【声劇台本】本日は晴天なり
- 2021.01.29
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:2人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、近未来、シリアス
■キャスト
リョウ
クリス
■台本
リョウ(N)「宇宙デブリ。つまりは宇宙空間に漂うゴミのことだ。昔の人が地球から宇宙に上がる際のロケットの部品だとか、壊れた人工衛星とか、とにかく地球の周りにはいろんなゴミが漂っている。それを除去していくのが俺たちの仕事だ」
ザザッと通信音が響く。
クリス「リョウ。RXのポイント78の残骸を取り除いたら、今日の作業は終わりましょう」
リョウ「了解だ、クリス。すぐに終わらせるからコーヒーを淹れておいてくれ」
クリス「はあ……。私はあなたの家政婦じゃないのよ」
リョウ「まあ、そう、固いこというなよ」
クリス「はいはい。すぐに戻ってきなさいよ」
リョウ「ああ」
作業用ポットを操作するリョウ。
ピピっとアラームが鳴る。
リョウ「おっと、RXはこの辺……って、おいおい、なんだこりゃ?」
通信ボタンを押すリョウ。
リョウ「クリス、すまん。少し時間がかかりそうだ」
クリス「どうしたの?」
リョウ「見たことのないものを見つけた。ロケットの部品……っていうより、ロケットそのもの……か? いや、それにしちゃ小さいか」
クリス「映像を撮って送ってくれる?」
リョウ「おう」
作業用ポットを操作して、飛び回るリョウ。
リョウ「今、撮りながら送信してるけど、どうだ?」
クリス「ええ。届いてるわ。すぐに解析……って、嘘でしょ……」
リョウ「どうした?」
クリス「……これ、核よ」
リョウ「かく?」
クリス「核ミサイル。どっかの国が隠して作ってたのを見つからないように宇宙に捨てたのね」
リョウ「危険なものなのか?」
クリス「爆発すれば、その辺一体が一瞬で綺麗になるわね。もちろん、あなたも」
リョウ「……どうする? とりあえず、安全な場所へ移動しておくか?」
クリス「いえ、そのままにしておいて。大丈夫だと思うけど、刺激して爆発したら洒落にならないわ」
リョウ「了解。じゃあ、一旦、戻る」
場面転換。
宇宙ステーションの一室。
コーヒーを啜るリョウ。
リョウ「ふう、仕事終わりのコーヒーは美味いな」
クリス「まったく、そんな苦い飲み物のなにがいいんだか」
リョウ「そう言わずに飲んでみろって、癖になるぜ……って、ヤバ! もうこんな時間だ! クリス、地球と通信を繋いでくれ」
クリス「今日は太陽風が強くて、通信がつながらないわよ」
リョウ「嘘だろ! なんとかならないのか!?
