御飯食べるってことにしてもらっていいかな?」
佳音「ん? まあ、別にいーけど、なんか、悪だくみか?」
晴翔「悠生くんと、肝試し」
佳音「ふーん。肝試しねぇ。何が楽しいんだか」
晴翔「佳音お姉ちゃんは何やってんの?」
佳音「ビデオを直してるんだ」
晴翔「ビデオ?」
佳音「VHSって言ってな、こういうビデオテープに録画された動画を再生する機械だよ」
晴翔「へー。変わった形だね。ディスク型じゃないんだ」
佳音「まーな。昔はDVDとかブルーレイなんてなかったからな。こういうのに録画してたんだよ」
晴翔「どんな動画なの? アニメ入ってる?」
佳音「入ってたとしても、すげー、昔のだぞ」
晴翔「見たい見たい!」
佳音「……しょうがねーな。ちょうど、直ったところだし、見せてやるか」
ガチャンとカセットテープを入れて、再生ボタンを押すとガチャガチャという音がする。
晴翔「……」
佳音「……」
晴翔「何も映らないよ?」
佳音「おかしいなぁ……」
ガンとビデオを叩く音。
晴翔「叩いたら壊れちゃうよ」
佳音「いや、この時代の機械なんて、叩けば直るもんなんだ」
晴翔「ええー。ホントに?」
パッとテレビが付き、テレビから音声が聞こえてくる。
女性「だ、誰か、そこにいるの?」
晴翔「あ、ついた」
佳音「な?」
女性「きゃあーーー!」
晴翔「うわっ! ビックリした。……これ、お化けの映画?」
佳音「いや、テレビ番組だな」
晴翔「へー。テレビでこんなのやってたんだ?」
佳音「昔は心霊ブームで、こういうの、結構やってたぞ」
晴翔「それより、アニメ見せてよアニメ」
佳音「はいはい。えーっと、早送りっと」
ボタンを押すと、ガチャガチャと変な音がする。
佳音「あ、テープ噛んだ」
晴翔「え?」
ガチャガチャとビデオデッキを弄る音。
佳音「あー。ビデオテープはこんなふうに、テープが絡んじゃうんだよな」
晴翔「なにそれ? 大丈夫なの?」
佳音「……最悪、もう映像が見れなくなる」
晴翔「そっか……。もう、アニメはいいや。それより、塩ってない?」
佳音「塩?」
晴翔「肝試しに持ってくの」
佳音「キッチンの戸棚にアジシオあるから、持ってていいぞ」
晴翔「ありがと」
場面転換。
悠生「……なあ、晴翔。……この人、誰?」
晴翔「佳音お姉ちゃん。親戚なんだ」
悠生「……なんでいるんだ?」
佳音「お目付け役。小学生2人なんて、何するか分からないからな。監視だよ、監視」
悠生「えー!」
佳音「あははは。文句言うなよ。何かあったら、助けてやっからさ」
悠生「別にいらないのに」
晴翔「まあまあ。佳音お姉ちゃんには離れてきてもらうからさ。ね?」
佳音「ああ。肝試し自体は邪魔しねーよ」
悠生「……まあ、それなら……」
場面転換。
悠生と晴翔の歩く音。
晴翔「……夜の廃墟は怖いね」
悠生「ふふ。最高に怖いのはこの後だぞ」
晴翔「……何かあるの?」
悠生「この家にはな、呪われたテレビがあるって言われてるんだよ」
晴翔「呪われたテレビ?」
悠生「ああ。この家の女の人が、病気で死ぬとき、怨念がテレビの中に乗り移ったんだってさ。今でも、テレビの中に、女の人の魂が入ってるんだって」
晴翔「へー」
悠生が立ち止まる。
悠生「あ、これだ。このテレビだよ」
晴翔「……このテレビが、呪われたテレビ」
悠生「……」
晴翔「……何も起きないね」
悠生「……ま、怖い話なんて、こんなもんだよ」
晴翔が歩き出す。
悠生「お、おい、晴翔。どうした……」
バンと晴翔がテレビを叩く。
悠生「ちょちょちょ! おまっ、何やってんだよ!」
晴翔「古い機械は叩くと直るって、佳音お姉ちゃんが……」
パッとテレビが付く音と、ガチャガチャという音が響く。
幽霊「かー!」
悠生「ぎゃーーーー!」
晴翔「うわーーーー!」
悠生「たたたた、助けて―!」
悠生が走って逃げていく。
晴翔「ゆ、悠生くん、まま待って……」
幽霊「かー!」
晴翔「あーーーー!」
佳音「晴翔!? 大丈夫か!?」
晴翔「かかかか佳音お姉ちゃん、たた助けて」
佳音「どうした?」
晴翔「呪いのテレビ! テレビの中に女の人の魂が入ってるんだよ」
佳音「呪いのテレビだぁ?」
ツカツカとテレビの方へ歩いて行く。
晴翔「危ないよ」
佳音「……ぷっ! あははは!」
晴翔「佳音お姉ちゃん?」
佳音「晴翔。このシーン、見たことないか?」
女性「だ、誰か、そこにいるの?」
幽霊「かー!」
女性「きゃあーーー!」
晴翔「あっ! 佳音お姉ちゃんの家で見たやつだ。ビデオの」
佳音「そうそう。これ、ただのテレビ番組だぞ」
晴翔「で、でも、ビデオデッキっていうのがないよ?」
佳音「ああ。これ、テレビデオってやつだ。テレビとビデオが合体してるんだよ」
晴翔「じゃ、じゃあ、テレビの中に女の人の魂が入ってるわけじゃないの?」
佳音「当たり前だ。テレビなんかに、人間の魂なんか入るかよ」
晴翔「あー、ビックリした」
佳音「ま、怪談の招待なんて、こんなもんだろ」
晴翔「……あれ? でも、なんで、テレビがついたのかな?」
佳音「ん? どういうことだ?」
晴翔「コンセント抜けてるから。電気、どこから取ってるのかなって」
佳音「……」
晴翔「……」
佳音「……晴翔」
晴翔「なに?」
佳音「逃げるぞ!」
佳音が走り出す。
晴翔「あっ! 佳音お姉ちゃん、待ってよー!」
晴翔も走り出す。
終わり。