桜の木の下で

桜の木の下で

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■関連シナリオ
<桜が舞う頃に>

■概要
人数:4人
時間:10分程度

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト


佳穂
みのり

■台本

司(N)「サツキとツツジの花は、パッと見ると見分けるのが難しい。それは人生も同じだ。見た目は同じでも、全然違う人生を歩むことになる。つまり、同じ見た目でも、いい人生とよくない人生を送る人がいる。その差はなんだろうか。それはきっと、運だ。今までの僕はちょっとした運がなかっただけ。不運だったから、この17年間、彼女ができなかっただけなんだ」

学校の廊下。

みのり「佳穂、おはよー」

佳穂「あ、みのりちゃん、おはよう」

司(N)「ああ……。今日も佳穂ちゃん、可愛い」

みのり「ん? 何もってるの?」

佳穂「……メッセージカード。靴入れに入ってたの」

みのり「メッセージカード? ああ、アドレスが書いてあるのね。よかったらメールくださいってやつか」

佳穂「うん……」

司(N)「ふふん。それは僕が入れたやつだ。男としてちゃんとアプローチしないと。僕はイケメンじゃない。だから、待っていては佳穂ちゃんの方から告白してくるなんてことはない、ってちゃんとわかってる」

みのり「こういうの逆に困るっていうか、キモイよね」

司(N)「え? そうなの?」

佳穂「みのりちゃん。キモイは言い過ぎだよ」

司(N)「そうだ、そうだ!」

みのり「でもさ、佳穂、それにメールする?」

佳穂「……しない」

司(N)「ええええー」

みのり「男ならさ、正面からドーンと来いっての。メアド交換くらい、直接言えなくてどうすんだって感じだよね」

司(N)「いや、それができたら苦労しないって」

佳穂「……でも、いきなり来られたら困るよ」

みのり「佳穂、押しに弱いもんね。ダメだよ。嫌なら嫌ってちゃんと断らないと。相手に希望を持たせるのは返って残酷なことなんだから」

佳穂「そ、そうなの?」

みのり「そうだよ! だから、ズバッと介錯してあげるのが優しさなんだから」

司(N)「そんな優しさは存在しない」

佳穂「わかった! 私、頑張る!」

司(N)「いやー! 頑張らないでー!」

場面転換。

屋上。

とぼとぼと歩く司。

司「もう僕なんて生きてたってダメだ。異世界に転生しよう……」

風がビュービュー吹いている。

司「屋上からだと痛そうだな。三階の窓からにしようっと。……いや、それだとあんまり変わらないか。一階の窓からにした方がいいかな」

舞「なにしてるの? こんなとこで」

司「うわああああ!」

舞「うわっ! ビックリした。急に叫ばないでよ」

司「え? え? さっきは誰もいなかったのに」

舞「ふふふふ……。私は幽霊だから、気配を消すのは得意なの」

司「え? 幽霊?」

舞「そう。ほら、足ないでしょ?」

司「いや、あるじゃん」

舞「うん。あるね。言ってみただけ。えーと、じゃあ、ほら!」

司「おお、飛んだ!」

舞「どう? 信じてくれた?」

司「どんな手品使ったの?」

舞「意外と君、面倒くさいタイプだね」

司「まあいいや。幽霊ども女の子に変わりないし」

舞「うーん。そんな投げやりな感じで信じられてもなぁ」

司「それで、幽霊さんは僕に何の用?」

舞「あ、そっか。まだ名前言ってなかったね。私は舞だよ」

司「僕は司」

舞「司くん。諦めちゃダメだよ」

司「え?」

舞「好きな子、いるんでしょ?」

司「どうしてわかるの?」

舞「私、そういうのに敏感な幽霊なんだ。悩みがあるなら、聞いてあげよっか?」

司「僕、彼女が欲しいんだ」

舞「……ストレートだね」

司「どうしたらいいかな?」

舞「えーっと、とりあえず、思いを相手に伝えるところからかな。思ってるだけじゃ、ダメだよ。ちゃんと言ってくれないと、相手はわからないんだから。思いさえ伝えれば、きっと応えてくれるよ」

司「舞さん……」

舞「なに?」

司「付き合ってください」

舞「ごめん、無理」

司「嘘つき―! 嘘つきー! 伝えればいいって言ったのにー!」

舞「いやいや。えっと……ほら、私、幽霊だし」

司「構いません。可愛ければ何でもいいです」

舞「……ポジティブなのはいいけど、結構、失礼なこと言ってるの気づいてるかな?」

司「じゃあ、僕に取り憑いてください。一緒にいれればそれでいいです」

舞「うーん。ちょっと無理かな。今、他の人に憑いてる状態だし」

司「えーー」

舞「えっと、それじゃあ、舞ちゃんからワンポイントアドバイス。きっと司くんって恋に恋してる状態だと思う」

司「どういうこと?」

舞「司くんは好きな人がいるから付き合いたいんじゃなくて、彼女が欲しいから付き合いたいって思ってるんじゃないかな? つまり、その好きな人って、ホントはそんなに好きじゃないんじゃない?」

司「そんなことないよ! 僕は佳穂ちゃん一筋だよ!」

舞「……さっき、私に告白したよね?」

司「とにかく、僕は彼女が欲しい! 舞さん、何とかしてください!」

舞「……私のさっきの話、覚えてる?」

司「いやだー! なんとしてー! 何とかしてくれないと、そこから飛び降りて、異世界転生してやるー」

舞「わかった! わかったよ! だから、落ち着いて!」

司「うん。落ち着く!」

舞「はあ……。変なのに声をかけちゃったな……」

司「それで、何してくれるの?」

舞「ビックリするくらい他力本願だね。まあ、いいや。私ね、これでも桜の木の力を利用できる幽霊なの。だから、桜の木の下に……」

司「あー、ダメダメ。桜の木の下で告白すればいいっていうんでしょ?」

舞「あれ? 知ってるの?」

司「有名だよ。だから、逆にダメなんだ」

舞「どういうこと?」

司「あまりにも有名な場所だから、そこに呼び出した時点で警戒されて、来てくれないんだ」

舞「なるほどねー。呼び出された方は、告白されるって知ってるから、OKなら行くし、断るつもりならそもそも行かないってわけだね」

司「うん、そういうことです」

舞「じゃあさ、逆にそこじゃないところなら、相手も油断するんじゃないかな?」

司「どういうこと?」

舞「私は桜の木でさえあればいいんだよ。だから、その有名な場所以外の桜の木の下に呼べばいいんじゃないかな」

司「なるほど! じゃあ、すぐに佳穂ちゃんを呼び出すね!」

走り出す司。

場面転換。

司「あー、ドキドキする」

舞「えっと、司くん?」

司「舞さんはちょっと黙ってて! 今、頭の中でデートプランを立ててるんだから」

舞「……まだ、告白もしてないんだよね?」

司「最初は映画館かな? いや、この前見た雑誌で動物園とか水族館も良いって書いてあったな……」

舞「ね、ねえ、司くん!」

佳穂が走ってくる。

佳穂「ごめんなさい、お待たせしちゃって……」

司「あ、佳穂ちゃん」

佳穂「えっと、その……用事ってなに?」

司「佳穂ちゃん、好きです! 付き合ってください!」

佳穂「ごめんなさい! 無理です! もう話しかけないでください!」

佳穂が走り去っていく。

舞「あー、行っちゃった……」

司「嘘つき―! 嘘つき―! 桜の木の下なら何とかしてくれるって言ったじゃん!」

舞「う、うん。確かに言ったけど……」

司「なら、どうして断れたのさ!」

舞「これ、梅の木」

司「……え?」

終わり。

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