クリス「いいじゃない。昨日だって時間オーバーしてさんざん話したんだから、今日一日くらい我慢しなさい」
リョウ「うう……一日の憩いの時間が……」
クリス「ホント、親ばかね」
リョウ「いや、ユリちゃんはホント可愛いんだって! 写真見る?」
クリス「もう、100回以上見てるからいいわよ」
リョウ「あーあ、早く会いたいなぁ」
クリス「交代まで、あと半年なんだから我慢しなさい」
リョウ「半年か……。長いよなぁ……」
場面転換。
作業ポットでデブリの除去作業をしているリョウ。
リョウ「ほい、ほい、ほいっと……」
ザザッと通信音。
クリス「リョウ、そろそろ、集めたデブリをコンテナに入れていって」
リョウ「了解―」
突然、警告音が響き渡る。
リョウ「なんだ!?」
クリス「……地球からも通信が来てるわね。……え?」
リョウ「どうした?」
クリス「すぐ戻って! この領域から急いで出るわよ」
リョウ「なにがあったんだよ?」
クリス「隕石よ。すごいスピードでこっちに向かってる。一時間後には地球に落ちるわ」
リョウ「ちょっと待て! 地球に落ちる? 影響はどのくらい出るんだ?」
クリス「小さい島なら消し飛ぶわね」
リョウ「対策は? 下のやつらが上がってくるのか?」
クリス「時間がないわ。おそらく、混乱を避けるために避難勧告も出さないかも」
リョウ「落ちるポイントは?」
クリス「……とにかくこっちに戻って来て」
リョウ「いいから早く、落下ポイントのデータを送れ!」
クリス「……」
システムを操作するリョウ。
リョウ「……くそっ!」
クリス「あなたの家族がいるところに落ちる確率はかなり低いわ」
リョウ「ゼロじゃない。……黙ってみてられるか」
作業用ポットを操作するリョウ。
クリス「リョウ、何をするつもり?」
リョウ「隕石を破壊する」
クリス「どうやって!」
リョウ「あるだろ。隕石級に危険なデブリが」
場面転換。
クリス「隕石を核で破壊するなんて……。失敗したら始末書じゃすまないわよ」
リョウ「失敗すればな」
クリス「タイミングはシビアよ」
リョウ「わかってる。……って、クリス、お前は離れてろって!」
クリス「一蓮托生よ。リスクもリターンも山分けって決めたでしょ」
リョウ「ったく。爆発に巻き込まれても知らねえぞ」
クリス「来るわ! 隕石よ!」
轟音と共に隕石が接近してくる。
リョウ「でけぇな……。よし、いくぞ!」
ボタンを押すリョウ。同時に爆発音。
爆発で作業用ポットが激しく揺れる。
リョウ「おわああ!」
何とか作業用ポットを安定させる。
リョウ「……」
クリス「……」
リョウ「……どうだ?」
クリス「成功よ。バラバラに砕けたわ」
リョウ「よし!」
警告音。
クリス「いや、ダメ! 破片の大きいのが引力に引っ張られてる」
リョウ「クソ!」
クリス「ちょっと、リョウ! 何するつもり?」
リョウ「体当たりして、押し出す!」
クリス「無茶よ!」
作業用ポットで隕石に体当たりする。
リョウ「うおおおおおお!」
物凄い衝撃音が響く。
リョウ「うわああああ!」
クリス「リョウ!」
リョウ「どうだ!?」
クリス「今の衝撃で隕石は逸れたわ」
リョウ「そうか……」
クリス「だけど……」
リョウ「俺の方が引力で落ちる……か」
落下音。
リョウ「ユリ。ごめんな、お父さん、帰れなさそうだ……」
色々な警告アラームが鳴り響く。
クリス「バカなこと言ってないで、早く機体を立て直して! ワイヤー降ろしてるの、見える?」
リョウ「なっ! クリス、馬鹿、止めろって! お前まで一緒に落ちるぞ!」
クリス「一蓮托生って言ったでしょ! いいからさっさとワイヤーを掴む!」
リョウ「ったく、どうなっても知らねえぞ!」
クリス「うう……。もち直してーー」
リョウ「おわああああ!」
クリス「きゃあああーー!」
場面転換。
作業用ポットがデブリ除去作業をしている。
リョウ「はあ……。納得いかねえ……」
ザザッと通信音。
クリス「首にならなかっただけマシって考えましょ」
リョウ「いやいや。俺たちある意味、地球を救ったんだぜ?」
クリス「自分勝手な行動な上に失敗したら大惨事だったのよ。妥当な判断じゃない?」
リョウ「……お前は、ステーションが最新のものになってご機嫌かもしれないが、俺のはなんでそのままなんだよ!」
クリス「まあまあ、いいじゃない」
リョウ「くそ、納得いかねえ!」
クリス「さ、今日はここまでにするわよ。戻って来て」
リョウ「はいはい……。お、今日は雲がないな。地球が綺麗に見えるぞ」
終わり。
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