【声劇台本】青春
- 2020.12.30
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
一翔(かずと)
良子(りょうこ)
辰徳(たつのり)
■台本
一翔、良子、辰徳が自転車を漕いでいる。
一翔「良子、遅いぞ!」
良子「あんたが早いのよ! 辰徳も何とか言ってよ」
辰徳「一翔、もう少しスピード落とさない? 危ないよ」
一翔「何言ってるんだよ! 少しでも早く着かないといけないんだから、日が暮れたら終わりだぞ」
良子「そ、そりゃそうだけどさー。って、もう! スピード上げることないでしょ!」
三人の自転車が猛スピードで進んでいく。
場面転換。
山奥の小さな滝の前。
一翔「……えっと、地図によると……ここだよな?」
良子「この辺で滝っていったら、ここしかないじゃない」
辰徳「……なんか思ってたのと違うね」
一翔「ま、まあ、お宝の隠し場所なんて、そんなもんだよ」
良子「で、どうすんの?」
一翔「決まってんだろ。目の前にお宝だぞ」
じゃぶじゃぶと水の中に入ってく。
良子「ええー。靴ごと入るの? 帰りとかどうするのよ」
一翔「買えばいいんだよ!」
良子「……ホント、一翔ってノー天気よね」
辰徳「良子ちゃんは、ここで見ててよ。僕たちが探すからさ。あ、僕の靴見ててね」
辰徳が靴を脱ぎ、水の中に入っていく。
良子「ちょ、ちょっと! 私も行くわよ!」
良子が靴を脱ぎ、水の中に入っていく。
一翔「なんだよ、結局、来るじゃんか」
良子「見つける瞬間は私も見たいじゃない」
辰徳「ねえ、やっぱり滝の裏とかかな?」
一翔「えっと……」
ガサガサと紙を取り出してみる。
一翔「うーん。バツ印がついてるのはこの辺だな。けど、正確なところまではわからないぞ」
良子「どれどれ? あ、ホントだ」
辰徳「なんか、他にヒントとかないのかな? だってさ、ちゃんとした場所がわからないなら、この紙を残す意味ないと思うんだよね」
良子「確かにね」
一翔「けど、地図以外には何も書いてないぞ」
辰徳「あ、裏になにか書いてあるよ?」
一翔「え? あ、ホントだ」
良子「なんて書いてあるの?」
一翔「赤って漢字と、三本の線が書いてあるな」
良子「長い線ね」
辰徳「それが最後らへんで全部繋がってるね」
一翔「全く意味わかんねーな」
辰徳「どうしよう?」
一翔「ここまで来て諦められるかよ。この辺にあるってことはわかってるんだから、適当に色々探してみようぜ」
良子「ま、しょうがないか」
辰徳「そうだね」
場面転換。
良子が地面にドサッと座る。
良子「もう限界! 疲れた」
辰徳「僕も……」
一翔「なんだよ、二人とも情けないな」
良子「ねえ、もうそろそろ帰らないと、暗くなっちゃうよ」
辰徳「そうだね。帰りも考えるとそろそろ出ないとだね」
一翔「……もう少しだけ探したい」
良子「ええー。あるかどうかもわからないものを、これ以上探せないわよ」
一翔「……良子は休んでていいよ。俺が一人で探すから」
辰徳「ねえ、一翔。今回、すごく気合入ってるけど、何かあったの?」
良子「そうだよね。この場所、ちょっと遠いから止めようって言ったのに、強引に決めたしさ」
一翔「……」
辰徳「何かあったの?」
一翔「……最後の休みだからさ」
良子「え? 最後? なんの?」
辰徳「……小学校、最後のってこと?」
一翔「そう。俺たちもうすぐ中学生になるじゃん」
良子「まあ、そうだね」
一翔「中学生になったら……この、探検部だってなくなるだろ?」
辰徳「でも、僕たち三人とも同じ中学だよ? 中学校でも作ればいいんじゃない? 探検部」
良子「そうだよ」
一翔「……兄ちゃんがさ。言ってたんだ。中学になったら、友達も変わって、小学のときの友達と遊ばなくなったって」
良子「……」
辰徳「考え過ぎだよ。僕たちは違うって」
一翔「そうか? 良子。お前、俺たちだけじゃなくて女子の友達とも遊ぶことが多くなってるだろ?」
良子「……う、うん」
一翔「別にそれが悪いって言ってるわけじゃない。てか、俺だって、女の子と遊んでること、からかわれることあるからさ」
辰徳「……」
一翔「きっと、中学になったら、こんなことできなくなる。だから、今回が……今日が最後だから、ちゃんとやりたんだ」
良子「はあ……。わかったわよ」
辰徳「うん。もうひと頑張りしよう」
一翔「って言っても、完全に暗くなる前にはここから出よう」
良子「……そうね」
辰徳「……あ!」
一翔「どうした、辰徳?」
辰徳「見て! あの木の影! 滝の水に夕日が跳ね返って、三つの影になってる」
一翔「あ……。影が重なってる……」
良子「紙の裏に書いてあるのに、そっくりだね」
一翔「あそこら辺を掘ってみよう!」
場面転換。
スコップで土を掘る音。
カツンと何かが当たる音。
一翔「あ、あった!」
良子「ホントだ!」
辰徳「……すごい」
一翔「この箱……何が入ってるんだろ?」
箱を開ける一翔。
一翔「……なんだこれ? 人形とおもちゃ?」
良子「これ、何かのカードかな?」
辰徳「……わかった。これ、タイムカプセルって奴だと思う」
一翔「タイムカプセル?」
辰徳「今の宝物を埋めておいて、大人になったら掘り返すってやつだよ」
良子「まあ、宝物なんて埋まってないか」
一翔「……ある意味、宝物だけどな」
辰徳「そうだね。でも、これは僕たちの宝物じゃない。元に戻そう」
一翔「そうだな」
一翔(N)「こうして、俺たちの、最後の春休みは終わった。俺たちの青春は終わったと、そのとき思っていた」
コンコンとドアがノックされる。
良子「あなた、辰徳さん、待ってるわよ」
一翔「お、今行く」
良子「にしても、ホント呆れるわよね」
一翔「なにがだ?」
良子「もうアラサーになるっていうのに、休みになったらお宝探しだもん。小学校の頃から何も変わらないなって」
一翔「そうだな……。けどさ、今回は埋蔵金だぞ? 休みを費やす価値はあるさ」
良子「まあ、私は旅行気分だけどね」
一翔「よし、じゃあ、行くぞ!」
一翔(N)「どうやら、俺たちの青春はまだまだ終わることはないようだ」
終わり。
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